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顧客リストを販路に変えるLINE公式アカウント ① LINEは自社の販路になるか

公開日:2026/09/30

飯田雅春

1. 「顧客との接点」から考えるLINE公式アカウント

「LINE公式アカウントは作ったけれど活用できていない」といった事業者は少なくありません。また、「飲食店や美容室ではよく使われているけれど、当社の事業には合わない気がする」という方もいらっしゃいます。

「LINEは店舗型のビジネスに向いている」というイメージがあるのかもしれませんね。ところが実際には、「幼稚園が入園希望のご家庭とつながる」「住宅メーカーが検討中のお客様を追いかける」「法人向けのコンサル会社がクライアント候補から問い合わせを受ける」といったことがLINE経由で行われています。

販路開拓にLINEが有効かどうかの基準は業種ではありません。自社が顧客とどのような接点を持っているか、です。

このコラムではLINEを基盤として販促に活用するための考え方を全3回に分けてお伝えします。まず第1回として、LINEが自社の販路になり得るかを見極める考え方を整理します。

2. 「見に来てもらう」のか、「こちらから届ける」のか

Webサイト、ブログ、Instagram、YouTube。これらはどれも情報を出して見に来てもらうメディアで、PULL型と呼ばれます。良い記事を書いても、興味を持った人が訪れてくれなければ、そこで終わりです。

LINE公式アカウントは逆です。一度友だち登録をしていただければ、こちらのタイミングで直接届けられるPUSH型です。

メールマガジンも同じPUSH型ですが、LINEは日常的に使うアプリに通知が届きます。LINEの方が目に触れるまでの時間が単純に短く、また開封率が高いことも特徴です。

*LINEメッセージの平均開封率:約55%(LINEヤフー社調査/2022年6月時点)、メールマガジンの平均開封率:約15〜25%(Benchmark Email社調査/2026年ほか)

図1:PULL型とPUSH型の違い

そしてもうひとつ。SNSのフォロワーは、数以外にデータが何も残りません。ところがLINEの友だちは、「連絡先=顧客データ」として自社に残ります。どの年代の方が登録し、どの案内に反応したのか。そのような情報が、使えば使うほど自社に蓄積されます。

3. 売上は、どこで伸ばせるのか

販路開拓というと、まず新しいお客様を思い浮かべますね。

ただ、経路はもうひとつあります。すでに取引のあるお客様との関係を深めたり拡げたりする道です。こちらを測る指標がLTV(顧客生涯価値=Life Time Value)です。LTVとはそのお客様(個人/法人)が自社の商品・サービスを購入しつづける全ての期間においてもたらす利益や売上のことで、下記の式で表されます。

LTV = 平均購入単価 × 購入頻度 × 継続期間

新規獲得には広告費と時間がかかるケースが多いです。一方、既存のお客様への働きかけは信頼関係がある分、成約率が高く費用も抑えられます。既存のお客様に継続的に情報を届ける手段があれば、このLTVを様々な形で向上させることができます。

LTVを構成する三つの要素には、それぞれの施策が考えられます。購入単価なら、上位商品のご案内(アップセル=より高価格な商品の販売)や関連商品の提案(クロスセル=別商材の追加販売)。購入頻度なら、購入後も接点を保ち、適切なタイミングで再利用を促すこと。継続期間なら、反応が薄れたお客様に離れる前に働きかけることなどです。

ただし、施策と要素は必ずしも一対一で対応するわけではありません。上位商品のご案内は単価を上げますが、それが定期契約なら継続期間も伸びます。関連商品も、同じ買い物に加われば単価に、後日あらためて買っていただければ頻度に効きます。

大切なのは、自社がどの要素を伸ばしたいのかを先に決めることです。複数でもかまいません。

図2_売上の構造とLINEの活用範囲
図2:売上の構造とLINEの活用範囲

LINEは「新規顧客の獲得」と「既存顧客のLTV」のどちらにも使えます。新規顧客の獲得なら友だち追加広告やご紹介という手段があり、既存顧客のLTV向上にはLINEがそのための継続的な接点となります。

4. LINEは自社の販路として成立するか

次の項目に多く当てはまるほど、取り組む価値は高いといえます。

  • 再来訪・再購入がある(⇒購入頻度を伸ばせる)
  • 他にも提案できる商材や、上位のプランがある(⇒購入単価を伸ばせる)
  • お客様との関係が長期にわたる(⇒継続期間を伸ばせる)
  • 検討期間が長い(不動産、住宅、高額サービス、法人向け商材など⇒顧客育成が有効)
  • 展示会や広告で認知は広げているが、その後の接点が続いていない(⇒継続的な接点を作れる)
  • 問い合わせや予約の対応に手間がかかっている(⇒対応を自動化する)

一方で、向いていない場合もあります。

商材やサービスの魅力がまだ固まっていない段階では、効果は期待できません。LINEは既にある良さを届ける手段であって、ないものを生み出す道具ではないからです。

また、一度きりの取引で再購入も紹介も発生しない事業や、既存顧客との接点も広告予算もなく、友だち登録をご案内できる場が見当たらない場合。こうした場合は他の施策を先にお考えください。

