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オンライン展示会を成功に導く出展前準備と出展後アプローチ

公開日:2023/09/15

原田泰宏(はらだ・やすひろ)

コロナの感染拡大が収束に向かい、以前ほどオンライン展示会・ハイブリッド展示会は開催されなくなってきましたが、オンライン参加の心理的ハードルが下がったこと、参加者が時間や場所に縛られずに参加できること等から、まだまだニーズは高いと考えられます。そこで本コラムでは、オンライン展示会の出展前準備や出展後の顧客アプローチ等について解説をします。

オンライン展示会の特徴

オンライン展示会とは、Webを活用したバーチャル空間で行うオンライン上の展示会のことです。Web上で準備から開催までのプロセスが可能であるため、地域や国の垣根を越えた大規模展示会や、リアル展示会(オフライン)とオンライン展示会を同時に開催するハイブリッド型の展示会も増加しています。オンライン展示会でできることは、主に以下のとおりです。

  1. 映像や画像・テキストで商品・サービスを紹介(プレゼンテーション)
  2. カタログや営業資料のダウンロード(メールアドレスの取得)
  3. Web上での講演やセミナーの配信(Zoom・Google Meet・Teams等)
  4. チャットでのコミュニケーション
  5. オンライン商談(Zoom・Google Meet・Teams等)
  6. 展示会の参加者へ向けたWeb上でのアンケート(参加者情報の収集)

オンライン展示会のメリット

そもそも展示会には、一堂に会した様々な先端技術や商品から商品開発のヒントを得たり、大企業や主催者が集めてくれた成約率の高い参加者を捕まえて見込み客化できる、等の出展者メリットがあります。加えてオンライン展示会には、リアル展示会にはない以下のメリットがあります。

  1. コストの節約ができる
    リアル展示会と比べ出展料は安価ですし、ブース設営費・人件費・交通費・宿泊費はもちろん、展示会で配布するチラシやパンフレットの印刷費も必要ありません。
  2. 参加者が時間や場所に縛られない
    オンライン展示会は、時間や場所に縛られず、いつでもどこからでも参加できます。海外居住中・出張中など、今まで参加を断念する理由となっていた障害がなくなりますし、Webは基本的に人数の制約がないため、数多くの方々に講演やセミナーを視聴していただき、集客を図ることが可能です。また悪天候・災害や交通機関遅延の影響を受けないことも、リアル展示会との大きな違いです。
  3. 質の高い参加者データを収集できる
    出展者は、参加者の閲覧ルート・重点的に見ていたページ・参加者の滞在時間等の把握が可能であり、また自社に興味を持っている顧客が自ら訪れてくれるため、質の高い参加者情報を容易に集めることができます。
  4. CGやVR・パノラマ動画などの仕掛け次第で参加者の興味や関心を引ける
    オンライン上では、CGはもちろん、VRでリアルな展示会を体感していただいたり、パノラマ動画を活用するなどして商品やサービスを体験していただいたりすることができます。インパクトのある映像を準備することで、参加者の印象に残りやすい状況を作り出すことができます。

オンライン展示会の出展準備

オンライン展示会の出展準備のポイントは以下のとおりです。リアル展示会との共通点・相違点をしっかり踏まえて、準備をしましょう。

  1. 展示するコンテンツの作成
    出展する展示会が決まってまず行わなければならないのが、展示ブース用ページのコンテンツ制作です。Webページに使用する画像や動画の選定や、掲載・配布資料の作成を行います。セミナーやプレゼンテーションを配信する場合は、配信用資料やトークスクリプトを作成し、定められた時間内に終われるようリハーサルを行う必要があります。また、チャットを用いる展示会の場合には、短い文面の中でどのようにユーザーの興味を引きつけるか、事前にスクリプトを作成しておきましょう。
  2. 招待メールの発信
    過去に交換した名刺・顧客リストを整理して、展示会の招待メールを送る等の事前準備は欠かせません。可能であれば、開催時期の1か月ほど前に初回の告知メールを発信し、1週間から2日前にリマインドメールを発信したいものです。
  3. 事前テスト
    参加者がブースに訪れた際、不具合が発生しないか前にテストを行うようにします。Webページのレイアウトは整っているか、動画の再生は滞りなく行えるか、チャットやビデオツールはきちんと動くか等、当日に備えて確認をして下さい。
  4. 参加者フォローの事前準備
    展示ブースを訪問していただいた方々へのフォロー方法(メール配信・資料送付等)を事前に決めておき、展示会終了後にただちにアクションを起こせるように準備をしておきましょう。

