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クラウドファンディングとは?仕組みや種類、進め方から注意点まで解説

公開日:2022/03/22

東京都中小企業振興公社コラム編集部

新しい資金調達の方法として、またテストマーケティングの場として、クラウドファンディングに注目する企業が増えています。
しかし、クラウドファンディングには複数の種類があり、仕組みを正しく理解した上で活用することが重要です。クラウドファンディングが成立したにもかかわらず、プロジェクトが途中で頓挫するような事態になると、社会的信用を失うことにもなりかねません。
そこで本稿では、クラウドファンディングの仕組みや種類、進め方などをご紹介します。クラウドファンディングの基本を正しく理解し、活用を検討してみてください。

クラウドファンディングとは

クラウドファンディングとは、インターネット上で不特定多数の人々から購入・寄付・融資・株式投資といった形で資金を集める方法です。「Crowd(群衆)」と「Funding(資金調達)」を組み合わせた造語で、略して「クラファン」と呼ばれることもあります。
まずは、クラウドファンディングの仕組みと、市場規模を確認しましょう。

クラウドファンディングの仕組み

クラウドファンディングの仕組みを理解するには、以下の4つの用語を押さえておきましょう。

  • 起案者:資金を集めたい人
  • 支援者:資金を提供する人
  • プロジェクト:実現したいアイデアやサービス
  • リターン:資金提供に対するお返し

まず、起案者がクラウドファンディングのサイトにプロジェクトを提示し、支援者を募ります。
支援者は数あるプロジェクトの中から自分が支援したいものを選び、サイトを通じて起案者に資金を提供します。起案者は支援者に対し、出資額に応じた     リターンを返します。ここまでが、クラウドファンディングの基本的な仕組みです。

クラウドファンディングの市場規模

2021年に発表された一般社団法人 日本クラウドファンディング協会の報告書によると、クラウドファンディングの市場規模は、以下のようになっています。

<融資型クラウドファンディング>
1,316億円(2017年) → 1,125億円(2020年)

<株式投資型クラウドファンディング>
3.7億円(2017年) → 9.2億円(2020年)

<購入型(寄付型含む)クラウドファンディング>
77億円(2017年) → 501億円(2020年)

融資型クラウドファンディングは、市場規模が縮小傾向です。一方、株式投資型は2017年と比較すると約2.5倍、寄付型を含む購入型は約6.5倍と、大きく伸長していることがわかります。

中小企業がクラウドファンディングを行うメリッ ト

中小企業にとって、クラウドファンディングは資金調達以外に4つのメリットがあります。

  • テストマーケティングに活用できる
  • 企業の実績として挙げられる
  • 販路拡大につながる可能性がある
  • 関心が高いユーザー情報を獲得できる

それぞれ解説します。

テストマーケティングに活用できる

クラウドファンディングは、テストマーケティングに活用できるのもメリットです。
新商品やサービスを開発しても、実際に売り出すまで市場の反応は未知数です。そのためBtoBでは、まず展示会を行うのが一般的でした。しかし、展示会は出展コストがかかる上に、現在はコロナ禍の影響もあり開催自体が難しくなっています。
その点、クラウドファンディングは、プロジェクトに対する市場の反応を低リスクで確認することが可能です。その利点を活かし、BtoB企業においても、商品開発時のテストマーケティングでクラウドファンディングを活用するケースが増えてきました。また、脱下請けを目指し、自社商品を開発・販売する際のテストマーケティングでの活用もみられます。
例えば新商品の価格設定に際して市場調査を外部に依頼すると、100万円以上の費用がかかることもあります。しかしクラウドファンディングを活用すれば、大きな費用を負担することなく、市場の反応を調べることが可能です。

企業の実績として挙げられる

クラウドファンディングが成功し、プロジェクトが実現した場合には、企業の実績として提示できることもメリットといえます。クラウドファンディングが成功すれば、市場で支持されたと認知され、流通販路を決定するときに、相手企業に実績として示せるようになるのです。
また、金融機関から融資を受けたいときの実績としても有効です。企業が金融機関から融資を受けることは簡単ではありません。しかし近年、クラウドファンディングの調達額にあわせて融資額を決定する金融機関が増えているのです。その背景には、大手クラウドファウンディングサービスが、全国の金融機関との連携や提携を進めていることが挙げられます。クラウドファウンディングの実績が、ビジネスの信頼度を裏付けするものとなっているのです。

