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自社ECサイトの始め方とポイント

公開日:2023/08/10

溝呂木聰(みぞろき・さとし)

対面店舗販売に加えて、自社でのECサイトよるオンライン販売を始めたいという企業・組織が増えています。
今回は、自社でECサイトを立ち上げる前に考えるべきことと、立ち上げの方法について、集客と接客の面から見ていきます。

自社ECサイトの集客

EC市場

経済産業省 電子商取引に関する市場調査」(https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220812005/20220812005.html)によると、物販系の売上は2019年の10兆515億円から2021年には13兆2865億円に増加し、30%の成長を遂げました。

また、EC化率も相応に伸びています。これは、新型コロナウイルスの感染症拡大により外出自粛が推奨され、ECの利用が増えた結果と言えます。一方で、店舗数の増加により競争も激しくなっています。

ECの出店形態

ECの出店形態には、モール型と自社サイト型があります。今回は自社サイト型に焦点を当てますが、その特徴を考慮する必要があります。

モール型は、楽天市場やAmazon、Yahoo!ショッピングなどを指し、会員化されたユーザーが集まりやすい特徴があります。ただ、広告費などの費用が高くなる上、モールごとにルールが存在し、自由度が制限されるという側面もあります。
一方、自社ECサイトは比較的費用が低く、自由度が高いというメリットがあります。自社のブランディングやリピート顧客の育成にも適しています。ただし、自社の存在が知られていないことが多く、集客が重要なポイントとなります。

一般的な事業展開の例としては、まず無料の独自ECサイトを開設し、既存の顧客がオンラインでも購入できるようにします。その後、複数のモールにも出店し、顧客と売上を拡大していきます。最終的には、自社サイトをオリジナルな形で作り込むことが多いようです。

モール型・自社ECサイトの特徴

選ばれる理由

競争が激しくなっているEC市場と自社サイト型の集客課題を考慮すると、差別化と集客のためには、選ばれる理由を作ることが重要です。そのためには、具体的なターゲット(ペルソナ)や彼らの悩みや気持ちを考える必要があります。このターゲットに選ばれる理由を示すために、以下の3つの軸を考えましょう。

選ばれる理由 3つの軸(手軽軸・商品軸・密着軸)

「手軽軸」という要素は、大手企業にとっては大量生産などの面から取り組みやすいものと言えますが、消費者にとっては安かったり、便利に入手できることから手軽さとまとめることができます。一方、中小企業にとっては「商品軸」と「密着軸」というポイントが重要です。

「商品軸」においては、技術の高さが特徴となる場合、その技術や専門性について詳しく解説する方法があります。入門者向けの解説でも良いですし、一定の詳細な内容でも構いません。重要なのは、記事を訪れる人がいて、そこから商品を知ってもらう導線を作ることです。

「密着軸」の例として、ユーザーにとって必要な情報を提供するサービスが効果的であったり、好評な場合は、その情報がどのようなものであり、どのように役立つのかを例示したり、実際に喜びの声を持つ顧客の声を紹介することが良いでしょう。

こうした要素を踏まえて、自社が選ばれる理由を明確にし、自社ECサイト内で表現することが必要です。

また、一定の検索ボリュームがあるキーワードを選び、それによってSEO集客や検索連動型広告を活用することができるか、また自社のメルマガやSNSを活用できるかを検討し、集客の課題を解決していきましょう。

自社ECサイトの接客

自社のECサイトに訪れる方々に、実際に購入していただくためにはいくつかのポイントを考慮する必要があります。

商品ページの充実

まず、一般的にはサイトのトップページよりも商品ページからの訪問が多いことを知っておきましょう。サイトのトップページも大切ですが、さらに重要なのは商品ごとのページを充実させることです。なぜなら、具体的な商品名や型番、特徴を表すキーワードで検索してくるユーザーが多いからです。また、購入を検討する際にも必ず商品ページを確認することが一般的です。そのため、写真と説明を充実させて、商品の内容と特徴を明確に伝えることが必要です。
集客や選ばれる理由として、商品の魅力や他社との違いもしっかりとアピールしましょう。
そして、企業の視点ではなく、ユーザーの視点で商品を表現することが重要です。例えば、モバイルバッテリーの説明文では、「充電容量が大きい」というよりも、「iPhoneが2回フル充電できる」といった具体的な効果を強調しましょう。

なお、BtoC(個人への販売)の場合、多くの人がスマートフォンでサイトを閲覧します。そのため、最初に表示される画面で訴求力が伝わるようにすることや、文字や購入ボタンを大きくすることが重要です。さらに商品登録はパソコンで行っていても、スマートフォンの画面サイズで見づらくないかなどを忘れずに確認しましょう。

改善・運用の必要性

ECサイト(ネットショップ)では、対面店舗とは異なる特徴があります。
デメリットとしては、競合商品と比較されやすい点や商品の特徴を伝えにくい点、顧客の声や反応を把握しにくい点があります。
一方、メリットとしては、固定費や維持費が低く抑えられること、全世界対象で24時間365日の購入受付が可能なこと、さまざまなデータを把握できることがあります。
データとは、使用するショップ・ツールにより異なりますが、どこからユーザーが来たのか、訪問者数や新規顧客とリピーターの比率、閲覧された商品の情報、お気に入り登録されている商品などが分かります。
これらの情報を活用することで、人気のある商品の分析や、同じ数の閲覧でも購入されやすい商品を把握することができます。それにより、より良い「接客」としてより良い商品ページや体験を提供し、購入していただきやすい店舗になることができます。
ただし、ECサイトは費用が少なめで開設も比較的容易ですが、店舗を運営するためには手間がかかることを事前に認識しておく必要があります。

事前検討事項

最後に、ECサイトを始める前に、いくつかの事前検討事項があります。当然のことですが、これらは最初に押さえておく必要があります。

まず、パソコンやスマートフォンとインターネット回線が必要です。また、配送システムや決済システムも欠かせません。商品によっては、特定の資格や免許、届け出が必要になることもあります。さらに、受注に関しては、お客様への対応や在庫管理(特に実店舗との併売の場合は注意が必要です)も考慮しなければなりません。

これらを考えるために、どの程度の体制が必要かを検討しましょう。売上の計画を立て、その体制が売上や利益に見合っているのかどうかを確認することが大切です。

また、ECサイトのシステムについては、ゼロから作るのは費用と時間がかかるため、一般的にはサービスを利用することが多いです。例えば、BASEやSTORES、Shopifyなどがよく使われています。これらのサービスには月額料金や手数料、登録写真の枚数制限、海外対応の違いがあります。自社の特徴や商品に合っているかどうかを比較検討するため、「ECサイト」「ネットショップ」などのキーワードで検索してみましょう。

これらの前提事項と比較検討をしっかり行うことで、スムーズにECサイトを開始する準備ができます。

繰り返しになりますが、まずは自社と商品が選ばれる理由と集客方法を明確にし、商品ページを充実させるなどの運用が必要となりますので、その労力とコストが見合うか検討することをおすすめします。
その上で、まずは始めてみて、コツコツと改善をしていくことで、ぜひ販路開拓を進めていってください。

コラムニストプロフィール

溝呂木 聰(みぞろき・さとし)

中小企業診断士、経営革新等支援機関。
早稲田大学卒業後、通信教育会社、飲食ポータルサイト、不動産メディアにて宣伝・マーケティングや経営に従事し、2021年独立。東京都・神奈川県の公的機関などを通じて、中小企業支援を行っている。
「Webマーケティングと経営戦略は良い相性」と考え、それらを組み合わせた伴走を心がけている。
https://compuro.jp/