• トップ
  • なぜプレスリリースが取材依頼につながらないのか?~マスコミのハートをつかむポイント~

なぜプレスリリースが取材依頼につながらないのか?~マスコミのハートをつかむポイント~

公開日:2024/10/28

千種伸彰(ちぐさ・のぶあき)

プレスリリースを書いても、マスコミからの反応がなくて悩んだことはありませんか?
私はこれまで、テレビ朝日「ニュースステーション」やフジテレビ「ニュースJAPAN」などの報道番組の制作に携わってきました。プロデューサーのデスクに山積みの企画書が、そのままゴミ箱に行くのを何度も目にしました。プレスリリースを送ったのに、なぜ取材依頼につながらないのか? マスコミが求めている情報があるはずなのに、なぜ連絡がこないのか? その理由を解き明かし、効果的なプレスリリースの書き方と、マスコミの心をつかむ方法についてお伝えします。

プレスリリースの基本を押さえていますか?

記者やディレクターは日々、大量の情報を集めています。新聞、雑誌、通信社の配信記事、Web記事など、多くの情報を読んでいます。プレスリリースもその一つですが、すべてを丁寧に読んでいるわけではありません。彼らは限られた時間の中で、必要な情報を取捨選択しなければならないためです。

記者やディレクターの立場になって考えてみましょう。彼らはプレスリリースの本文を読む前に、まずタイトルやリード文をさっと確認し、その内容を判断します。プレスリリースの基本構成は、ヘッダー、タイトル、リード文、本文、会社概要、参考資料などですが、最も重要なのはタイトルやリード文です。

私がテレビ制作に関わっていたとき、映像として魅力的かどうかも意識していました。そのため、目に飛び込んでくる写真も、本文を読むかどうかの重要な判断基準となります。

プレスリリースの構成例 本文を読むかどうかはタイトル、リード、画像で判断する

ニュースバリューはありますか?

プレスリリースを出す目的は、自社の製品やサービスをマスコミに取り上げてもらいたいという点にあると思います。言い換えれば、「マスコミに宣伝してもらいたい」という意図があるわけです。しかし、記者やディレクターは、「宣伝をしてあげよう」とは考えていません。彼らは基本的に報道の観点から、ニュースバリューがあるかどうかで取り上げるかを判断しています。

プレスリリースが取り上げられない最大の理由は、「宣伝して欲しい」という企業側の期待と、マスコミ側の「ニュースを届けたい」という考えのギャップにあります。マスコミは顧客である読者や視聴者が、読みたい情報や観たい情報を提供することを重視しています。したがって、プレスリリースが取り上げられるかどうかは、その情報がニュースバリューを持っているかどうかが重要な判断基準となります。

興味がある情報を求める顧客(読者・視聴者)にニュースを届けたいマスコミと、製品やサービスを宣伝してほしい自社との間にギャップが生じる。

ニュースバリューは、新規性、社会性、時事性、話題性などに分類できます。特にテレビの場合は、ビジュアル性も重要な要素です。自社のプレスリリースにこれらの要素が一つ以上含まれているかどうかを確認しましょう。

新規性

これまでになかった新しい情報、製品、サービス、または出来事。独自の技術やサービス、業界の常識を覆すような革新的な取り組みが該当します。

社会性

社会全体に関わる問題や関心事、多くの人々に影響を与える出来事を指します。たとえば、環境問題や少子高齢化など、社会が抱える課題の解決につながる内容です。

時事性

現在進行中の出来事や、これから発生するニュースが該当します。最新のトレンドやタイムリーな話題が該当します。

話題性

人々の間で話題になっていることや、注目を集めている人物や現象を指します。多くの人が共感できるようなストーリーやエピソードが含まれていると効果的です。

ビジュアル性

特にテレビの場合、映像になるかどうかや取材対象者のキャラクターが立っているかといった点も重要です。

取り上げて欲しいメディアを特定していますか?

プレスリリースを送る際に、適切なメディアを選ばないと取材依頼は期待できません。自社の情報に合ったメディアを見極めることが重要です。あなたのプレスリリースを取り上げてくれる可能性が高い媒体はどこでしょうか。テレビ、新聞、雑誌、Webメディアなど、各メディアにはそれぞれ専門性があり、取り扱うジャンルにも傾向があります。

未知のメディアからの取材依頼を期待するのではなく、まずその媒体をじっくり確認してください。過去に取り上げた記事の傾向を把握し、直接プレスリリースを送ることで、効果が高まります。記者やディレクターは、自分が興味を持っている分野を継続的に取材することが多いため、記名記事などを参考にして、ピンポイントで情報提供を行うと、対応してもらえる可能性が高まります。

例えば、私も以前、保険商品に関する特集番組を放送した後、視聴者からの情報提供をきっかけにシリーズ化した経験があります。

もし、なかなか取り上げてもらえないと感じた場合は、大手メディアにこだわるのではなく、地元のローカルメディアや専門紙に情報提供をすることも重要なアプローチです。また、プレスリリース配信サービスを利用して、特定のメディアに情報を届ける方法もありますので、ぜひ活用してみてください。

マスコミとの関係構築をしていますか?

一時的な関係ではなく、長期的な信頼関係を築くことを目指しましょう。そのためには、メディアの特性や読者層を理解し、ニーズに合った情報を提供することが大切です。また、一度つながった記者やディレクターに継続的に情報を提供することで、追加の取材が入る可能性もあります。

プレスリリースだけでなく、日常的にホームページやSNSを活用して独自性の高い情報を発信することも重要です。記者やディレクターは、記事や番組にする前にインターネットで詳しく調べていることを想定しましょう。例えば、私の知り合いの弁護士は専門性の高いブログ記事を継続的に書いており、その結果、マスコミから頻繁に問い合わせを受けています。マスコミはニュースバリューのある情報を求めているため、関連する情報発信が取材のきっかけとなるのです。

まとめ

プレスリリースが取材依頼につながらない理由は、マスコミが求めるニュースバリューや媒体の特性に合致していないことが多いためです。効果的なプレスリリースを作成するためには、タイトルやリード文でインパクトを与え、ニュースバリューを意識した内容を提供することが重要です。また、適切なメディア選定や、日常的な情報発信、メディアとの信頼関係の構築も取材依頼を引き寄せるためのポイントとなります。

コラムニストプロフィール

千種 伸彰(ちぐさ・のぶあき)

プロデューサー/中小企業診断士
テレビ朝日 「ニュースステーション」、フジテレビ「スーパーニュース」「ニュースJAPAN」等制作。インターネット国際映画祭、商店街TVをはじめとする Web・動画・出版等のメディアプロデューサー。動画マーケティングを活用して企業や地域の活性化に取り組む。経営戦略策定や業務効率化の支援に生成AIを導入している。
著書『セルフキャスト!~ビジネスを加速させる動画配信』