販路拡大につながる可能性がある

流通業者のなかには、消費者のニーズを確かめトレンドを先取りするために、クラウドファンディングを観察しているところも少なくありません。
クラウドファンディングに成功したことで、大手流通から売り場をオファーされた事例もあります。販路拡大につながる可能性があるのも、クラウドファンディングのメリットです。

関心の高いユーザー情報を獲得できる

クラウドファンディングでは、支援者は資金提供する際に、氏名や年齢、メールアドレスなどの個人情報を登録します。自社の製品やサービスに関心の高いユーザーの情報を獲得できることも、クラウドファンディングのメリットの1つです。
ユーザーとクラウドファンディング終了後も接点を持ち続けることで、リピーターになってもらえる可能性が高いでしょう。

クラウドファンディングの種類

クラウドファンディングと一口に言っても、さまざまな種類があります。クラウドファンディングを実施するときには、特徴を踏まえた上で適したタイプを選ぶことが大切です。
クラウドファンディングの代表的な種類は以下の4つです。

  • 融資型
  • 株式投資型
  • 購入型
  • 寄付型

それぞれの特徴をご説明します。

融資型

融資型は、クラウドファンディングの運営会社が資産運用したい個人投資家から資金を集め、お金を借りたい企業に融資するタイプです。融資を受けた企業は、毎月返済金と利息を支払う、または満期で一括返済します。
融資型は「ソーシャルレンディング」とも呼ばれ、支援者はリターンとして分配・償還を受け取る仕組みです。

株式投資型

株式投資型は、株式会社が起案者となって行われるタイプです。支援者は、リターンとして資金を提供した企業の株式を受け取ります。融資型と同じく、資産運用として活用されることが多いのが特徴です。

購入型

購入型は現在、回数的に最も多く行われているクラウドファンディングです。支援者は、リターンとして支援金額に応じた商品やサービスを受け取ります。支援者側からすると商品やサービスを購入するのと変わらないことから、購入型と呼ばれています。
購入型は、支払方法に応じて以下の2種類に分かれるのが特徴です。

  • All or Nothing型
    設定した期間内に起案者の目標金額が集まらなければ、支援金が決済されないタイプです。例えば「期間を30日間、目標金額を200万円」と設定した場合、期間内に200万円が集まらなければ、起案者は資金を受け取れません。
  • All in型
    目標額の達成を問わず、集まった支援金を受け取れるタイプです。確実に資金を調達できますが、目標額に達成していなくても必ずプロジェクトを実行したうえで、支援者へリターンを届けなければなりません。

寄付型

寄付型は、集まった資金が起案者に全額寄付されるタイプです。寄付金のため、支援者には活動報告やメッセージなど以外の、対価性のあるリターンはありません。自治体やNPO法人などが、地域貢献や社会問題の解決に向けた活動資金を得るために活用するケースが多いです。

クラウドファンディングの進め方

前述したように、さまざまなタイプの中で最も多く利用されているのが、購入型クラウドファンディングです。
ここからは、購入型クラウドファンディングを行う際の一般的な進め方をご紹介します。

STEP①プロジェクトの目標と目標額を設定する

まずは、ビジネスやプロジェクトの明確な目標を設定します。企業として何を成し遂げたいのか、それは誰にとってどのような役に立つのか、いつまでにどれだけの金額が必要なのかを検討しましょう。
クラウドファンディングでは、支援者はリターンを期待すると同時に、そのプロジェクトの実現に対して社会的・個人的な意義を見出し、支援するケースが多く見られます。そのため、明確な目標を提示できなければ、支援者を集めるのは難しくなります。
また、目標設定の時点で、支援者になってくれそうな方々へのヒアリングや、情報を提供していく必要もあるでしょう。

STEP②利用するサービスを選ぶ

目標や目標額が決まったら、次は利用するサービスを選びます。クラウドファンディングを行えるサービスは多数あり、それぞれ得意とする種類や分野、手数料などに違いがあります。
クラウドファンディングを成功させるには、プロジェクトにマッチしたサービス選びが重要です。予定しているプロジェクトと似た事例を調べ、資金調達の様子、盛り上がり具合などを観察すると、サイトの特徴や自身のプロジェクトに合っているか判断しやすくなります。

STEP③プロジェクトを登録する

利用を決めたサービスにプロジェクトを登録し、タイトルや目標金額、プロジェクトの大まかな進行予定、リターンがある場合はその内容などを設定します。画像やPR動画があると、内容が伝わりやすくなります。
多くの支援者を集めるためには、どのようなプロジェクトを実現したいのか、熱意が伝わるタイトルや文章を考えることも大切です。

