Web広告とは、WebメディアやSNS、メールなどに掲載される広告のことを指し、デジタルマーケティングの重要な施策の一つです。Web広告のうち、約80%が運用型広告と呼ばれるもので、よく目にする例として、GoogleやYahoo!などの検索エンジンで何かを検索したときに表示される検索連動型広告や、Facebook、InstagramやXなどで表示されるSNS広告、YouTubeなどで表示される動画広告などがあります。今回の用語集では、運用型広告のうち、圧倒的なシェアを誇るGoogle広告を例に基本用語を説明していきます。
1)広告の種類に関する用語
運用型広告
広告の掲載枠が特定されておらず、入札額、ターゲット、広告内容などを変動させながら出稿できる広告のことです。下記の純広告とは違い、成果を見ながら柔軟に運用できる点が大きなメリットです。
純広告
特定の媒体(メディア)の広告枠を買取り、一定期間配信する広告のことです。純広告の枠を提供する媒体は、多くの読者やPV数を誇っているため、ブランディングや商品・サービスの認知度向上に役立つというメリットがあります。
Google広告
Googleが提供する広告主向けの広告配信プラットフォームで、「GSN(Google Search Network :Google検索広告)」「GDN(Google Display Network:ディスプレイ広告)」「YouTube広告」などがあります。
検索連動型広告
検索エンジン(GoogleやYahoo!など)で、ユーザーが検索した語句に連動して検索結果ページに表示される広告のことです。商品やサービスを探しているなどニーズが明確になっている顕在顧客層にアプローチできるという特徴があります。
ディスプレイ広告
ユーザーが閲覧しているWebサイトの広告枠に、画像や動画、テキストなどさまざまな形態で表示される広告のことです。Webサイトの内容(コンテンツ)に連動して表示される広告が決まるので、コンテンツ連動型広告とも呼ばれます。検索連動型広告に比べるとユーザーのニーズは明確になっていませんが、潜在顧客層にアプローチして商品やサービスの興味・関心を喚起できることという特徴があります。
リスティング広告
検索連動型広告のことをリスティング広告と呼ぶ場合もありますが、広義には「検索連動型広告」と「ディスプレイ広告(コンテンツ連動型広告)」の両方を含んでいます。関心度合いは異なりますが、どちらも商品やサービスに興味・関心のあるユーザーに対して広告表示できることが特徴で、広告がクリックされるたびに料金が発生する「クリック課金型」が採用されています。
リマーケティング/リターゲティング広告
自社のWebサイトを訪問したことがあるユーザーをターゲットにして、ディスプレイ広告を配信する手法です。自社サイトに訪問した、興味・関心のあるユーザーに絞ってアプローチできるというメリットがあります。Googleでは「リマーケティング」、Yahoo!やFacebookでは「リターゲティング」と呼ばれています。
2)広告運用に関する用語
検索クエリ
検索エンジンの検索窓にユーザーが入力した語句のことです。クエリ(query)は英語で「質問・疑問」の意味があり、検索エンジンに「語句」を入力して質問をすることから「検索クエリ」と呼ばれています。クエリには大きく3つのタイプがあり、情報を得たいときの「インフォメーショナルクエリ」、具体的な行動を起こしたいときの「トランザクションクエリ」、特定のサイトにアクセスしたいときの「ナビゲーショナルクエリ」に分類されます。
キーワード
広告運用における用語としては、ユーザーの検索語句(検索クエリ)に対して広告を表示させるために、広告主側が広告のプラットフォーム内に設定する語句のことをキーワードと呼びます。検索エンジンのシステムは、「ユーザーの検索語句(検索クエリ)」と「広告主が設定したキーワード」の関連性を見極め、検索結果画面に広告を表示させます。
ビッグワード
検索ボリューム(検索エンジンで検索される回数)が非常に多い語句(検索クエリ/キーワード)のことで、目安として月間の検索ボリュームが1万以上の語句を指します。ビッグワードをSEO対策で上位表示させるのは難しいですが、広告の場合はSEO対策よりも少ない工数で検索結果画面に広告表示が可能です。ただし競争率と入札単価が高い点や、ユーザーの検索意図を明確に把握しにくいといったデメリットがあります。
スモールワード
検索ボリュームが少ない語句(検索クエリ/キーワード)のことで、目安として月間の検索ボリュームが1,000以下の語句を指します。検索数が少ないため、多くの流入は期待できませんが、商品やサービスに関連性が高いキーワードを設定することで、コンバージョンにつながりやすいユーザーを集められる点がメリットです。また、競争率と入札単価を比較的低く抑えられる点もメリットです。
なお、月間検索ボリュームが1,000~1万の語句(検索クエリ/キーワード)は「ミドルワード」と呼ばれます。
マッチタイプ
上記「キーワード」の項目で記載したように、検索エンジンのシステムは、「ユーザーの検索語句(検索クエリ)」と「広告主が設定したキーワード」の関連性を見極め、検索結果画面に広告を表示させます。その際にどの程度の一致度合いを求めるかを指定するのが、キーワードのマッチタイプです。たとえば、多様な検索内容に対して広告を表示したい場合はインテントマッチを使用し、特定の検索内容だけを対象にしたい場合は完全一致を使用します。
