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自社サイト、放置していませんか(3)

公開日:2022/06/30

石井里幸(いしい・さとゆき)

前回は自社サイトを放置してしまう理由と、その対策方法について触れました。具体的な対策方法としては、ウェブマーケティングを推進するための体制を構築することが重要となります。今回はそのための考え方やとり取り組みについてお伝えします。

ウェブマーケティングによる「積極的なサイト運用」

自社サイトは「優秀な営業員」

自社サイトを放置してしまう理由が「費用対効果が見込めそうにないため」であるならば、自社サイトを「優秀な営業員」と考えてみてはいかがでしょうか。

もし本当に優秀な営業員を雇うとなると、月に何十万円もの人件費がかかります。しかしサイトであれば低コストで24時間、365日働いてくれますし、病気もせず不平不満を言ったりもしません。中小企業にとって最強のコストパフォーマンスを実現するツール、それが自社サイトであると考えるところから始めましょう。

前回、ウェブマーケティングの例として、

  • サイトに記事を投稿する
  • SNSやメルマガからの流入を増やす
  • ウェブ広告を出稿する

などがあると伝えましたが、数ある施策の中で自社サイトが優秀な営業員になりえる施策はどれかを考えます。
上記のうち、営業員としての機能を果たす施策は「サイトに記事を投稿する」が該当します。すなわち、優秀な営業員がとるような機能を、サイトに持たせるという考え方です。
具体的な方法としては顧客の悩みに答えるコンテンツ(記事等)を自社サイトに掲載していくなどが考えられます。

人はGoogleなどの検索エンジンを使うとき、何らかの悩みを解決したいと考えています。たとえば、「○○語 翻訳 短納期」というキーワードで検索する人は、明らかに短納期での〇〇語翻訳を求めています。このように潜在顧客の悩み(ニーズ)を想像し、先回りしてそれにこたえるコンテンツを自社サイトに掲載します。たとえば御社が翻訳会社であれば、「当社の納期が早い理由」といった記事を掲載することが効果的でしょう。Googleが御社のサイトのコンテンツを評価し、検索者にできるだけ有益な情報を上位表示しようとするためです。

おそらく本物の営業員も、顧客の悩みを聞き、安心させるような回答をすることでしょう。その機能を自社サイトにも持たせるのです。御社の製品やサービスの導入事例なども積極的に掲載し、導入メリットをうまく伝えることで成約につなげていきます。

なお、コンテンツはテキストだけでなく、画像や動画も効果的です。

ウェブマーケティング推進には経営者の関与が必須

私のお客様で、自社サイトに掲載する記事を担当している人がおり、次の悩みを聞かせてくれました。

「当社の技術力をアピールするための記事を載せたいと思っています。当社で最も技術を持っている社員に、記事の執筆を手伝ってほしいとお願いしました。しかし忙しいとの理由で協力してくれなくて困っています。」

技術的なコラムを書くとなると、その道に詳しい人が書くか、取材に応じるなど、その人の時間を使うことになります。しかし、皆さん自分の仕事で忙しく、関わりたくないと考える方も多いもの。このように「時間がない」とか「聞いてない」という理由で協力してくれないことが多いのです。

そこで、私は担当者から聞いた内容を経営者に伝え、経営者から直接、技術を持った社員に協力を依頼するよう促しました。その際、なぜそのような記事を書く経緯に至ったのかについても説明していただきました。結果、その社員は取材に応じてくれ、専門的なコラムを載せることができました。

経営者から全社員に対し「ウェブサイトは自社にとって重要なもの。今後フル活用していく。だから協力してほしい」と事前に伝えておけば、もう少しスムーズに進んだと思われる事例です。

このように、多くの中小企業において、部門をまたがって協力を依頼することができるのは経営者のみです。したがって、自社サイトをフル活用するには経営者の関与が欠かせません。

実際、私の支援経験から、自社サイトのリニューアルなどは経営者が主体的に関わった企業ほど成果を出しています。

経営者は現場任せにしていませんか?全く関与していないといったことはありませんか?
ウェブマーケティングを推進するためには、従業員の理解と協力体制の構築が必要となります。そのためには経営者がしっかりと関与しておかねばなりません。

そして、自社サイトを“優秀な営業員化“させるには、自社が有する叡智をサイトに集結させることです。各部門のみに限定されていた情報を集め、自社サイトに掲載し”優秀な営業員が“伝える。このような連携が実現することで自社サイトのコンテンツは充実化し、SEOが高まり、アクセス数が伸び、費用対効果が高まっていくでしょう。
当然ながら、ウェブマーケティングにはそれなりの投資と労力が伴います。しかし、それによって自社サイトが「優秀な営業員」に化けてくれたら、ウェブサイトほどコストパフォーマンスに優れたツールは他にないでしょう。
ぜひ自社サイトを復活させ、積極的なサイト運営を実現していただければと思います。

コラムニストプロフィール

石井 里幸(いしい・さとゆき)

中小企業診断士、ITコーディネータ。
中小企業向けに「ITの便利さを実感してもらうための活動」を行っている。
ITツールの導入からWebサイト運用まで、中小企業のIT周りを全面的に支援する。