• トップ
  • 今さら聞けないShopify(ショッピファイ)の基本

今さら聞けないShopify(ショッピファイ)の基本

公開日:2024/08/09

山本・晶子(やまもと・あきこ)

近年相談の現場でも耳にすることの増えたECプラットフォーム(ネットショップ構築サービス)「Shopify(ショッピファイ)」。聞いたことはあるけどよくわからない、というお声も多いので、今回はShopifyの「そもそも」について解説してみます。

1. Shopifyの成り立ちと日本進出

Shopifyは2006年カナダで誕生しました。もともとネットショップを起業しスノーボードを販売していたエンジニアがストア側の目線で開発している点や、共鳴したデザイナーやエンジニアがテーマやアプリを提供する独自のパートナーシップ(エコシステム)など、成り立ちから個性があります。

そんなShopifyは2017年より日本市場に本格進出を果たします。徐々に知名度があがっていく中でコロナ禍がはじまり、ネットショップ需要は急増。費用負担が少なく拡張性が高いShopifyへの注目は、特に中小企業や個人事業主の間で急速に高まりました。

2. Shopifyとは

クラウド上でEコマース(Electronic Commerce / 電子商取引)を提供するサービスです。用語の使い方として「EC = ネットショップ」というイメージを持つ方も多いかもしれませんが、「オンラインストア」以外にもFacebookやInstagram、ブログに貼れる購入ボタンや店頭で使えるPOSなど、ひとつのアカウント、同一の管理画面からいろいろな販売方法を選ぶことができます。

このようにクラウド環境を使うサービスは「SaaS(Software as a Service)型」と呼ばれます。このタイプの場合は自社でサーバーの手配や管理が不要で、ネット上の申込手続きですぐに利用ができます。多くの場合試用期間があるのもありがたい点です。セキュリティ面も一貫して任せることができるので、人員や知識に不安がある事業者の方にも安心です。

SaaS型のECサービスには、サービス利用料のかからない無料プランがあるものもありますが、Shopifyは試用期間以降はすべて月額費用が必要です。(これまで料金はドル建てでしたが、2024年5月より基本的なプランは円で支払ができるようになりました)

付属のクレジットカード決済「Shopifyペイメント」を利用する場合は、クレジットカード手数料以外の処理手数料などが一切かからないというのも特徴です。同じようなECサービスでも利用する業者やプランによってクレジットカード手数料の金額自体や様々な手数料の仕組みは異なります。サービスを比較検討中の方はこのあたりもひとつのポイントです。

3. Shopifyは何が違うのか

ひとことで言うとShopifyは「なにごとも自分次第」なサービスです。そこには冒頭で触れたパートナーシップも関わってきます。

まず機能面ですが、同じような有料SaaS型ECサービスでは比較的安価なShopifyは最初から多くの機能を搭載済の高価格帯のサービスと比較すると基本機能が多くはありません。機能を追加するには公式アプリストアに出品されている「アプリ」(有料/無料)をインストールします。WordPressでホームページやブログを作ったことがある方であれば「プラグイン」が近いイメージかもしれません。

この「アプリ」を提供するのはShopifyから認定を受けたパートナーです。中にはShopify自体が提供するものもありますが、扱いは同じで、利用者が自分で選んでインストールしなくてはなりません。

他のECサービスでは追加機能の仕様は決まっており、それがあらかじめ含まれていたり有料で追加したりします。一方Shopifyは、世界中からさまざまなパートナーが機能追加のアプリを提供しています。有料で提供しているものは提供パートナーの利益になるため、常に利便性や新しい機能の追加を目指して開発を続けています。

近年の日本で言えば「インボイス」対応など、その都度必要な機能を最新のアプリから自由に選べるのは魅力的ですが、思った動作と違ったり、そもそもうまくインストールできなかったりした際にShopify側はノータッチなので、アプリ開発パートナーと直接コミュニケーションをとらなくてはなりません。

次にデザイン面から見てみます。Shopify上でネットショップを構築するには「オンラインストア」というチャネル(販売方法)の中に、デザインテーマをインストールする必要があります。「テーマ」は機能追加のアプリと同じく認定を受けたパートナーが制作して提供しています。テーマをインストールすることで、各ページの「テンプレート」や色、文字、レイアウトなどの基本設定を管理画面からカスタマイズすることができます。

「テーマ」についても、アプリ同様パートナーたちが販売利益をあげるためにブラッシュアップを続けています。同じテーマが永続的に販売される保証もありません。中には商品の絞り込みなど、ページ上での表示に関する機能をテーマ側で実装しているものもあります。

Shopifyはデザインテーマの質が高く、デザインや制作経験がまったくないネットショップ初心者の方でも、写真やテキストを当てはめていくだけで本格的な見栄えをつくることができます。それもテーマ提供の段階でデザイナーたちがしのぎを削っていると考えたら当然のことかもしれません。

4. Shopifyを活用するコツ

前章にあげたとおり、Shopifyの特徴を十分に活用するためには、まず自分たちがどんなお店や売り方、コミュニケーションを実現したいのかをできるだけ明確にしておくことが大切です。

例えば「予約販売をしたい」と考えた時に、アプリを検索すると61のアプリが表示されます(※2024年6月現在)。その中から自分にあったものを選ぶためには、お客様にはどんな案内をしたいか、決済や配送はどのように処理したいのか、など一連の動作や画面の遷移についてのイメージができるだけ具体的になっていることが大切になります。そのイメージがある方にとっては、Shopifyは自由度と可能性が高く魅力的なサービスに感じるものと思います。

一方で、ネットショップは初めてだったり運用をじっくり考えられる余裕がなかったりする方にとっては、選択肢の多さは負担に感じられるかもしれません。BASEなどの無料で手軽に作成できるサービスの画面の方が使いやすいと言われることがありますが、これらのサービスの多くはボタン操作やスイッチ切替などのシンプルな動作以上の判断を求められないので、「これでいいのだろうか」と迷うポイントが少なくて済むといった点も理由としてあげられるかもしれません。

もっと積極的な運用を試したいという店舗も、スピーディーにきれいなデザインで開店できたのでこのまま手間をかけずに運用したいという店舗も、Shopifyの使い方はまさに自分次第。自分も挑戦してみたい、あるいはもっと使いこなしたい、という方はネット上のコミュニティや公式サイトやパートナーが更新するブログや動画などを研究してみてください。

※本コラム内でのShopifyに関する情報は2024年6月10日時点の内容です。最新情報は必ず公式サイト等でご確認ください。

コラムニストプロフィール

山本 晶子(やまもと・あきこ)

ITコーディネータ、上級ウェブ解析士。
情報誌企業から独立後、大手から個人まで様々な規模・工程で広くサイト構築と改善の実務に携わる。被災地支援をきっかけに公的支援制度の仕組みを知り、資格取得や登録を進めて相談業務も開始。現在は小規模サイトやEC構築と改善相談を専門とする。

コトバトウェブ合同会社 代表社員/経済産業省認定 情報処理支援機関/中小企業庁「みらデジ」デジタル化支援者/Shopify Experts