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デジタルマーケティングのためのデータマネジメント

公開日:2023/11/30

石山祐己(いしやま・ゆうき)

デジタルマーケティングの成果は、間違いなく「データ」の活用によって左右されます。しかし中小企業においてはデータの管理が場当たり的であることも多く、その効果的な活用に対しての不安が感じられます。
今回はデータの最大限の活用とその価値を体系的に引き出す方法について、国際的な非営利団体DAMAが、データマネジメントにおいて有益な資料かつ指針となることを目指して策定した入門書「DMBOK」をベースに解説していきます。DAMAとは、特定のベンダーや技術、手法に依存しないことを前提として、データのマネジメント手法を体系化された分野として確立し推進する活動を行う、プロフェッショナルなデータ専門家による団体です。以下にデータマネジメントの重要性、それに伴うリスク、そして取り組むことのメリットを詳しく見ていきましょう。

データマネジメントの価値とその欠如時のリスク

DMBOK(Data Management Body of Knowledge)は、データマネジメントのベストプラクティスと方針を網羅した指南書です。このガイドラインを用いない一般的な状況では、事業活動においてどのような問題が生じるのでしょうか。ここではそのリスクを列挙します。

非効率なデータ利用

まず、データの組織化や構造化が不十分な場合、データへのアクセスや分析が困難となります。その結果としてマーケティング戦略の策定や市場動向の把握が遅れ、競争力の低下につながる恐れがあります。

データの品質に関する課題

不適切なデータの品質管理は、誤った情報を基にした判断を招きかねません。この結果、市場の誤解や不正確な予測が生じ、企業のブランドや信頼に悪影響を及ぼすことになるかもしれません。

データセキュリティの欠如

DMBOKにはデータのセキュリティやプライバシーに関するガイダンスも含まれています。この観点が欠けると、顧客情報の漏えいや不正アクセスのリスクが増大し、企業の評価や業績に深刻なダメージをもたらす可能性が生じてきます。

データ統合の問題

場当たり的なデータ管理を繰り返すと、複数形式のデータが乱立している状況になることもあり得ます。こういった場合には異なるシステム間のデータ統合が難しくなり、情報の断片化や二重入力などの問題が生じるリスクが高まります。

このようにDMBOKの観点は、中小企業にとってデータを効果的かつ安全に活用するための重要な指南となるものです。DMBOKを取り入れることで、データに関連するさまざまなリスクを回避し、ビジネスの成功を支える強固なデータ基盤を築くことができます。

DMBOKに学ぶデータマネジメントの10の要点

データマネジメントは企業の貴重な情報資産を最大限に活用し、的確な意思決定を後押しするための不可欠なステップであり、DMBOKにはその中核となるポイントが網羅されています。しかしながらその重要性の一方で、専門的な言葉が多く具体的な記述が少ないため、なかなか実感が湧きにくいのも事実です。
ここではDMBOKに見るデータマネジメントの核心を、10の要点で簡潔に解説します。

1. データアーキテクチャ: 企業のデータとビジネスプロセスを結びつける全体図を策定し、データの流れや利用を明確にします。

データアーキテクチャは企業のデータとビジネスプロセスを結びつける全体像を策定し、データの流れや利用を明確にするものです。たとえば、どのような顧客接点のパターンがあり、そこからどのような営業活動に取り組み、どう成約に結び付けていくのか、という流れ全体をフロー図として描く、といったことが考えられます。こういった情報をデータ活用の基盤とし、正確な意思決定や効率的な業務遂行をする上で活用します。

2. データベースの保守管理: データベースの健全性を維持し、長期的な安定運用を確保します。

構造的データを管理するため、HubSpotやZohoなどリアルタイムにデータ共有が可能なクラウド型ソフトウェアツールの採用は非常に効果的です。これにより、即時のデータアクセスと更新が容易となり、業務の効率と迅速性が向上します。

3. 非構造化データの管理: 議事録やスケジュールなど、データベース外のデータも積極的に把握し、適切に管理することで情報資産の範囲を拡大します。

非構造化データの管理は、情報資産の範囲を網羅的に拡大する要となります。たとえばWordやExcelなどの個別ファイルが散在するような場合、統一された情報アクセスや利用が難しくなります。このような状況下において、たとえばオンラインストレージサービスを利用するなどしてクラウド化を進めることにより、データの一元管理と迅速なアクセスが可能となり、情報の有効活用が期待できるようになります。

