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面白いサイトづくりが最強のSEO対策

公開日:2023/04/17

石井里幸(いしい・さとゆき)

皆さんの会社のウェブサイト(以下、自社サイト)は、面白いでしょうか?
ここでの「面白い」とは、笑えるという意味ではありません。訪問者(以下、ユーザー)が掲載されているコンテンツ(ブログ記事や動画)などを参照したときに、

 「へぇ~!」
 「なるほど!」
 「そうだったのか!」
 「知らなかった!」

といったリアクションを取るサイトが、ここでいう「面白いサイト」です。
記事を読んで興味深いと感じたり、そこでしか知りえないようなマニアックな情報に触れたとき、ユーザーはこのようなリアクションを取るのではないでしょうか。

おそらく、多くの事業者は自社サイトを「面白いかどうか」という観点でみていないと思います。しかし、インターネット上でSEO(Search Engine Optimization:狙ったキーワードで検索結果画面に上位表示させること)を高め、サイト流入を向上させるには面白いサイトづくりを心掛けてほしいのです。

面白いサイトとは、すなわち顧客が満足するサイトです。顧客が満足するサイトをGoogleは評価し、上位に表示してくれるようになります。サイト流入が増えれば、問い合わせや受注などの獲得につながることでしょう。

本コラムでは、面白いサイトづくりによってSEOを高め、自社サイトを「成果が出る」ようにするためのノウハウをご紹介します。

ほとんどの会社のサイトは面白くない

世の中の会社のほとんどのサイトは面白くありません。なぜなら、サイト運営は自社のことを知ってもらうことであり、面白くすることを目的としていないからです。そのため「商品・サービスの説明」「会社概要」「アクセスマップ」といった面白くない情報だけが掲載されることになってしまいます。

ユーザーは何らかの目的をもって皆さんのサイトを訪問します。何か解決したいことがあり、必要な情報を探しているから訪問するのです。せっかく訪問してくれたのに必要な情報が得られない、あるいは情報が少ない。このように、ユーザーが何も得ることなく、がっかりして帰って(離脱)しまうサイトを、Googleは顧客満足度の低いサイトとみなします。

Googleは、顧客満足度の低いサイトを検索結果の上位に表示させてくれません。Googleは多くのユーザーに検索エンジンを使ってもらうことで広告収入を得る企業です。そのためユーザーが探している情報に素早くアクセスできるよう仕組みを整え、満足してもらいたいと思っているのです。

おそらく本コラムの読者の多くは、SEOが弱いために自社サイトのアクセス数が少なく、受注につながっていない。そのためSEO対策が必要であるとお考えのことと思います。

近年は検索エンジン経由だけでなく、SNS、QRコード、アプリなどサイト流入につながる経路(流入経路)が多様化しています。そのため、「ウチはSNSをがんばって自社サイトへの流入を増やそう!」と考えてしまうかもしれません。しかし、せっかくSNS経由で自社サイトにアクセスしてくれたユーザーがいたとしても、品質が低い(面白くない)のであれば結局何も行動せずに離脱してしまいます。

そのため、まずは自社サイトの品質を優先的に高めることから始めてほしいと思います。

品質の高いサイトとは

SEO対策に取り組む最初の一歩目は、Googleの評価基準を知ることです。Googleは何をもって「品質が良いサイト」と判断するのでしょうか。実際にユーザーに「このサイト、良かったですか?」と聞くことができればよいのですが、それは非現実的です。

その判断基準は数多くあり、アルゴリズム(算出方法)は頻繁にアップデートが繰り返されていることから、一概にはいえないものがあります。とはいえ、ユーザーによって次のような操作が行われることで、Googleは「品質が良いサイトだ」と判断しているようです。

  • 滞在時間が長い
  • ゆっくりとスクロールしている
  • 訪問回数が多い
  • SNSで拡散している   

考えてみてください。もし皆さんが何らかのサイトで面白そうなコンテンツを発見したら、どういう行動をとるでしょうか?