インテントマッチ
登録したキーワードと一致もしくは関連する内容の検索クエリが広告の表示対象となります。キーワードの語句そのものは入っていなくとも、検索エンジンのシステムが関連すると評価した検索クエリも含まれます。これにより広告主側は、多様なキーワードを網羅する手間が省け、成果を上げているキーワードに注力できます。
かつて、部分一致と言われていたマッチタイプが、Google AI や言語モデルの進化に伴い発展して、2024年7月からインテントマッチに改称されました。
フレーズ一致
登録キーワードと同じ意味の内容を含む検索クエリが広告の表示対象になります。語句に差があっても、同じ意味に解釈できる場合は一致と見なされます。また、キーワードに具体的な情報を追加した検索も一致と見なされます。
完全一致
登録したキーワードとまったく同じ意味または意図の検索クエリが、広告の表示対象となります。完全一致は広告の表示対象を最も絞り込むことができる一方、広告表示対象となる検索の数はフレーズ一致やインテントマッチよりも少なくなります。
3つのマッチタイプの比較
<Google広告 ヘルプページに記載されている例より>
管理画面上で、広告主が設定したキーワードが「一人旅 温泉」の場合。
- 【インテントマッチ】を選ぶと、「一人旅 温泉」「ひとり旅 温泉 おすすめ」「大宮から電車で行ける温泉」「湯治の宿」「傷心 旅行 一人旅」「リフレッシュ旅行 おすすめ」「デトックス 温泉」などでユーザーが検索した際に広告が表示されます。
- 【フレーズ一致】を選ぶと、「一人旅 温泉」「ひとり旅 温泉 おすすめ」などでユーザーが検索した際に広告が表示されます。
- 【完全一致】を選ぶと、「一人旅 温泉」でユーザーが検索した場合のみ広告が表示されます。
入札単価
広告主が設定する、ユーザーが広告を1回クリックする毎に支払う上限金額のことを指します。上限額のため、実際の支払額は入札単価よりも低くなる可能性があります。例えば入札単価を100円に設定すると、平均クリック単価(CPC:Cost Per Click)は100円を超えることはありません。
広告ランク
検索結果画面などに広告が掲載可能かどうか、また掲載可能な場合に掲載順位を決定するために使用される数値です。広告ランクは入札単価のほかに、競合状況、ユーザーが検索に至った背景(コンテキスト)、広告の品質など、複数の要素に基づいて算出されるため、単に入札単価を上げるだけでは広告の上位表示を狙えない仕組みになっています。
品質スコア
クリック率やキーワードと広告との関連性、ランディングページの品質などによって評価され、検索結果に連動して表示される「検索連動型広告」の掲載順位を決める指標の一つとなります。品質スコアが高くなるほど、入札単価を低くおさえつつ、広告掲載順位を上げることが可能になります。
3)広告の効果指標に関する用語
コンバージョン(CV: Conversion)
出稿している広告の最終的な成果を表す指標です。成果はビジネスにより異なり、購入完了、申し込み完了、資料請求などがコンバージョンとして設定されます。
コンバージョン率(CVR: Conversion Rate)
広告がクリックされた回数のうち、コンバージョンに至った割合を示す指標で、「コンバージョン数÷広告クリック数(サイト訪問者数)×100」で算出します。広告運用においてはCVRの改善が重要となります。
コンバージョン単価/獲得単価(CPA: Cost Per Acquisition /Action)
1件のコンバージョンを獲得するためにかかった広告コストを示す指標で、「広告コスト÷コンバージョン数」で算出します。複数配信する広告パターンのうち、CPAの数値が低い方が効率の良い広告だと評価できます。
クリック単価(CPC: Cost Per Click)
1クリックに対して発生する広告コストを示し、広告がクリックされるたびに料金が発生する「クリック課金型」広告で用いられる指標です。「広告コスト÷クリック数」で算出されます。
クリック率(CTR: Click Through Rate)
広告が表示されたときにクリックされた割合を示す指標で、「クリック数÷表示回数×100」で算出します。クリック率が高ければ訪問数が増えるため、広告効果が高いと評価できます。
ROI(Return On Investment:アールオーアイ/ロイ)
投資額(広告費)に対して、広告経由でどれだけの利益が得られたかを示す指標で、「利益金額÷投資金額×100」で算出できます。ROIが高いほど、採算性の高い広告施策ということになります。
ROAS(Return On Advertising Spend:ロアス)
広告費に対して、広告経由でどれだけの売上が得られたかを示す指標で、「広告からの売上÷広告費×100」で算出します。ROASが高い広告は、売上に寄与しているということになるので、予算配分を高くしたり、入札価格を上げたりといった施策を行うことができます。一方、ROASが低い広告は、予算配分を低くしたり、クリエイティブやランディングページの改善を行ったりなどの施策が必要だと判断できます。
今回は、入門者向け、初心者向けとして、Web広告の基本的な用語を紹介してきました。Web広告やデジタルマーケティングの担当になったら、必須の知識となります。用語を暗記する必要はありませんが、意味をしっかりと理解しておきましょう。