STEP④プロジェクトの審査を受ける

プロジェクトを開始するには、運営側の審査を受ける必要があります。プロジェクト実現の見通しによっては、却下される場合も考えられます。また、当然ですが、社会的に問題になると考えられるもの、犯罪につながる恐れがあるものは審査に通りません。

STEP⑤プロジェクトを開始する

審査を通過すると、プロジェクトが一般公開となり、クラウドファンディングが開始されます。プロジェクト公開後は、できるだけ多くの人に閲覧してもらう努力が必要です。SNSで発信して協力を呼びかけるなど、積極的にアピールしましょう。

STEP⑥閲覧者や支援者に活動を報告する

プロジェクトの経過を、閲覧者や支援者に報告することも大切です。
クラウドファンディングサイト内のプロジェクトページの情報はこまめに更新し、「目標達成まであと〇〇円です!」「××人の皆様にご支援いただいています!」など、途中経過をお知らせしましょう。
プロジェクトの盛り上がりは、支援するか迷っている人の背中を押すと同時に、すでに支援した人たちの連帯感を生む効果があります。

STEP⑦プロジェクト終了・支援者へお礼をする

プロジェクトが終了したら、集まった支援金は、手数料を差し引かれた上で口座に入金されます。All or Nothing型で目標金額に達成しなかった場合、手数料はかからず、支援金は支援者に全額返金されるのが一般的です。
期間が終了したら、プロジェクトの成立・不成立にかかわらず、支援者に対してお礼の文章を掲載したり、メールを送ったりして感謝の気持ちを伝えましょう。リターンとして特典を提示していた場合は、開発・製造のスケジュールや発送の見込み、受け取り方法などをお知らせしたりすることも必要です。
プロジェクト終了後も、事業がどのように進行しているのかをサイトやブログで公開すると、支援金が適正に使われていることがわかり、支援者に喜ばれます。ただ資金を集めて終わりではなく、きちんと成り行きを見届けてもらうようにしておくと、目標達成後も温かい支援を得られます。
支援者と継続的に接点を持ちファン化させることができれば、リピート購入や購入者の紹介も期待できるでしょう。

クラウドファンディングの注意点

クラウドファンディングは「成し遂げたい目標はあるのに資金がない」といったときに救世主ともなり得ますが、以下のような注意点も挙げられます。

  • 資金調達の目処を立てにくい
  • アイデアを盗用される恐れがある
  • 企画が頓挫すると社会的信用を失う可能性がある

順番に解説します。

資金調達の目処を立てにくい

クラウドファンディングは、資金調達の目処を立てにくい点に注意が必要です。あてにしていると、目標額に達しなかった場合に資金計画が大きく狂うことにもなりかねません。
「事業のスタートアップの資金として〇月までに××万円必要」という場合は、クラウドファンディングですべての資金を調達しようとするのはリスキーです。
クラウドファンディングは、あくまで資金の一部を調達する手段として、あるいは時間に余裕があるプロジェクトの資金集めとして利用するのが適しています。

アイデアを盗用される恐れがある

クラウドファンディングは、これから実現したいと考えている商品やサービスを公開し、賛同する人から資金を集めるシステムです。そのため、そのアイデアが他社の目に留まり、盗用されてしまう可能性があります。他社に資金力があれば、資金集めをしている間に先に実現されてしまう恐れもあるでしょう。
盗用を防ぐためには、クラウドファンディングを開始する前に特許を出願しておくなど、自衛することが大切です。

企画が頓挫すると社会的信用を失う可能性がある

クラウドファンディングで資金を集めて企画を進めたとしても、必ずしも成功するとは限りません。なんらかの問題が発生して企画が頓挫した場合、支援者から「せっかく支援したのに」と批判を受けたり、社会的信用を失ったりする可能性があります。

クラウドファンディングは仕組みを理解し適切に運用しよう

資金調達は企業にとって大きな課題です。クラウドファンディングを視野に入れることで、中小企業でも1,000万円を超えるような多額の資金を調達し、事業目標を達成できる可能性が広がります。また、コストを抑えてテストマーケティングに活用できるのも、中小企業にはメリットです。
クラウドファンディングには融資型や購入型、寄付型など、いろいろな種類があります。クラウドファンディングを成功させるには、それぞれの仕組みを理解し、事業に合ったタイプを選ぶことが大切です。
本稿を参考に、クラウドファンディングに挑戦してみてください。