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ECモール、出店する前に知っておくべきこと

公開日:2026/10/21

塩島慎一朗

ネットショップを始めるにあたって、「ECモール」は有力な選択肢の一つです。

「ECモール」とは、例えば楽天市場やAmazonといったプラットフォームに出店し、そのルールに従ってネットショップを運営する形態を指しています。
このようなECモールには、たくさんのお客様が集まり賑わっているため、商品を出せば簡単に売れるような気がするかもしれません。
しかし現実には、うまくいかずに挫折してしまうお店も多いのが実情です。

そこでこのコラムでは、ECモールへの出店を検討されている中小企業の皆様に向けて、後悔しないための「出店する前に知っておくべきこと」をご紹介します。

自社がECモールにチャレンジすべきかどうか、事前にしっかりと考えておきましょう。

「モールに出せば売れる」わけではありません

ECモールの運営は、非常に大きなショッピングモールで商品を売るようなイメージです。

そこで出店さえすれば、「勝手にお客様が集まってくるだろう」と思われがちなのですが、ここは多くの方が誤解するところ。
というのも、お客様の数は確かに多いのですが、似たような商品も大量に並んでいるため、何もしなければその中に埋もれてしまうのです。

リアルショッピングとECサイト

ECモールの中でも広告費が必要

ECモール内での激しい競争に勝ち残るためには、集客のための施策が必要不可欠です。

出店する多くの企業は、自社の商品を見つけてもらうためにプラットフォーム側に広告費を支払い、ECモール内に広告を出しています。
特に出店したばかりの時期は、まだ販売実績もお客様の評価もありませんので、広告無しで十分な売上を立てるのはなかなか難しいでしょう。

つまり出店前から、手数料(後述)に加えて一定の広告宣伝費がかかることを見込んでおかなければなりません。

これを知らずに始めてしまうと、後から目論見が大きく狂うことになりかねません。

ECモールごとの特徴を把握しておく

ECモールと一口に言っても、モールごとの特徴は大きく異なるため、自社に最適な出店先を選ぶことが重要です。

その中で多くの事業者において検討の軸となるのが、「楽天市場」と「Amazon」です。
両者は日本国内における代表的なECモールとして多くのユーザーを抱えており、市場シェアや認知度の高さから、主要な出店先として挙げられるケースが一般的です。

実際にECビジネスを展開する企業の多くが、いずれか(または双方)を活用しています。

二大ECモールの特徴比較

「自分の店」を出している感覚の楽天市場

楽天市場は、数多くの店舗が集まる大型のショッピングモールです。

出店するとECモール内に自店舗のページが割り当てられ、自社のホームページに近い感覚で、ある程度自由に作成できます。
メールや独自施策を実施するための機能も豊富で、お客様に「このお店で買った」と比較的覚えていただきやすく、顧客との関係性を構築しやすいという特徴があります。

その反面、販促施策やページを自社で作り込む手間など、運営のためのリソースは何かと大きくなってきます。

膨大なカタログの一部に組み込まれる感覚のAmazon

Amazonはあらゆるジャンルの商品を、大きな通販カタログに集約したようなECモールです。

ページのテンプレートが統一されているため、商品の見せ方の自由度は決して高くありません。
そのような特徴から、時間や手間を比較的抑えてスタートできる一方で、販売価格や商品スペック自体の重要性がいっそう大きくなるECモールだと言えます。

「Amazonストア」機能を使えば一定のブランディングはできますが、お客様からするとお店の存在はあまり意識されず、「Amazonで買った」という感覚が強くなりがちです。

他にもある個性的なECモール

まず、日本のECモールとして、楽天市場とAmazonの次に名前が上がるのがYahoo!ショッピングです。
PayPayとの親和性が高く、一定の根強いユーザーが存在するECモールです。

月額利用料がかからないのがメリットでしたが、2026年9月から料金体系が変更され、月額利用料および売上手数料が発生する形になりました(出典:Yahoo!ショッピング公式サイト、2026年8月時点)。
運営コストが低いことで出店していた企業も多かったと思いますが、今般の変更に伴い、今後、大きな変化がありそうです。

続いて、Qoo10(キューテン)は初期費用と月額の固定費がかからず、売れたときの手数料だけで始められるECモールです(出典:Qoo10 出店案内、2026年8月時点)。
特にコスメ・美容分野に強いプラットフォームとして知られ、若年層を中心とした女性のお客様が多く、「メガ割」と呼ばれるセールイベントは大変盛り上がります。

また、TikTok Shopは、日本では2025年にスタートしたばかりの新しいECモールです。
大量のユーザーを抱えるTiktokと連動し、動画を見ている最中にショッピングへつなげるという、他にはない仕組みが特徴です。