そこに書かれている文字をすべて読もうとして、そのページの滞在時間が必然的に長くなるでしょう。すべて読むためにゆっくりとスクロールするでしょう。後日、また同じページに訪れて続きを読むかもしれません。内容が気に入ったり、共感したらSNSで拡散したり自分の知り合いにLINE等で知らせるかもしれません。動画コンテンツの場合、面白ければ最後まで飛ばさずに視聴するでしょう。

たしかに、これらの方法であればユーザーにいちいち感想を聞かなくてもサイトの品質が測定できそうです。このようにユーザーが取る行動を“エンゲージメント”と呼びます。Googleはこのエンゲージメントが高いサイトを「品質が良いサイト」と評価する傾向があるのです。

以上のことから、自社サイトのSEOを高めるうえでエンゲージメントが獲得できるコンテンツを持つことが重要であるとお分かりいただけたと思います。

とはいっても、現状は自社サイトのアクセス数が少なすぎてコンテンツの制作に消極的な事業者も多いかと思います。たしかに、せっかく時間と労力をかけて渾身のコンテンツを制作しても、そもそも人目に触れることがほぼない状況はつらいものです。

ニワトリが先か卵が先かではありませんが、自社サイトの流入数が伸びない原因は既存コンテンツの量的、品質的な不足にあります。したがって、まずはコンテンツ制作に力を入れる必要があります。コンテンツ量が増えてくるにつれて、少しずつ流入数が伸びてくるでしょう。

ただしSEOの効果が効いてくるまでには相当の時間がかかります。1年以上かかるかもしれません。SEOが低いうちはほとんどみつけてもらえず、苦痛に感じるでしょう。

コンテンツ制作が重要であることを理解しつつも、多くの事業者がこの苦痛に耐えきれず、途中で諦めてしまいます。しかしコンテンツを制作すること自体はあまりお金のかかる施策ではありません。SEO対策は、お金ではなく時間をかけるという発想が必要になります。そして何より重要なのは、継続することです。まずは1年、継続してみませんか。

コンテンツ制作で持つべき視点

自社サイトの品質はコンテンツの品質であるということ。そしてコンテンツの品質の高さとはエンゲージメントの獲得であるということをご理解いただけたでしょうか。

エンゲージメントを獲得するコツは、検索者の「検索意図」を理解することです。検索意図とは、検索者が検索する目的のことです。なぜ検索をしようとしたのかというと、それは何か求めていることや解決したいことがあったからです。

たとえば、「化粧品 乾燥肌」といったキーワードで検索する人は、お肌が乾燥するという悩みを抱えており、それを改善するための化粧品を探していると想像できます。これが「検索意図」です。検索意図を知り、それに答えるようなコンテンツ制作を行うことでエンゲージメントの獲得が期待できます。いずれはその検索キーワードで上位表示される可能性が高まることでしょう。

狙ったキーワードで自社サイトを上位表示させるには、検索者の検索意図をくみ取り、その回答をコンテンツによって提供することです。回答は様々あるでしょう。それは自社商品やサービスの提案かもしれないし、お肌に関する専門的な情報かもしれません。検索者に、「面白かった!」と思ってもらえるようなコンテンツを制作しましょう。

この他にも、コンテンツ制作において抑えておきたい事項をお伝えします。

コンテンツ量は適切か?

コンテンツの文字数に明確な基準はありません。少なくとも2000文字とか5000文字以上必要など諸説あり、定まっていません。しかしながらユーザー視点でみた場合、少ないよりはある程度のコンテンツ量があるほうが、有益な情報が得られる可能性は高いはずです。内容にもよりますが、文字コンテンツであれば1記事につき2,000文字以上を目指すとよいでしょう。

内容が理解しやすいか?

文字コンテンツであれば画像や表・グラフが適切に配置されているか。セクション見出しをつけるなど、読みやすさの工夫があるか。動画であれば、字幕をいれているか、聞き取りやすいか、退屈を感じないか(余計な間がないか)などです。

更新頻度は適切か?

まったく更新されないウェブサイトのSEOが高まることはまずありません。定期的に更新し記事を投稿するなど、鮮度に気を配りましょう。既存コンテンツに関しても“投稿したら終わり”ではありません。補足や追加情報を入れるなど、定期的な見直し(リライト)がされるべきです。

SEOが高まるまでは、上記を厳守しつつコンテンツ量を増やしていきます。
これを何か月、何年と継続していくことによりSEOが高まり、
検索で見つけてもらえるようになり、
コンテンツを読んでもらえるようになり、
エンゲージメントが高まり、
さらにSEOが高まる。