4. データの効率的な移動: データの抽出、変換、取り込みを効率的に管理し、迅速な情報伝達と活用を実現します。

データを効率的に移動させる観点を持つことで、迅速な情報の取得と活用が実現されます。そのためには綿密に視覚化されたデータアーキテクチャを参照し、データの取得タイミングや変換方法を計画的に考えることが重要です。情報の流れに応じて適切なツールを選定・利用することで、組織の意思決定も迅速化します。

5. データ関係性の可視化: データ間の関連性や連携を図示し、より深い洞察や分析をサポートします。

データの関係性を可視化する際、Excelによるグラフ作成も一つの方法ですが、Power BIのようなビジネスインテリジェンスツールを使用すると、より高度な分析や洞察の提示が可能となります。これによりデータ間の複雑な関連性も明瞭に把握でき、戦略的な意思決定を強化することができます。

6. 信頼性の高いデータ管理: 一貫性があり信頼できるデータの提供を実現し、ビジネスの質を向上させます。

信頼性の高いデータ管理のためには、全体のビジネス目的を重視し、特定のツールに固執しないアプローチが求められます。単にツールの形式に合わせてしまうと各工程でのデータ解釈が異なる可能性が生じ、その判断による影響からも効率が低下します。統一された体系でのデータ管理を心掛けることで、業務の質が向上します。

7. セキュリティと取り扱いルール: セキュリティポリシーやデータ取り扱いルールを定め、定期的にその実施状況を監査することで、情報の安全性を確保します。

セキュリティと取り扱いルールの徹底は、企業の信用や社会的評価を保護する上で欠かせません。データの漏えいは大きなリスクを伴い、企業の信頼性を一瞬で損なう可能性もあります。この領域は後手になりがちですが、先手を打ち厳格に管理することが極めて重要です。

8. 高品質なデータの提供: 利用者の要求を満たす品質のデータを保持し、常に正しく的確な情報を提供します。

必要となるデータ品質は、利用目的によって異なります。経営層が参照するデータは、戦略的な意思決定に正確に役立つことが求められます。一方で現場レベルのデータは、日常の業務フローをサポートする形での精度が求められるでしょう。ここでは状況に応じた品質管理が不可欠です。

9. メタデータ管理: データの背景や意味を示す「メタデータ」を管理することで、データの正確な解釈や利用をサポートします。

メタデータは「データのデータ」として、データの意味や背景を明示的に示す、いわば「データのための索引」のような役割を果たします。一次データとは異なるこの情報は、データの解釈や正確な利用のための鍵となります。中長期的に見ればメタデータの管理は、データ活用の質を向上させるために欠かせない要素です。

10. 組織的な意思決定: データマネジメントの全体指針やルールを定め、組織全体で一貫した意思決定を行い、データの戦略的な利用を推進します。

 組織的な意思決定は、データマネジメントの根幹を形成します。これまでの各ポイントを踏まえた上で、体制として取り組むためのデータ認識と意識が不可欠です。単に理解するだけではなく具体的実践に移し、データマネジメントの質を段階的に高めるようとする姿勢こそが、結果につながるデータマネジメントの鍵となります。

終わりに

これらの要点を取り入れたデータマネジメントを実践することで、データが持つ本来の力を存分に引き出すことができ、デジタルマーケティングの効果を大きく高めることが期待されます。ターゲット顧客の正確な理解や市場動向の把握は迅速な意思決定に直結するため、競争力強化や業務の効率化に大きく寄与します。

上記のようにDMBOKの概念を取り入れることで、具体的な手法やツールの選定、データ活用の最適な方法に向けて効率的に考え方を広げることができます。まずは比較的容易に具体化できるポイントから取り組みを始め、少しずつでもチームや組織に変容をもたらすことが、デジタルマーケティングの成功に向けた一助となるでしょう。

コラムニストプロフィール

石山祐己(いしやま・ゆうき)

株式会社改善計画代表。中小企業診断士、東北大学工学部機械知能系卒、JAPAN MENSA会員、情報システム屋。ソフトウェアメーカーや外資系エンジニアリング企業での経験等から培われた技術力と論理思考力を活かして中小企業の課題解決をするべく、現在はC#、TypeScript、React、PythonやAWS、Azure等のフルスタックなデジタル技術を駆使して改善活動に尽力している。