下の図で、自社を当てはめてみてください。

図3_販路としての適性チェック
図3:販路としての適性チェック

5. 課題から見ていくと、業種は関係なくなる

課題から整理すると、こう並びます。

経営課題LINEにおける施策
新規開拓店頭や購入時のご案内、登録特典、友だち追加広告
顧客育成(ナーチャリング)検討中の方へ、判断材料になる情報を自動で段階的に届ける
成約率向上自動応答と個別対応で疑問に答え、申込につなげる
リピート促進購入後、適切なタイミングで情報配信するなど再利用を促す
客単価向上上位プランや関連商品の提案
離脱防止反応が薄れた方への働きかけ
採用説明会・イベント参加者との継続的な接触
業務効率向上予約受付や問い合わせ窓口の一元化、自動化

LINEの活用は飲食や小売など、特定の業種に限られる話ではありません。むしろ検討期間の長い法人向け商材ほど、接点を保てる価値は大きくなります。

6. 作る前に決めておく、三つのこと

LINE公式アカウントの開設は無料で、短時間で終わります。ですから「とりあえず作ってみよう」となりやすく、そしてそこで止まってしまうアカウントが多いのも事実です。

ぜひ着手前に、次の三点を決めてください。

ひとつ目は、成果を測るゴールを一つに決めること。LINEは新規開拓にもリピート向上にも採用にも使えます。ただ、最初から全部を追うと、何が効いたのか分からないまま時間が過ぎます。まずは一つを主な指標(予約・購入・問い合わせ件数・友だち数など)に置き、そこが動いたかどうかで効果を測ります。

ふたつ目は、どこで集めるかを決めること。店頭のQRコード、商品に同梱するカード、名刺、展示会のブース、既存のお客様へのご連絡。まずはすでにある接点を棚卸ししてください。広告を検討するのは、そのあとで構いません。

みっつ目は、誰が、どのくらいの頻度で運用するかを決めること。配信は例えば月に2回程度からでも構いません。担当者と頻度を先に決めておかないと、配信そのものが後回しになります。無理なく続けられる形から始めてください。

始める前に、知っておいていただきたいこと

手軽に始められる一方、理解しておくべき点もあります。

ひとつは費用です。無料プランには送信通数の上限があり、超えると有料プランが必要です。通数は「メッセージ数×届けた人数」で計算されるため、友だちが増えるほど配信コストも増えます。送り放題ではない点は念頭に置いてください。配信を自動化するなど踏み込んだ使い方には、有料の拡張ツールが必要になる場合もあります。

もうひとつはブロックです。関係のない内容が続けば、友だちはブロックします。一度ブロックされると、その後はどんなご案内も届きません。ただ、ブロックは一定程度は必ず発生するものです。ゼロを目指すよりも、内容と頻度を工夫して低く抑えていくことが大切です。

おわりに

LINE公式アカウントは、お客様の連絡先を自社に蓄えていくためのチャネルです。

新規集客にも使えますが、他にとって代わられにくいのは、一度つながったお客様との関係を続けていく部分だと思います。

第1回のまとめポイントです。

  • LINEは「こちらから直接届ける」チャネル。友だちは自社に残る「連絡先」になる
  • 売上を伸ばす経路は、新規獲得と既存顧客のLTV向上の二つ
  • 向き不向きを決めるのは業種ではなく、顧客との接点の持ち方
  • アカウントを作る前に、成果を測る指標・集める場所・運用の体制を決めておく

「4. LINEは自社の販路として成立するか」で説明した項目について当てはまるものが多かった方は、まずは無料の範囲で、すでにある接点から始めてみてください。 完璧な設計は要りません。動かしながら育てていくほうが、結果として早く成果につながることもあります。当てはまらなかった場合は、「今は他に優先すべきことがある」という答えが出たということです。無理に始める必要はありません。

次回は「友だちをどう集めるか」を取り上げます。広告費をかけずに顧客リストを積み上げる方法と、登録直後の関係づくりに使うステップ配信についてお伝えします。第3回では、集めたデータを分類し売上につなげる仕組みを扱います。

コラムニストプロフィール

飯田 雅春(いいだ・まさはる)

外食チェーン本部にて、Webサイト構築やポイントシステムをはじめとしたデジタルマーケティング施策の企画・分析・改善に携わり、VOC(顧客の声)を活用した業務改善や様々なデータに基づく経営支援を推進してきました。独立後は、中小企業を中心に、LINEやSNSを活用したCRM設計、BtoB企業のBtoC展開支援、デジタル施策の立ち上げから運用・改善までの伴走支援を行っています。数値やロジックだけでなく、経営者や現場が本来持つ強みや発想を引き出し、それを市場に伝わる形へ翻訳することを重視し、実行可能性と創造性の両立を目指した支援を強みとしています。
https://milareso.co.jp/consulting/