オンライン展示会出展後の顧客フォロー

オンライン展示会で得たリード(見込み客)との関係性を強化し、ホットリードへ育成することが、出展後の顧客フォローの目的です。以下のとおりに進行できれば、クロージングに至る可能性は高くなります。

パターンA 通常パターン

➀フォローメール → ②反応のあった顧客への電話(アポ) → ③オンラインもしくはリアルでのプレゼンテーション → ④顧客との折衝 → ⑤クロージング

パターンB ウェビナー開催パターン

①フォローメール(ウェビナー招待) → ②ウェビナー実施 → ③ウェビナー参加者へのメールもしくは電話でのアプローチ → ④フォロー面談・顧客との折衝 → ⑤クロージング

上記の流れを作るために、以下のポイントを押さえておきましょう。

  1. 情報提供のためのコンテンツの準備
    展示会出展後の顧客フォローの担当者と手法が決まりましたら、活用するコンテンツを用意しなければなりません。必要なコンテンツは、フォローメール等に掲載するWebコンテンツ(HP・LP)や添付する企画提案書、商品・サービス紹介動画等です。またフォローメール文案・メールマガジン原稿・電話のトークスクリプトの作成も忘れないようにしましょう。
  2. 顧客への情報提供(フォローメール・メールマガジン)
    関係性構築ができていないリードと、いきなり商品・サービスの商談ができる訳ではありません。展示会出展後、ただちにアクションを起こす必要はありますが、まずは「情報提供」を心がけましょう。フォローメール(お礼メール)を発信した後、メールマガジン・動画等、見込み客のためになる情報を、担当者を決めて定期的に情報発信することが肝要です。リードが商品・サービスの購入を検討し始めるタイミングは、こちらサイドではわかりませんから、定期的に情報を発信することで、リードが検討を開始した時に思い出していただくようにするのです。また継続的に情報を提供することで、ザイオンス効果(単純接触効果)も高まり、顧客との関係性が強化されます。
  3. ウェビナー(Webセミナー)の活用
    リードは、貴社ブースを訪問しているのですから、多少は貴社に興味を持っており、詳しい話を聞きたいと考えているかもしれません。ただ、ここぞとばかりに売り込みをされることまで望んでいる訳ではないのです。その点、ウェビナーは1対多で開催されるので、リードも過度な売り込みをされないと安心して話を聞けるはずです。

ウェビナー終了後は、参加者にメールや電話でアプローチを行い、フォロー面談に誘導するようにします。ただその際、アドバイスは抑え目にして、まず顧客に話していただくことに重点を置きましょう。あまり意気込んで大量のアドバイスをすると、リードがそれで満足してしまい、かえって受注に至らないことがあります。顧客のお困り事・現状を確認した上で問題点を明確にすることにより、先方がその後のアドバイス(さらに商品・サービス提供)を欲する状態に持っていくことが理想です。

オンライン展示会の準備は、リアル展示会と多少異なりますが、展示会出展後の顧客フォローの手法はほぼ同じと考えていただいて結構です。
企画提案書・メール文案・電話のトークスクリプト等を作成し(標準化)、社内で共有する、展示会から間をあけずにアプローチをする、アプローチは定期的・継続的に行う、顧客への有効情報の提供を行う等を心がけて、クロージングを目指して下さい。

コラムニストプロフィール

原田泰宏(はらだ・やすひろ)

中小企業診断士。大手旅行会社で、35年5か月、法人営業・商品企画・プロモーションを担当し、2018年より経営コンサルタントとして活動。中小企業を対象に、プロモーション全般・法人営業体制の構築・販路の開拓・社員教育等の支援を行っている。