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メールマガジン定期配信のすすめ
~メールマガジンは、「何のために」「誰に」「どのように」配信するのか?

公開日:2023/07/18

原田泰宏(はらだ・やすひろ)

なぜメールマガジンを発信するのか?

「メールマガジンの配信をいろいろな人からすすめられるのだが、本当に配信する必要があるのか?」「どんな内容がいいのか?」「どんなタイミングで配信するのか?」といった疑問をよく耳にします。メールマガジンは、顧客(見込顧客含む)との関係性強化を目的とし、定期的に(発信者の好きなタイミングで)配信するものです。CRM(顧客関係管理)の一手法であり、顧客との接触回数を高める(ザイオンス効果)、顧客に気付きを与える(顧客教育)、顧客の継続利用を促す(顧客との関係性強化)、商品・サービスへの関心を高める(顧客育成)、といったところが一般的な目標となります。

メールマガジンが刺さりやすいターゲット

一般論ですが、メールマガジンは①企業向けの情報発信(B to B)、②40代以上の年齢層(中でも男性)に刺さりやすいと言われています。貴社のターゲットが、上記のどちらか、もしくは両方であれば、一定のメールマガジン配信効果が見込めます。参考までに、SNSは①B to Cビジネスで採用される、②10代から30代がメインターゲット(Facebookは40代以上)という傾向があると言われます。可能であれば、メールマガジンとSNS双方を運用して、異なったターゲットにリーチすることを検討したいものです。

メールマガジンの配信担当者は誰がいいのか?

メールマガジンの一般的な配信目的は冒頭に記載したとおりですが、会社ごとに具体的な目的は異なります。メールマガジンの配信担当者は、「企業のファンづくり」「新商品・サービスの認知度向上」「ホームページへの誘導」といった目標を理解した人にすべきで、ITに少々詳しい人…といった視点での指名は避けるべきです。配信に当たっては、「メールマガジンの企画立案(社内コンセンサス)」「コンテンツの選択・作成」「配信先の選択・管理」「メールマガジンの発信=メールソフトの操作(ソフトを利用する場合)」「配信後の分析」といった業務が発生します。主担当者を決めた上で、一人に業務が集中しないよう役割を分担することも検討しましょう。

HTMLメールとテキストメール

メールマガジンには、「HTMLメール」と「テキストメール」の2種類があります。「HTMLメール」は、Hyper Text Markup Languageで構成されたeメールのことです。フォントや色などの文字装飾やURLリンク・動画・画像などを挿入できるのでデザイン性や機能性に優れています。また、開封率の測定ができるというメリットもありますが、専門知識や一定の費用が必要となります。一方の「テキストメール」は、文字のみで構成された一般的なメールで、原則追加費用はかかりませんが、デザインは文字と記号の入力や段落分け・飾り文字で自ら行う必要があります。これからメールマガジンを始める方は、まずは「テキストメール」に取り組まれることをおすすめします。

特定電子メール法への配慮

2008年12月の特定電子メール法の改正により、企業から顧客にメールマガジンを送る際には、顧客から事前に同意(オプトイン)を得ていることが必要となりました。ただし、ホームページからの問合せや名刺交換を行った際に得たメールアドレスは対象外です。またメールマガジン内に、配信停止(オプトアウト)のURLや、受信拒否を通知するための連絡先の記載も必要です。送信者の氏名または名称及び住所、問合せ先(電話番号・メールアドレス)の記載も忘れないようにしましょう。

心がけたいのは顧客に役立つ情報の提供

メールマガジンの記事作りで押さえておきたいのは、自社商品・サービスの売り込みに終始せず、顧客にとって効果的な情報の提供を心がけることです。自社商品・サービスに一番興味があるのは、その提供元である皆様です。顧客はそこまで貴社商品・サービスに興味がないということを前提に考えれば、顧客の興味を引くような、顧客のためになる情報の提供が必要です。顧客に、「この会社のメールマガジンには、ちょっと役立つ情報が入っているよね。」という印象を持っていただければ成功です。

