事業者にとって、商品やサービスの認知を高め集客することは常に悩ましい経営課題です。本コラムをご覧になっている方は、おそらくデジタルマーケティングに関心がある、あるいは今まさに取り組んでいらっしゃる事業者であると想定します。
デジタルマーケティングといっても、その中身は多岐にわたります。たとえばSEO、SNS運用、動画、メルマガ、Web広告などがありますが、その手法は年々増え、また変化し続けています。
これまでに何らかの手法に取り組んでみたものの、思うように成果が実感できていない事業者は多いと思います。というのも、一般的にデジタルマーケティングというのは効果が表れるまでにとても時間がかかるものだからです。とはいえ、デジタルマーケティングのすべての手法が時間を要する、というわけではありません。比較的短期間で成果が得られる手法もあれば、年単位の取り組みを要する手法まで様々あります。
以下の表で、デジタルマーケティングでよく使われる手法と、成果が期待できるまでの早さを示します。
★ :長期的に成果が期待できる(半年以上)
★★ :中期的に成果が期待できる(数か月~半年)
★★★:短期的に成果が期待できる(1か月~数か月)
<留意事項>
※成果が出るまでの早さは手法だけでなく、業界、競合状況、予算、施策の質など、様々な要因によって左右されます。
※複数の施策を組み合わせることで、早く成果を出すことも可能です。
上記のうち、SNS運用やコンテンツマーケティングは比較的コストをかけずに取り組むことができるため、デジタルマーケティングの一歩目として選ぶ事業者は多いでしょう。しかしこれらは効果が表れるまで、半年から年単位の取り組みを要することが一般的です。
一方、リスティング広告やSNS広告(総称してWeb広告といいます)などは、比較的早めの成果が期待できます。広告なので基本的には有料となりますが、早く成果を出したい事業者にとっては検討するべき手法といえるでしょう。
ビジネスでは、スピードは大きな武器です。したがってWeb広告を上手に活用することは、ビジネスを成功させるうえで重要な要素です。
では、Web広告を活用するにはどうしたらよいか?ここからは、Web広告について解説をしたいと思います。
第1章:Web広告の種類と始め方
Web広告は、インターネット上で行われる広告の総称です。検索エンジンやWebサイト、SNSなど様々な場所に表示され、自社の商品やサービスをユーザーに認知させ、購買行動を促すことを目的としています。そして、その種類や仕組みは多岐にわたります。まずはWeb広告の種類をおさえておきましょう。以下、主要なものをピックアップします。
「Web広告に興味はあるが、手法がありすぎてわからない。何から始めたらよいのだろう…」
このように思われた方は、まずはリスティング広告(検索広告)から始めみてはいかがでしょうか。
リスティング広告とは、検索エンジンの検索結果に広告を表示させる手法です。ユーザーは何らかの悩みや解決したいことがあって検索エンジンを使い、キーワードを入れて検索します。その検索結果画面に広告を表示させることができるため、ユーザーニーズとマッチしやすい(成果を獲得しやすい)のです。
そのため数ある広告の中でも、成果が実感するまでの時間が早いといわれています。
ここからは、リスティング広告の媒体(プラットフォーム)としてもっともよく知られているGoogle広告を例に、具体的な広告出稿の手順を説明します。
- Google広告アカウントの作成
- Google広告の公式サイトにアクセスし、新しいアカウントを作成します。支払い用のクレジットカードの登録が必要なので用意しましょう。
- 広告の目標(コンバージョンアクション)を設定します。
- キャンペーンの作成
- アカウント作成後、キャンペーンを作成します。キャンペーンは、広告グループや広告をまとめるための単位です。
- 広告グループの設定
- キャンペーン内に、広告グループを作成します。広告グループは、共通のキーワードや広告文を持つ広告をまとめるための単位です。
- キーワードの選定
- 広告グループごとに、関連性の高いキーワードを設定します。キーワードは、ユーザーが検索する可能性が高い言葉を選びましょう。例えば、あなたの商品が「スニーカー」であれば、「おしゃれ スニーカー」「安い スニーカー」などが考えられます。
- 広告文の作成
- 各広告グループに、魅力的な広告文を作成します。見出し(タイトル)も複数個、準備しておきます。
- 予算の設定
- 1日の広告費上限を設定します。予算は自由に設定できますが、まずは少額から始めて、徐々に調整していくことをおすすめします。
- 配信地域・オーディエンスの設定
- 商材にもよりますが、特定の地域や年齢層、性別なども絞って広告を表示することで、より効果的にターゲットにアプローチできます。
- 広告の審査
- 作成した広告は、すぐにGoogleの審査にかけられます。また、Googleの広告ポリシーに違反していないかも確認されます。
