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オンライン販路開拓の基本的な考え方 (2)

公開日:2022/06/16

藤原哲史(ふじわら・さとし)

前回のコラムでは、BtoB企業がオンラインを活用した販路開拓、いわゆるデジタルマーケティングを推進していくにあたって、①リードジェネレーション(自社の製品・サービスに興味を持つ見込み顧客の情報を獲得すること)だけでなく、②リードナーチャリング(獲得した見込み顧客の購買意欲を高め、将来的な商談化につなげていくこと)という2つの手順が肝心であるとお伝えし、①リードジェネレーションを「集客面」として解説しました。今回は、②リードナーチャリングに関して「商談獲得面」として解説していきます。

②商談獲得面のポイント

展示会やセミナーなどで接点のできた見込み客に対して一斉に電話をかけ、やっと訪問できたとしても、「まさに購買検討のタイミングだった」というケースはあまり多くないというのが実情かと思いますが、Webサイトを通じて獲得した見込み顧客も状況は同様です。そこで、購買プロセスにおける検討期間が長いBtoB製品・サービスのデジタルマーケティングの推進においては、「リードナーチャリング」(獲得した見込み顧客の購買意欲を高め、将来的な商談化につなげていくこと)が重要になってきます。購買意欲を高め、商談化につなげていくためには、Webサイトを通じた情報交流が必要であり、接点のできた見込み客をWebサイトへ流入させる施策がメルマガ等の定期的なメール配信です。ただし、見込み顧客がWebサイトを再訪してくれたとしても以前と同じ情報しか掲載されていないと、購買意欲を高めるという目的を達成できず、逆に興味も薄れていってしまいます。そこで自社のWebサイトを継続的に再訪してもらうためには、新情報の提供が必要となり、コンテンツ(記事、動画等)やダウンロード資料を継続的に拡充することが重要になります。

リアルの営業活動において「短期的には見込みなし」と判断した場合でも、その後もフォロー営業を実施し、中期的に案件獲得を目指すのが理想かもしれません。しかし営業リソースの面から対応は難しいことが多いと思われます。この問題は、見込み顧客へのメール配信による定期的な流入促進と、Webサイトのコンテンツ拡充による継続的な情報提供により解決できる可能性があります。ここで活用できるのが、メール配信システムやMAツールです。利用するシステム/ツールにより機能は異なりますが、配信リストの管理やメール作成・配信の効率化だけでなく、メール配信後の顧客の行動を可視化することができます。具体的には、メールの効果測定(開封、クリック)、Webサイトへ流入後の行動(閲覧ページ、滞在時間、訪問回数…)等のデータを収集・蓄積でき、「メールのリンクを毎回クリックしてWebサイトへ流入してくれる顧客」や「これまで反応がなかったのに急にWebサイトを訪問するようになった顧客」、あるいは「特定の製品・サービス案内のメールからWebサイトを訪問してくれる顧客」などが分かるようになります。こういったデータを活用することで、「購買検討のタイミング」に入った見込み客を見定めて、商談獲得に向けたアプローチを実施することができます。

これからオンライン販路開拓に取り組む方へ

ここまで、オンライン販路開拓の基本となる考え方と取組内容について、①リードジェネレーション(自社の製品・サービスに興味を持つ見込み顧客の情報を獲得すること):「集客面」と、②リードナーチャリング(獲得した見込み顧客の購買意欲を高め、将来的な商談化につなげていくこと):「商談獲得面」の両方が大事であると述べてきました。この2つの観点から、自社では「何から」取り組めばいいのかについて考えていただくことをおすすめします。例えば、自社のWebサイトではまだ製品カタログのような情報提供しか行っていないようであれば、見込み顧客の悩み・欲求を解決するコンテンツ(導入事例や、顧客の声等)を掲載したり、それらを継続的に拡充できるようにしたりすることがまずは必要になってきます。可能であればコンテンツの拡充による情報発信と同時に、Webサイトには掲載していない情報をダウンロード資料として用意し、ダウンロードする際に見込み客の情報を収集できる取組みもあわせて行っていただきたいです。このようにWebサイト側の準備が整ったうえで、Web広告を活用したり、顧客リストにメールを配信したりして、流入促進を図ると成果につながりやすいと考えます。

コラムニストプロフィール

藤原 哲史(ふじわら・さとし)

中小企業診断士、ITコーディネータ、上級ウェブ解析士。出版社、広告代理店・制作会社にて企画・編集・制作業務に携わった後、2019年に株式会社クレビスを設立。現在、企業のマーケティングコミュニケーション活動(Webマーケティング、ブランディング、広告宣伝、販売促進、広報/PR)の戦略立案・実行・改善の支援に従事している。