メールマガジンの基本的な構成~一例

メールマガジンを発信するのに、毎回ゼロから構成やコンテンツを考えるのは大変です。そこで、いい意味でのパターン化をおすすめします。このパターン化は、読み手にとっての読みやすさにもつながります。これからメールマガジンを発信する皆様におすすめしたいのが、以下のシンプルな3部構成のパターンです。これは、あくまでも参考モデルの一つですので、このとおりにしなければならないというものではありません。

  1. まず、新着情報(What‘s new)を冒頭に持ってきます。こちらは、自社に関する最新情報を提供するパートですが、あくまでも情報提供が目的です。ある程度商売っ気を出しても構いませんが、いきなり商品購入に誘導することはおすすめしません(ホームページへの誘導は可)。ここでは、新商品・サービス情報、新規出店情報、マスコミ掲載情報、展示会出展情報等の、貴社に関わる最新情報を提供します。
  2. 次に、顧客にとってのお役立ち情報を記載します。これは、業界情報、補助金や助成金、おすすめ図書、テレビ番組情報、プロの裏技等、可能であれば貴社の商品・サービスに少し関わるような話題を選び、顧客目線に立って、商売っ気はできるだけ消すようにします。
  3. そして最後は、コラム・定期掲載記事などです。社長やスタッフがあるテーマで連載を行うイメージですが、自社のブログ記事やホームページ・SNSの内容を再編集したもので十分です。会社や商品・サービス誕生の裏話、映画・音楽の感想等、必ずしも事業に関わるものである必要はなく、執筆者の趣味の領域で問題ありません。このパートは、顧客の共感を得るためのものと考えましょう。

メールマガジンはインサイドセールスの一手段

メールマガジンは、インサイドセールスの一つの手段です。インサイドセールスは、内勤営業と訳されることもありますが、電話・メール・オンライン会議システム等を用いて顧客とのコミュニケーションをとる営業手法です。それに対して、フィールドセールスは、主に顧客と対面で商談を行い、契約獲得のためのクロージングの役割を果たします。インサイドセールスにおいて、リード(見込客)を獲得するための活動をリードジェネレーションといいますが、獲得したリードを関心度の高い見込顧客(ホットリード)に育成するマーケティング施策のことをリードナーチャリングといいます。メールマガジンは、そのリードナーチャリングに欠かす事ができない手段です。インサイドセールスにおいては、リードジェネレーションで顧客を獲得し、メールマガジン等でホットリードに育成(リードナーチャリング)した後、フィールドセールスへのバトンタッチを行い、クロージングにこぎつける…というのが、B to Bマーケティングの理想的な流れです。

必要なのは頻度よりも継続性

「メールマガジンは、月1~2回出した方がいいですか?」「どれ位の頻度が理想的なのでしょう?」といった質問を受けることがあります。そんな時は、「必要なことは頻度を上げることではなく、継続させることです。」と答えています。発信回数は年4回でも構いませんので、その代わり最低1年は続けるようにしましょう。1年以上続けることで、顧客への認知度や親近感が高まり、徐々に効果を実感できるようになります。顧客の興味の高まりには、周期があります。その周期が下降トレンドの時にメールマガジンを見ても何も感じなかった人が、上昇トレンドの時には問い合わせをしてくれるかもしれません。その周期が事前にわからない以上、一定期間の継続的な発信が不可欠なのです。

しっかりと準備を行い、メールマガジンを発信することも大事ですが、「まずは早期に第1号を発信する」ことを心がけましょう。第1号に納得がいかないのであれば、「第2号以降で改善すればいい」といった割り切りも必要です。秋までに第1号を発信する…と決めて、今後準備を進められてはいかがでしょうか?

コラムニストプロフィール

原田泰宏(はらだ・やすひろ)

中小企業診断士。大手旅行会社で、35年5か月、法人営業・商品企画・プロモーションを担当し、2018年より経営コンサルタントとして活動。中小企業を対象に、プロモーション全般・法人営業体制の構築・販路の開拓・社員教育等の支援を行っている。