という好循環がうまれ、サイトへの流入数は指数関数的に高まっていくことが期待できるでしょう。ある日突然、自社サイトへの流入が増えだしたという話をよく聞きます。ぜひ、その日が来るまで諦めず継続していきましょう。

ターゲットキーワードを決める

コンテンツ制作の際に意識したいことがあります。それはあらかじめ「ターゲットキーワード」を決めておくことです。ターゲットキーワードとは、上位表示させるためのキーワードのことです。SEOは上位ランクのポジション争いでもあるので、これは「競合他社に負けたくないキーワード」であるとお考えください。

繰り返しますが、ターゲットキーワードを決めるには、まずは「検索者のニーズを知る」必要があります。検索者は、何か知りたいことや解決したいことがあるから検索します。たとえば以下のようなキーワードで検索する人は、どんなことを知りたいのかを想像してみましょう。

  1. 「ラーメン 渋谷」
  2. 「求人サイト ランキング」
  3. 「旋盤加工 納期」

いかがでしょうか。キーワードから推測するしかないため正解があるわけではありませんが、おそらく次のようなニーズが想像できます。

  1. いま渋谷にいて、いる場所から近いラーメン屋を探している
  2. 良い人材を探しており、評価の高い求人サービスサイトを探している
  3. 旋盤加工を短納期で対応してくれる会社を探している

上記のように、検索者は2語以上のキーワードを組みあわせて検索することが多いものです。そのためターゲットキーワードも2語以上を組み合わせて設定するとよいでしょう。

ターゲットキーワードを選定するのはなかなか骨の折れる作業です。そこで、おすすめのキーワードを提案してくれるツールをご紹介します。

このツールを使うとおすすめのキーワードを大量に提案してくれます。無料で利用可能です。世の中のニーズが何となくみえてくるので、コンテンツ制作に役立てることができるはずです。自社では到底思いもつかないキーワードが見つかる可能性もあるため、一度実行してみることをお勧めします。

コンテンツのネタをどうするか

ターゲットキーワードを決めたらコンテンツ制作に入ります。しかし、そんなにネタがあるわけではないし続ける自信がない…。と思われるでしょう。

コラム冒頭で、面白いコンテンツとはユーザーに「へぇ~!」とか「なるほど!」と思ってもらえるものといいました。皆さんは事業者ですから、おそらくその分野での専門知識や業界に関する情報など、多くの人が知りえない情報をすでにお持ちであるはずです。それも立派なコンテンツ候補になりえるのです。サイトの訪問者は業界に明るいプロだけとは限りません。むしろまったくの素人ほうが数は多いはずです。

そのような素人の方に対し、少しずつ業界のことや知識を伝えるなど、「顧客を育成する」という発想を持つとよいでしょう。その方たちは、将来的に顧客になってくれるかもしれないのです。

一例を挙げます。化粧品を製造・販売している会社であれば、次のようなトピックで記事を書いてみると面白くなるのではないでしょうか。
「日本人のスキンケアの歴史」(スキンケアの歴史を紐解いて解説する)
「化粧品の収納方法」(取り出しやすい、上手な収納方法について解説する)
「化粧品関連の資格試験」(案外たくさん資格があること、それぞれの特徴を解説する)

このように直接セールスとは関係のないことでもよいのです。むしろ、ユーザーにとって「面白い」情報とは、業界に関するマニアックな知識だったりします。事業者にとっては当たり前なことも、素人にとっては新鮮な情報になりえます。また、コンテンツ制作を通じて社員の知識やスキルが増加することも期待できます。

このような視点であればコンテンツのネタ不足で困ることは少なくなるでしょう。重要なことはエンゲージメントの獲得です。しっかりと読んでもらい、ユーザーに満足してもらうことです。

以上、SEO対策とはすなわち「面白いサイトづくりをすること」であるとお伝えしました。それにはエンゲージメントの獲得につながるコンテンツ制作が必要となりますが、まずは簡単な情報からでも発信していくとよいでしょう。

面白いコンテンツづくりによってユーザーを満足させ、コンバージョンの獲得につなげて業績を向上させてほしいと思います。

コラムニストプロフィール

石井里幸(いしい・さとゆき)

中小企業診断士、ITコーディネータ。
中小企業向けに「ITの便利さを実感してもらうための活動」を行っている。
ITツールの導入からWebサイト運用まで、中小企業のIT周りを全面的に支援する。