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WEBサイトで販路を開拓・拡大したい企業が見逃しがちな活動10選(3)

公開日:2023/05/09

岩岡博徳(いわおか・ひろのり)

すでに専門の製品やサービスを開発・販売している多くの企業が、さらなる展開として、WEBサイトを活用して新たな仕事を受注したり、EC(電子商取引)をしたりしています。

例えば、独自の加工技術や保有設備をWEBサイトで詳しく紹介して、お問合せを受けるケースや法人向けに販売している製品を消費者向けに改良してネットショップで販売するケース等です。

このように新たな販路をWEBサイトに求めていくことはビジネスチャンスを拡大しますが、WEBサイトを介したビジネスを専業「にしていない」企業にとって、インターネット上で販路を築いていくのは非常に悩ましい問題です。中には、専用WEBサイトやSNSを立ち上げ、PPC広告(PayPerClick。クリックされるたびに広告費が発生する仕組み)を使っても売上につながらなかったり、採算がとれるほどの販路拡大に至らないこともよくあります。このように販路に悩む企業から相談を受けることは多々あります。

今回はこのようなWEBサイト上で販路を開拓・拡大したい企業にありがちな「ついつい見逃してしまう活動」10選を複数回に分けてお届けします。

ケース5.顧客に刺さる言葉を見逃している

顧客に刺さる言葉とは、商品やサービスを宣伝する際に使用される言葉で、顧客の心を動かし、関心を持たせ、購買意欲を高めることを目的とした言葉のことです。このような言葉には、「早い!旨い!安い!」や「安い・近い・短い」といった、利便性や低価格性をアピールするもの、または「お客様に上質な空間をご提供します」といった感情を呼び起こすもの、「今だけ」「これだけ」「あなただけ」といった限定性を打ち出したものなどがあります。

ただ、こうした言葉を生み出すためには、顧客に関する深い理解が必要です。顧客が誰なのか、その人が使用している言葉や関心を持つことは何か、また、その人がどのような価値観を持っているのかを把握することが重要です。そして、顧客を一人ひとりに絞り込んで考えることが、顧客に刺さる言葉を生み出すための重要なステップとなります。

例えば、家族向け旅行商品を企画する場合、顧客は「ファミリー」という大まかなカテゴリーではなく、旅行の決定権を持つ家族の一員が顧客となります。その家族の中でも、妻(または母親)が多くの場合、旅行計画に大きな影響を与えることが多いため、彼女が関心を持つ言葉を考える必要があります。そして、その妻(母親)が日常生活で使用する言葉や、旅行に対する価値観を理解することで、顧客像をより明確にすることができます。

顧客に刺さる言葉は、単純な表現から複雑な文書まで、その形態は多岐にわたります。しかし、どのような形であれ、顧客を深く理解していなければ、その言葉は顧客の心に響かないばかりか、逆効果になってしまう可能性があります。顧客像を明確にし、顧客に対して個別化されたアプローチを行うことが、顧客に刺さる言葉を生み出すための重要な手段となります。そして、「個客化」を行うことで、顧客が抱える問題やニーズを正確に把握し、それに対応するための戦略を構築することが可能になります。例えば、先ほどの家族向け旅行商品について考えてみましょう。

妻(母親)が旅行に求める価値は、家族のコミュニケーションを深めたり、子どもたちに思い出を作ってあげたりすることでしょう。また、都心に住んでいる場合は、自然に触れ合える場所や、快適な宿泊施設があることが重要になるかもしれません。一方、郊外に住んでいる場合は、家族で過ごせるスペースが広い宿泊施設や、近隣にアウトドア体験ができる場所があることが魅力的でしょう。このように、顧客像を明確にすることで、顧客が抱える問題やニーズを正確に把握し、それに対応するための戦略を構築することができます。そして、それを実現するためには、顧客とのコミュニケーションが欠かせません。顧客とのコミュニケーションを通じて、顧客の声を集め、商品やサービスの改善点を洗い出し、それに対応するための施策を打ち出すことが大切です。

このような顧客像を明確にするためには、市場調査や顧客インタビューなどの手法を使い、顧客が抱える問題やニーズを把握する方法があります。顧客が抱える問題やニーズを理解することで、商品やサービスの提供先や提供方法を最適化することができます。また、顧客の言葉を理解することも重要です。顧客が使う言葉やフレーズを理解することで、商品やサービスの説明や広告を作成する際に、顧客が理解しやすい表現を用いることができます。ただし、顧客像を明確にすることは簡単なことではありません。顧客像は常に変化していくものであり、一度把握したとしても、常に最新の情報を取得し、改善を行っていく必要があります。顧客の問題やニーズを把握し、それに対する解決策を提供することができれば、顧客にとって価値のある商品やサービスとして認知され、購入や利用につながることでしょう。

ケース6.導線が途中で切れていることを見逃している

WEB導線が途中で切れてしまっていると、ビジネスチャンスを逃すことにつながります。WEB導線が途中で切れていることを見逃している事例を紹介しつつ、その対策を考えます。

まず、ある企業のWEBサイトで、商品ページから購入画面への導線が途中で切れていたという事例があります。商品ページからは「購入する」というボタンがあるものの、それをクリックしても購入画面に遷移せず、トップページに戻ってしまうという問題がありました。この問題が発生してからしばらくは気づかず、多くのユーザーが商品を購入しようとしても断念してしまっていたそうです。

