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販路拡大のための、オンライン展示会活用法

公開日:2023/06/12

石井里幸(いしい・さとゆき)

通常、展示会といえば大きな催場に出展者が集い、そこで自社の製品やサービスを展示し、来場者が実際に目で見て、触れて、体験できるものをイメージされると思います。このようなリアル開催の展示会は、特に小規模のBtoB事業者にとって数少ない自社アピールの場となっています。年に一度の貴重な販促の場ととらえている事業者も多いことでしょう。

近年はコロナ禍のため、リアル開催の展示会が激減しました。その代替として急激に台頭してきたのが「オンライン展示会」です。オンライン展示会は「バーチャル展示会」とも呼ばれますが、ここではオンライン展示会という表記で進めます。

オンライン展示会とは、インターネット上で行われる展示会のことです。展示会の主催者が用意した特設サイト上に自社製品やサービスを紹介する仮想的なブースを設置し、来場者はオンライン上でそのブースを閲覧するという仕組みです。

本コラムでは、このオンライン展示会に参加するための準備事項や上手な活用方法をお伝えします。

オンライン展示会のメリットとデメリット

オンライン展示会を活用するには、そのメリットとデメリットの把握が不可欠です。初めにメリットについてみていきましょう。

メリット説明
低コストで出展できる物理的な会場や展示ブースを設営する必要がないため、参加費用が大幅に削減できます。また、交通費や宿泊費などの出張費も節約できます。
場所を選ばずいつでもアクセスできる場所を問わず誰でも参加できるため、世界中から多くの人々がアクセスしやすくなります。これにより、より多くの見込み顧客と接触でき、ビジネスチャンスを広げることが可能です。
柔軟なコミュニケーションが可能チャットやビデオ通話、ウェビナーなど、さまざまなコミュニケーションツールが利用できます。これにより、来場者や出展者同士が、リアルタイムで情報交換やディスカッションを行うことが可能になります。
データ解析がしやすく効果測定がしやすいインターネット上で行われるオンライン展示会は、参加者の行動データやアクセス履歴、ダウンロードされた資料など、さまざまなデータが収集されます。これらのデータを解析することで、効果的なマーケティングの戦略策定やターゲット顧客の特定などが容易になります。
また、リアルタイムでアクセス数や来場者の属性、時間帯別のアクセス状況など、さまざまな統計情報を供してくれるプラットフォーム(主催者)もあります。これにより、出展者は展示会開催中にも、効果測定や改善策の検討が可能になります。

次にデメリットについてもしっかりと把握しておきましょう。

デメリット説明
対面でのコミュニケーションができず臨場感が損なわれる来場者と直接顔を合わせてのコミュニケーションが取れないため、人間関係の構築や信頼関係の築きにくさがあるとされています。
また、製品の質感や臨場感が伝わりにくいこともデメリットです。五感のうち味覚、嗅覚、触覚がカギとなる商材には不向きといえるでしょう。
技術的なトラブルが起こりえるインターネット接続や機器の不具合など、技術的な問題が発生することにより、円滑なコミュニケーションや情報提供が妨げられることがあります。
セキュリティリスクがある来場者の個人情報や企業情報がインターネット上でやり取りされるため、セキュリティリスクの懸念があります。
また、情報漏洩やサイバー攻撃に備えた適切なセキュリティ対策が求められます。

このように、オンライン展示会にはリアル開催にはないメリットとデメリットがあります。近頃はリアルとオンライン両方を同時開催するハイブリッド型の開催も増えています。同時開催することで、リアルとオンラインの双方のメリットを享受することができます。

では次に、オンライン展示会に出展するうえでの準備事項について説明します。

オンライン展示会に出展するための準備

リアルの展示会もそうですが、オンライン展示会も準備すべきことは多岐にわたります。出展効果を最大化するためにも、特に以下についてはできるだけ準備をしたうえでのぞみましょう。