ECモールの販売戦略を理解する

ECモールで商品を販売するには、自社ECサイトにはない販売戦略が必要になります。
細かいテクニックはたくさんありますが、ここではモール内検索、セールイベント、ギフト需要の3つをご紹介します。

1. ECモール内の検索結果の上位に表示させる

ECモールのお客様の多くは、検索窓にキーワードを打ち込んで商品を探します。
そして検索結果として上に出てきた商品ほど、基本的には多くのお客様に見てもらえることになり、売上につながるチャンスが発生するのです。

この検索順位を上げるためには、市場動向や検索ロジックを日々研究する必要があり、多くの企業が上位獲得のために努力しています。
また順位だけでなく、検索結果として表示された商品の中から、自社の商品をどうやってクリックしてもらうか、といった視点も重要です。

ちなみにGoogleの検索順位対策とは別物なので、ホームページの検索対策とは異なるノウハウが求められます。

2. セールイベントを活用する

ECモールでは定期的に大型のセールイベントが開かれ、モール内で大々的に告知される他、テレビCMで宣伝されることもあります。
この大型イベント期間については、購買意欲の高いユーザーがいっそう集まってくるため、ECモールの大きな恩恵を受けられるチャンスとなります。

楽天市場やYahoo!ショッピングでは、ポイントが大好きなユーザーが多いこともあり、ポイント付与の倍率アップは購入の大きな動機となります。

Amazonでもポイントはありますが、どちらかというとタイムセールやクーポンといった、直接値引きの施策が好まれる印象です。

3. ギフト需要に対応する

お祝いのプレゼント、お中元・クリスマスといったシーズンギフトに適した商品は、ECモールとの親和性が高い商材の一つです。

出店している店舗の中には、お歳暮などのギフト商戦時に全力を注ぎ込み、一定期間だけで年間売上の大部分を作る、といった体制を構築しているところもあります。

ギフト商材は日常の買い物と違って、価格の安さだけで選ばれるとは限りません。
売る側としてはこれが良いところで、価格競争から一定の距離を置き、利益を確保して運営しやすい領域です。

経営に大きな影響を与える手数料

ECモールを運営する上で、決して逃れられないのがプラットフォームへの手数料です。
これらのコストは、経営に大きな影響を与える要素であり、出店前によくシミュレーションしておく必要があります。

コストを試算するためには、売上に伴って増える「変動費」と、売れなくても発生する「固定費」に分けて考えるとよいでしょう。

モールでかかる手数料の種類

売れば売るほど増える変動費

ECモールでは変動費が多くなるのですが、まず押さえておきたいのが、売上金額に応じて発生する販売手数料です。

その割合は、出店するECモール、契約プラン、商品カテゴリによっても異なります。
ここに加えて、クレジットカード等の決済手数料、ポイントの原資、場合によってはその他の名目の変動費も別途発生します。

送料についても変動費に近い性質があり、「送料無料」に設定する場合は自社負担となるため、かなり大きなコストになることが多いです。

変動費のインパクトは大きく、特に粗利率の低い商品を扱っている場合、利幅がかなり小さくなることも珍しくありません。

売上に関わらず発生する月額の固定費

次に出店料などの名目で発生する固定費です。

楽天市場の場合、一番安いプランでも月額出店料は25,000円となっていますが、Amazonは一般的なプランでも月額4,900円で済みます(出典:楽天市場公式サイト・Amazon公式サイト、2026年8月時点)。
年間で計算すると相応の費用(コスト)がかかるため、売上規模が小さい事業者様は、Amazonから試すのが現実的な選択肢となるでしょう。
ただし楽天市場と比べて、Amazonでは変動費が高くなりがちです。

出店後のコストがどれだけになるのかは、経営に直結する要素のため、しっかりと考える必要があります。

かんたん損益シミュレーション

これまで見てきたとおり、ECモールの運営は決して簡単ではありませんが、うまくいけば販路を大きく広げるチャンスが得られる場所です。

もし出店を検討しているなら、ぜひExcelなどで下にあるような表を作り、仮でもよいので数字を置いてみてください。
「月にいくら売れたらどれだけ手元にお金が残るのか」という点を確かめておくと、出店後の後悔やリスクを抑えることにつながります。

本コラムで挙げたような点に着目し、ぜひ出店を検討する際の判断に役立ててください。

出店前に確認しておくべき数字
コラムニストプロフィール

中小企業診断士、日本ソムリエ協会ソムリエ

塩島 慎一朗(しおじま・しんいちろう)

エクト経営コンサルティング代表。あまりお金をかけられない小~中規模の事業者が、インターネットで売上を伸ばすためのサポートを得意とする。民間でのコンサル支援に加えて、公的機関の派遣専門家としても活動しており、支援実績は200社以上。16年以上のWEBマーケティング経験を基に、机上の空論に終わらない実践的なアドバイスを強みとする。

https://ecto-con.com/