このような問題は、多くの企業で起こり得ます。問題を解決するためには、WEBサイトの導線を定期的にチェックすることが大切です。また、ユーザーが問題を報告しやすい仕組みを設けることも重要です。問題が発生した際には、迅速に対応し、ユーザーに誠意を持って対応することが信頼を築くために必要です。

次に、ある企業のWEBサイトで、問い合わせページからのメールが届かないという事例がありました。問い合わせフォームを入力し、送信ボタンを押した後、送信完了のメッセージが表示されるものの、実際にはメールが届かないという状況でした。この問題が発生してからも、企業側は何も気づかず、ユーザーからの問い合わせにも返信ができない状況が続いていたそうです。

このような問題は、企業としての責任を果たしていない状況になってしまいます。問い合わせフォームの動作テストや、メール受信テストを行うことが大切です。また、問い合わせには必ず返信するようにすることで、ユーザーの信頼を維持することができます。問題が発生した際には、ユーザーに謝罪し、迅速かつ適切な対応をすることが重要です。

最後に、ある企業のWEBサイトで、商品ページから購入画面への導線が存在しないという事例がありました。商品ページを見て興味を持ったユーザーが、どのようにして購入するのか分からず、結果として購入を断念してしまうという状況でした。この問題が発生してからも、企業側は気づかず、ビジネスチャンスを逃してしまっていたと思われます。
このような問題は、企業側がユーザー目線でWEBサイトを見ることができていないことが原因となることが多いです。商品ページには必ず購入画面への導線を設け、ユーザーが簡単に購入できるようにすることが大切です。また、商品ページには商品の特徴や価格などを分かりやすく掲載することで、ユーザーが商品に興味を持ちやすくすることも重要です。

以上のように、WEB導線が途中で切れていることは、致命的な問題となり得ます。定期的なチェックやテストを行い、問題が発生した際には迅速かつ適切な対応をすることが重要です。また、ユーザー目線でWEBサイトを見ることで、問題を未然に防ぐことができます。WEBサイトで販路を拡大するためには、WEB導線がスムーズに動作するようにすることが不可欠です。

ケース 7.言葉の定義があいまいで、誤字脱字も多いことを見逃している

WEBサイトの品質向上のためには、重要な言葉の定義や誤字脱字のチェックも重要です。

まず、WEBサイトの品質を高めるためには、適切な言葉の定義が重要です。多くの企業のWEBサイトには、専門用語が適切に定義されていない場合があります。このような場合、ユーザーは何を指しているのか理解しづらくなります。例えば、ある企業のWEBサイトで、「キャッシュバック」という言葉が頻繁に使われていました。しかし、この企業のキャッシュバックの定義は、他社と異なっており、ユーザーにとって混乱を招く原因となっていました。このような場合、定義を明確にすることで、ユーザーの理解を促進することができます。

また、誤字脱字もWEBサイトの品質を低下させる要因の一つです。誤字脱字は、信頼性を損なうことがあり、ユーザーに不快感を与えることがあります。例えば、ある企業のWEBサイトには、商品名の英語表記でスペルミスが多数見受けられました。これにより、ユーザーはその企業の商品やサービスに対する信頼度が低下する可能性があります。さらに、誤字脱字は、検索エンジンの評価にも影響を与えます。検索エンジンは、正確な情報を提供することが求められるため、誤字脱字を多く含むWEBサイトは、評価が低下する可能性があります。

実際に、WEBサイトの品質を高めるために、定義の明確化や誤字脱字のチェックを実施した企業があります。ある化粧品メーカーは、商品名や成分名の誤字脱字をチェックするために、日本語をチェックするためのクラウドサービスを活用しました。このサービスにより、WEBサイトに誤字脱字が含まれている場合には、自動的に検知され、修正作業が行われるようになりました。この取り組みにより、ユーザーからの信頼性向上だけでなく、検索エンジンからの評価も向上し、WEBサイトの集客効果が高まりました。

また、ある家具メーカーは、WEBサイト内の用語定義を明確化するために、専門用語のリストを作成し、それを社員間で共有するようになりました。これにより、社員間のコミュニケーションがスムーズになり、WEBサイトの品質向上につながりました。

このように、WEBサイトの品質向上には、言葉の定義の明確化や誤字脱字のチェックが重要です。企業は、これらの取り組みを行うことで、ユーザーからの信頼性向上や検索エンジンからの評価向上を実現し、販路の拡大につなげることができます。また、定義の明確化や誤字脱字のチェックは、社員間のコミュニケーションの改善にもつながります。企業は、WEBサイトを活用することで、より多くの顧客とつながり、ビジネスの拡大につなげることができます。

コラムニストプロフィール

岩岡博徳(いわおか・ひろのり)

1973年生まれ。横浜市立大学商学部経営学科卒業、東京都立大学大学院経営学修士(MBA)。中小企業診断士、ITコーディネータ、東洋大学大学院経営学研究科特任教授。総合電機メーカー系商社で経営企画などに従事し、2004年に経営コンサルタントとして独立開業、2008年に法人化し代表取締役に就任した。自社でのマネジメント改革を通し、ITによる業務効率化や事業計画策定、PDCA型マネジメント導入を得意とする。現在は事業承継を行い、省庁や都県等の公的機関、金融機関を通して数多くの中小企業支援を行っている。