• トップ
  • WEBサイトで販路を開拓・拡大したい企業が見逃しがちな活動10選(1)

WEBサイトで販路を開拓・拡大したい企業が見逃しがちな活動10選(1)

公開日:2022/07/26

岩岡博徳(いわおか・ひろのり)

すでに専門の製品やサービスを開発・販売している多くの企業が、さらなる展開として、WEBサイトを活用して新たな仕事を受注したり、EC(電子商取引)をしたりしています。

例えば、独自の加工技術や保有設備をWEBサイトで詳しく紹介して、お問合せを受けるケースや法人向けに販売している製品を消費者向けに改良してネットショップで販売するケース等です。

このように新たな販路をWEBサイトに求めていくことはビジネスチャンスを拡大しますが、WEBサイトを介したビジネスを専業「にしていない」企業にとって、インターネット上で販路を築いていくのは非常に悩ましい問題です。中には、専用WEBサイトやSNSを立ち上げ、PPC広告(PayPerClick。クリックされるたびに広告費が発生する仕組み)を使っても売上につながらなかったり、採算がとれるほどの販路拡大に至らないこともよくあります。このように販路に悩む企業から相談を受けることは多々あります。

今回はこのようなWEBサイト上で販路を開拓・拡大したい企業にありがちな「ついつい見逃してしまう活動」10選を複数回に分けてお届けします。

ケース1.明確な顧客像の設定を見逃している

販路の課題として、まず最初に気になるのは「どのような顧客に販路を開拓・拡大したいのか?」でしょう。この質問を相談企業に投げかけると、概して明確な回答が返ってきません。「業界内の会社員」「20代から60代の女性」「東京在住の方」といった”なんとなく”の回答になってしまいがちです。

例えば、産業用の製品を現在の販路に加えて販売したいのであれば、「○○業界における従業員150名程度の規模の企業において、新規製品開発に手間がかかっており、効率よく業務を進めたいと考えている主任・係長クラスの方」といった明確な顧客像が描くべきところですが、これがなかなか難しいようです。

難しい理由のひとつは「自信がない」ことにあります。顧客像を明確にすればするほど対象となる方の層を狭める事になり、販路につながるのか不安になるからです。しかし、この発想はむしろ逆に考えたほうが良いです。顧客像を明確にしないままにWEBサイトを制作しても、勧誘を受けたインターネットユーザーからすれば、これが本当に自分にとって役に立つものなのか、どんなメリットがあるのか、効果があるものなのか、がよくわからない、いわば”刺さらない”状況になります。

結果として同業他社との差別化にもなりにくい状態になります。この場合、そのインターネットユーザーが自社の商品・サービスを購入・利用してくれることは難しくなってしまいます。

従って、極端なことを言えば、ある一人の人物のパーソナリティが描けるような顧客像(=ペルソナ)が描けたほうが、メッセージ性の強いWEBサイトを構築できます。

ただ、先述の通り、顧客像を明確にすればするほど、対象となる顧客ターゲットの数が減るので心配になるでしょう。しかしそれは問題ありません。この顧客ターゲットに刺さる内容が展開されるので、自ずと「この製品(やサービス)が欲しかった」と評判になりやすくなります。この評判は、口コミになりやすく、想定していなかった新たな顧客が増えていきます。

先ほどの「○○業界における従業員150名程度の規模の企業において、新規製品開発に手間がかかっており効率よく業務を進めたいと考えている主任・係長クラスの方」と設定しても、評判を呼べば、部長や現場担当者やフリーランスの方が購入することもあるでしょうし、業界の川上や川下に位置する企業内に販路が拡大する可能性もあります。

このように広がっていくものであるので、最初は、顧客像をできる限り明確にするようにしたいところです。

ケース2.WEBサイトやSNSの更新や改修の重要性を見逃している

インターネットが普及している現代において、いわゆるWEBサイトやSNSによる告知は多くの企業で必須であることは言うまでもありません。そもそもインターネットがない時代の告知は、紙によるチラシを制作・印刷をして、広告代理店やメディア企業を通すことが通常でした。もちろんコストがかかるため、告知の量や頻度は資本力がある大企業に有利であり、中小企業においては限界がありました。

一方で、WEBサイトやSNSを上手に使えば、工夫次第で、資本力に関係なく十分告知をすることができるようになりました。つまり、WEBサイトやSNSは資本力に限りがある中小企業の販路開拓・拡大に有効で優秀なツールとなりえます。だからこそ、WEBサイトやSNSに書かれる内容は顧客の目を引くような内容にしなければならないのです。WEBサイト内のデザインや文章を更新・改修し続けるべきで、SNSにおいては、タイムラインに高頻度で告知を継続していきたいところです。

しかし、現実は、WEBサイトの見直しは数年に1回、SNSでの発信は1年以上されていないというケースも散見されます。その理由は「更新するネタがない」「WEBサイトやSNSの更新よりも他に優先する業務がある」ということが多いようです。このような理由からWEBサイトやSNSが持つ有効性をあまり認識せず、ついつい目の前にある他の業務を優先しがちになります。

ここで時間の観点から考えてみましょう。例えば、顧客に訪問して告知する業務があったとして、それにかかる時間はそれなりに長いものです。顧客への訪問時間が往復で1時間、説明時間に1時間、その他、細切れ時間で30分・・・この業務に要した時間は2時間半と約半日分となります。

これに対し、WEBサイトのチェックやSNSの更新は日々行えば、1回当たり10分程度で済みます。WEBサイトやSNSの作業は定期的に行っていけば思った以上に短いものです。更新するネタを考えることについても、考えるだけであれば、他の業務と同様に日々の中で行うことができるはずです。

しかしこの10分がなかなかとれない現状があります。それはWEBサイトやSNSの更新が業務の一環であることの意識が希薄であるからでしょう。今一度、WEBサイトやSNS更新は重要な業務のひとつであるという認識を持つべきでしょう。

コラムニストプロフィール

岩岡博徳(いわおか・ひろのり)

1973年生まれ。横浜市立大学商学部経営学科卒業、東京都立大学大学院経営学修士(MBA)。中小企業診断士、ITコーディネータ、東洋大学大学院経営学研究科特任教授。総合電機メーカー系商社で経営企画などに従事し、2004年に経営コンサルタントとして独立開業、2008年に法人化し代表取締役に就任した。自社でのマネジメント改革を通し、ITによる業務効率化や事業計画策定、PDCA型マネジメント導入を得意とする。現在は事業承継を行い、省庁や都県等の公的機関、金融機関を通して数多くの中小企業支援を行っている。