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コンテンツ戦略で見落としがちな点と解決へのステップ

公開日:2023/08/21

岩岡博徳(いわおか・ひろのり)

デジタル時代の今、ウェブコンテンツ戦略は中小企業のビジネス成功にとって欠かせない要素となっています。しかし、その重要性を理解していても、中小企業が効果的な戦略を構築するのは容易なことではありません。このコラムでは、特に日本の中小企業(製造業やサービス業)が陥りがちな落とし穴と、それを克服するための実用的な解決策を解説します。

よくあるデジタルマーケティング上の問題点

現代のビジネス環境では、中小企業がデジタルマーケティングを取り入れる際に数多くの困難に直面します。

そのよくある一例として、機械部品製造をしているA社の例を挙げましょう。この企業は、自社が生産する耐久性に優れた機械部品の詳細な説明をウェブサイトに掲載しています。しかし、サイトの閲覧者数は思うように伸びず、その内容が十分に伝わっていないと感じています。これは製造業における典型的な問題の一つで、高品質な製品情報が十分に伝わらず、その価値が消費者に認識されにくいという問題があります。

一方、都内のB社は美容院の予約サイトを運営しています。サイトは一日に数百人のユーザーが訪れ、業界内で一定の認知度を持っているにも関わらず、問い合わせ数や予約率は予想ほどには伸びていません。サービス業が直面するこのような問題点は一般的で、ウェブサイトの訪問者数とその成果(問い合わせや予約など)の間にギャップが存在します。

これらに存在する共通した原因

これらの問題の背後には、共通する原因があります。それは「ユーザーへの理解の深さ」、「ウェブサイトの使いやすさ」、そしてそれらを組み合わせた「効果的なコンテンツ戦略」の不在です。たとえば、A社は高品質な製品情報を提供していますが、それが顧客の実際の問題解決にどのように役立つのかを具体的に示していません。B社は、欲しい情報がバラバラに掲載されており、予約までのタップやクリックの回数が多く、ユーザーへの負担が多くありました。

ウェブコンテンツの解決ステップ

それでは、これらの問題を解決するためには、どのようなステップを踏むべきでしょうか?

その1.ユーザー理解

まずA社が直面しているような問題を解決するには、ユーザーが何を求めているのかを理解することが重要です。製品の特性だけでなく、それがユーザーの製造プロセスを効率化する具体的な事例を通じて伝えることで、ユーザーは自身の問題解決にどのように役立つのかを具体的にイメージできます。これにより、ユーザーは製品の価値を理解しやすくなり、購入意欲を引き出すことが可能となります。これは企業が自身で行うこともできますが、外部のウェブ制作会社に依頼することも可能です。ただし、コントロールの難しさや高額なコストが発生する可能性があるため、慎重な判断が求められます。

その2.使いやすいデザイン

次に、B社の問題を解決するには、ウェブサイトのユーザビリティを改善することが求められます。情報を見つけやすく、予約フォームも簡単に利用できるようなデザインにすることで、訪問者を予約までの流れに導きやすくなります。これは専門的なスキルが必要な作業であり、企業が自身で行うことも可能ですが、専門的なスキルを持つウェブデザイナーやデベロッパーに依頼することも一つの手段です。ただし、外部のウェブ制作会社に依頼する場合も、自社でのコントロールが効きにくくなることや、場合によっては高額なコストが発生する可能性があるため、慎重な判断が必要です。

その3. コンテンツの強化

企業が自社の製品やサービスの情報を提供するだけでは十分ではありません。顧客が直面する問題やニーズに対する解決策として製品やサービスを位置づけることが求められます。そのためには、具体的な事例や証言、データを用いて製品やサービスの価値を伝えることが重要です。例えば、製造業であるA社は自社の製品が顧客の生産効率をどれだけ改善するのか、実際の数値を用いて示すことができます。また、サービス業であるB社は具体的な顧客の声を用いて、自社のサービスが顧客の問題をどのように解決したのかを伝えることができます。

その4. SEO対策

ウェブサイトの内容がどれだけ良質でも、検索エンジンで上位に表示されなければ、新規の訪問者に見つけてもらうことは難しいでしょう。SEO(Search Engine Optimization)対策を実施し、検索エンジンからの訪問者数を増やすことで、より多くのポテンシャルな顧客に自社のウェブサイトを訪れてもらうことが可能となります。SEO対策は、専門的な知識が必要となるため、自社で行うことも可能ですが、専門的なスキルを持つSEOエキスパートに依頼することも一つの手段です。

~まとめ~

中小企業のデジタルマーケティングの困りごととして、製造業A社はウェブサイトの閲覧者数が伸びず、製品情報が消費者に伝わりにくいと感じています。一方、サービス業B社は予想ほどの問い合わせ数や予約率を得られず、ウェブサイトの訪問者数と成果のギャップに悩んでいます。共通する原因として、「ユーザーへの理解の深さ」、「ウェブサイトの使いやすさ」、「効果的なコンテンツ戦略」の不在が挙げられます。解決策として、「ユーザー理解を深めること」、「使いやすいデザインを採用すること」、「コンテンツを強化すること」、「SEO対策を行うこと」が提案できます。これらのステップを総合的に取り組むことで、中小企業はビジネスの成長を実現することができますが、スキルやリソースの不足には注意しながら、内部と外部のバランスを取ることが重要です。

コラムニストプロフィール

岩岡博徳(いわおか・ひろのり)

1973年生まれ。横浜市立大学商学部経営学科卒業、東京都立大学大学院経営学修士(MBA)。中小企業診断士、ITコーディネータ、東洋大学大学院経営学研究科特任教授。総合電機メーカー系商社で経営企画などに従事し、2004年に経営コンサルタントとして独立開業、2008年に法人化し代表取締役に就任した。自社でのマネジメント改革を通し、ITによる業務効率化や事業計画策定、PDCA型マネジメント導入を得意とする。現在は事業承継して退任後、省庁や都県等の公的機関、金融機関を通して数多くの中小企業支援を行っている。