- ポリシー違反と判断された場合、アカウント停止になる可能性がありますので、よく確認しておきましょう。
- 広告の配信開始
- 審査に合格すると、広告が配信開始されます。
以上、簡単な説明ではありますが、上記のステップを行うことでリスティング広告の出稿が可能になります。細かな設定が可能であるため、適切に設定できれば大きな成果が得られる一方、初心者にとってこれらの設定は難易度の高いものといえるでしょう。
ただ、最初からパーフェクトな設定ができることはありません。実際に広告を配信しつつ、少しずつ改善していくことが求められます。
Google広告をはじめとする多くのリスティング広告プラットフォームでは機械学習が導入されており、広告の配信や入札単価の調整はAIが自動で行います。広告運用を継続することで十分なデータが収集され、どんどん機械学習の精度が向上します。これにより、より適切なユーザーに広告が表示されるようになり、成果に結びつくというわけです。
したがって、機械学習がすすみ十分なデータが得られるまでにはそれなりの期間が必要になります。一般的には、機械学習が効果を発揮するためには、1~3か月程度の学習期間が必要とされています。この間、できるだけ広告運用を止めずに学習を継続する必要があります。当然ながら広告への課金を止めると学習がストップし、これまでの学習データが水の泡となります。
広告運用は、ひと昔前までは広告代理店に外注することが一般的でした。しかし近年は機械学習の発達により、内部運用でも比較的成果を出しやすくなってきているといわれています。外注費用は高額であり、またせっかく得られた広告運用のノウハウを社内に蓄積するためにも、内部運用が望ましいといえます。
ちなみに広告代理店に外注する場合、委託料の相場は広告予算の20%程度といわれています。たとえば広告予算が5万円なら、代理店に支払う委託料は1万円ということになります。しかし、たった1万円で請け負ってくれる代理店などほとんどいないのが実態です。少なくとも広告予算20万円から(委託料4万円~)でないと受けてもらえないことが多いでしょう。
内部運用するといっても、そもそも広告運用の初期設定が正しく行われていなければ思うような成果は得られません。ここを間違ってしまうと数か月たっても成果が得られず、予算を食いつぶしてしまうでしょう。
そこで検討していただきたいのが「広告運用の初期段階だけプロに外注する」という案です。広告運用のプロに外注するメリットは次の通りです。
- 豊富な経験と知識
様々な業界や商品・サービスの広告運用経験があり、豊富な知識とノウハウを持っています。 - 効率的な運用
広告運用の初期段階ではコンバージョン設定、入札戦略、広告文の作成やキーワードの選定など、細かい作業が求められます。プロは、これらの作業を効率的に行うことができます。 - データ分析と改善
運用データを分析し、広告効果を最大化するための改善策を提案してくれます。 - 最新情報のキャッチアップ
広告プラットフォームのアップデートや、新しい広告形式の登場など最新情報に精通しています。
第2章:Web広告運用を外注する際のポイント
広告代理店に依頼するには広告予算20万円以上は必要でしょう、と言いました。
「そんな予算はない!」
と思われた方がほとんどだと思います。そこで、低予算でも請けてもらえるプロの運用者を探す方法をご紹介します。
それは「ココナラ」や「クラウドワークス」といったスキルのマッチングサービスを利用して探すというものです。「リスティング広告」で検索すると多くの人がヒットしますが、いくつか注意点をお伝えします。
- 実績と評価は十分にあるか
どのマッチングサービスにも必ず評価制度があります。運用を依頼するにあたり、十分な実績と評価があることを確認します。Google広告の運用であれば、認定資格を保有しているかどうかも選定基準になりえます。 - 料金体系
時間単価も要チェック事項ですが、最低運用料金を設定しているプロも多くいますので、忘れずに確認しましょう。 - 運用の丁寧さとコミュニケーションの取りやすさ
設定内容や運用方法の見直しを定期的に行ってくれるか、また得られたノウハウを還元してくれるのかを確認しましょう。重要なことは、最初の数か月間のみプロに設定と運用をしてもらい、そのノウハウを内部に引き継ぐことです。内部運用が実現すれば外注費の節約につながります。
広告運用の初期段階では、プロに依頼することで比較的早期に広告運用の効果が期待できるでしょう。その際、運用を丸投げするのではなく、内部から広告運用の担当者を割り当てることがポイントです。この担当者とプロが二人三脚で運用し、担当者はプロから必要なノウハウを引き継いでいくのです。
小規模事業者にとってWeb広告の運用はハードルが高いものですが、本コラムで示した方法により、低予算での運用が期待できることでしょう。ぜひ挑戦してみてください。