1. 出展目的と期待する成果を決める

展示会は会社の限られた資金を使って参加するのですから、出展目的と成果を決めたうえでのぞむべきです。ターゲットは誰か。どの商品をどのようにアピールするのか。その結果、どの程度の成果を求めるのか。これらを明確にしましょう。出展目的と成果を決めることで、展示物の選定、プレゼン資料の作成などの必要なタスクが洗い出されます。
なお、成果を判断する指標は、製品カタログのダウンロード数や顧客リスト獲得数、問い合わせ数など数値で設定することがポイントです。数値で設定することで、たとえ達成できなくとも、達成できなかった原因を分析することができるでしょう。

2. プラットフォーム(主催者)を選ぶ

目的を達成させるためにもっとも理想的なプラットフォームを選定します。オンライン展示会のプラットフォームは数多く存在しますので、出展費用、利用可能な機能、来場者の傾向などから適切なプラットフォームを選定しましょう。
展示会の種類については、JETRO(日本貿易振興機構)のウェブサイトから検索できるため、目的に合った展示会を探すとよいでしょう。

3. 社内体制の構築

展示会当日までに行うべき作業は膨大です。遅延や作業漏れがおこらないよう、社内体制を構築したうえでのぞむことです。メンバー選定を行い、必要な権限を与えたうえで、スケジュールとタスクリストの作成を行います。メンバーは日常的な作業を抱えたうえで展示会の準備も行うわけですから、相当な負荷がかかるものです。かといって片手間では準備不足に陥ることが明白です。
経営者が進行状況をしっかりと認識できるよう、社内プロジェクトとして進行することが理想的です。

4. デジタルコンテンツの制作

オンライン展示会はリアルに比べて臨場感が劣ります。それゆえに、展示物の魅力を少しでも効果的に伝えるためにもコンテンツの制作は欠かせません。デジタルコンテンツとは、たとえばウェブ記事、オンラインセミナー、画像や動画、PDF資料などです。
このコンテンツの出来こそが、展示会の成果に直結するといっても過言ではないでしょう。ターゲットとなる来場者を明確化し、彼らに刺さるコンテンツを制作しましょう。

また、オンライン展示会では、プレゼンテーションを行うことができるプラットフォームも存在します。出展者は、リアルタイムで自社製品やサービスについて詳しく説明したり、Q&Aセッションを行うことができるため、ある程度の臨場感が演出できます。そのためにはプレゼン資料やデモンストレーションの準備なども必要になるでしょう。

5. スタッフのトレーニング

リアル同様、オンライン展示会でも来場者とのコミュニケーションが重要です。出展者は、チャットやビデオ会議などのコミュニケーションツールを用意し、来場者との交流を積極的に行うことが必要になります。そのため、展示会開催の当日は応答できる人員の割り当てが必要になります。
出展当日にスムーズな対応ができるよう、スタッフを十分にトレーニングしておく必要があります。ビデオ会議、チャットの応対などの準備をしっかりと行っておきましょう。

6. 事前告知

展示会当日に人が集まるように、できるだけ早い段階で宣伝活動を開始しましょう。たとえば、自社サイトの最も目立つ位置に「〇月〇日、展示会に出展します!」といった案内を掲載することです。また既存顧客にDMやEメールを出すのも有効でしょう。
他にもSNSやメールマガジン、ウェブ広告などさまざまな手段を使って広く告知をしておきましょう。

以上が、オンライン展示会に出展する際に、特にしっかりと準備しておきたいことです。事前にしっかりと準備を行うことで多くの集客が実現し、自社の製品やサービスの認知度向上や顧客獲得につなげることができるでしょう。
なお、ここでお伝えした以外にも、業界特有の準備事項がある可能性もあります。本コラムでは出展事業者の業種を考慮していないため、この点はご留意願います。

出展後のフォローアップ

リアル開催も同様ですが、オンライン展示会も「出展して終わり」にしないことが重要です。つまり、その後のフォローアップをしっかりと行う必要があるということです。
なぜなら多くの場合、展示会の出展目的は「見込み客を集める」ことだからです。展示会の期間中に商談が成立することは極めて少ないのです。したがって、出展後のフォローアップの準備と体制づくりに時間をかけることが重要になります。
集めた見込み客をフォローアップし、最終的に成約につなげるのです。フォローアップとは具体的にはテレアポやメルマガの配信などの方法があります。

展示会を集客と販路拡大のためのツールとして位置づけ、フォローアップこそが「集金」につながる最も重要な作業であると考えてください。

また、先述の通りオンライン展示会の大きなメリットは「データ分析がしやすい」ことです。プラットフォーム側から提供されるデータを徹底的に分析し、効率的なフォローアップにつなげることができれば、オンライン展示会のメリットを最大限に活かすことができるでしょう。

制作したコンテンツをウェブマーケティングにも活用する

準備事項でも説明した通り、オンライン展示会を成功させるうえで最も重要なものがデジタルコンテンツです。
リアル展示会では紙のパンフレット、実演、体験、モニター動画などがコンテンツに相当しますが、オンライン展示会で使うデジタルコンテンツには次のようなものがあります。

種類説明
記事テキストや画像を中心とした情報。内容は商品・サービスに関するものから、企業文化、こだわり事項など、さまざまな切り口で自社の特徴をアピールする。
諸説あるが、2000文字以上あるとSEO的に有利とされる。
動画ウェビナーや収録動画によって、自社の商品・サービスやメッセージなどを紹介する映像コンテンツ。
ホワイトペーパー自社が持つノウハウや、顧客が関心を持ちそうな情報を掲載した、電子的な資料(PDF形式が多い)
自社サイトに配置し、顧客の個人情報と引き換えにダウンロード可能とするものが多い。
メールマガジン見込み客に対して定期的に配信する、Eメールによる情報。文字情報が中心。
SNSユーザー同士で交流を楽しむためのツール。TwitterやInstagramなど。

これ以外にもデジタルコンテンツはたくさんありますので、全てを使うことは非現実的です。それぞれの特性を知ったうえで、自社にとって効果的なものを選定しましょう。

実演や体験など、リアル展示会ならではのコンテンツは、効果が展示会期間中に限定されるものがほとんどです。一方で、上記で示したデジタルコンテンツの多くは「効果が持続」することが大きなメリットであるといえるでしょう。
どういうことかというと、デジタルコンテンツは展示会期間が終わっても次のような効果を発揮するのです。

  • ウェブ記事や動画を自社サイトに配置することで、SEOが有利になる。
  • ホワイトペーパーを自社サイトに配置することで、ダウンロードと引き換えに顧客情報を得ることができる。

このように、制作したコンテンツを自社サイトに掲載するだけで24時間365日にわたり、集客につながる効果を発揮してくれるのです。このように効果が蓄積できるタイプのコンテンツを「ストック型のコンテンツ」と呼びます。オンライン展示会で使用したコンテンツが、その後のウェブマーケティング(ウェブを使った集客)につなげけられることは、限られた社内リソースの有効活用ともいえるでしょう。

上記でご紹介したデジタルコンテンツのうち、特にストック型になりやすいものは記事、動画、ホワイトペーパーなどです。
一方でメールマガジンやSNSはフレッシュな情報を届けるには向いていますが、過去情報を参照しにくいことから、時の経過とともに効果が薄くなっていきます。このような、効果が蓄積しにくいコンテンツをフロー型のコンテンツと呼びます。

このようにデジタルコンテンツにもそれぞれ特性があるので、うまく使い分けましょう。とはいえ、オンライン展示会で成果を出し、ウェブマーケティングにつなげるには、ストック型のコンテンツを優先して制作していくとよいでしょう。

以上、オンライン展示会の参加準備とデジタルコンテンツの重要性についてお伝えしました。

オンライン展示会(あるいはハイブリッド型の展示会)を足掛かりに自社サイトのコンテンツを充実させ、サイト流入数を高め、販路拡大を実現させましょう。

コラムニストプロフィール

石井里幸(いしい・さとゆき)

中小企業診断士、ITコーディネータ。
中小企業向けに「ITの便利さを実感してもらうための活動」を行っている。
ITツールの導入からWebサイト運用まで、中小企業のIT周りを全面的に支援する。