デジタル化が進む現代。私たちは日々膨大な情報に囲まれています。一説によると、1日に触れる情報量は、江戸時代の1年分に相当するともいわれています。
またスマートフォン1台で世界中の情報にアクセスできる時代となりました。
情報の受け手としては、情報にアクセスしやすく、そして情報過多の時代といえます。
そのため情報発信をする側としては、効果的な情報発信をしなければ「埋もれて」しまいます。特にSNSを使った情報発信の場合は埋もれるリスクが高いです。ご存知のように、SNSの情報はリアルタイムでどんどん流れていくため、受け手に目をとめてもらうためには一工夫が必要です。
本コラムでは、主要SNSの特徴と活用方法について、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
SNSの基本概念
SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)は、インターネット上で人々がつながり、コミュニケーションを取るためのプラットフォームです。
現代のSNSは単なるコミュニケーションツールを超え、多様な機能を備えています。情報発信・共有はもちろんのこと、コンテンツ配信プラットフォームとしての役割や、マーケティングツール、カスタマーサポート窓口、さらにはeコマース(インターネットを通じて商品やサービスを売買するビジネスモデル)機能まで備えているものもあり、ビジネスにおいても欠かせないツールのひとつとなっています。
主なSNSの種類と特徴
まず簡単に主要SNSの種類と特徴をお伝えします。
- X(旧Twitter):リアルタイム性の高い情報交換に特化。ハッシュタグを活用したトレンド発信や、短文での情報共有が特徴です。
- Instagram:写真や動画を中心としたビジュアル重視のSNS。視覚的な訴求力の高さから、特にアパレルやコスメ業界、飲食業界などで活用されています。
- Facebook:実名登録が必須で、ビジネスシーンでの活用も多いSNS。匿名性が低いということで、相対的に信頼性の高い情報発信に適しています。
- LINE:個人間のコミュニケーションツールとして発展。近年では、ビジネスシーンでの活用も増えており、クーポンやポイントとの連携など、多様なサービスが提供されています。
- YouTube:動画共有プラットフォーム。長尺の動画からショート動画まで、様々な形式の動画が投稿されています。
- TikTok:短尺動画に特化したSNS。音楽や効果音を使ったクリエイティブな動画が特徴で、特に若い世代に人気です。
主要SNSの特徴をふまえた活用方法
このような特徴をふまえて、具体的な活用方法を見ていきましょう。
進化し続けるX(旧Twitter)の世界
X(旧Twitter)は、リアルタイム性と高い拡散力を最大の特徴とするプラットフォームです。全角140文字という文字数制限があり、ハッシュタグ機能の発祥の地としても知られています。20代から40代を中心に幅広い年齢層が利用しており、短文での簡潔な情報発信が得意です。タイムリーなトピックの投稿やハッシュタグを活用したイベント告知、フォロワーとの活発なコミュニケーションが可能です。
ニュースやトレンド情報の共有にも適しており、即時性の高い情報発信プラットフォームとして重宝されています。
近年はサービスの改善・進化が続いており、従来の特徴とは異なったサービスになりつつあります。
たとえば、最大の特徴である短文投稿ですが、X Premium(Twitter Blue)というサブスクサービスに加入すれば、10,000文字までのポスト(ツイート)ができるようになります。
また、イーロン・マスク氏は2024年12月18日にX(旧Twitter)で「ハッシュタグの使用はやめてください。システムにはもう必要ありませんし、見た目も悪いです」と投稿しました。
ハッシュタグはもともと特定の話題を共有・検索する手段として導入されましたが、AIによるコンテンツ推薦システムの高度化により、これからはハッシュタグがなくても関連投稿にアクセスできるようになることが背景といえます。
X(旧Twitter)というプラットフォームはSNS文化を象徴する面もあるため、このようなサービスの進化と背景にある思想は他のSNSにも影響するものと考えられます。
■おすすめ活用方法
- 開催時期がせまったイベントの告知や期間限定のキャンペーンなどに利用し、リポストなどで拡散してもらう
→ホームページなどで告知しても「見に来てもらう」必要がありますが、X(旧Twitter)では情報発信から情報を受け取るまでのタイムラグが少ないので、例えばポスト翌日のイベント告知でも有効な場合があります。またキャンペーンなどは拡散されることが多いのでより多くの人に情報を届けることができます。 - アンケートや投票で顧客の声やエンゲージメントを高める
- リアルタイム情報を掲載することで顧客に適切な情報を伝える
※2025年1月現在の情報です。今後の仕様変更などにより機能が変更となる可能性があります。このように書いておく必要があるのもX(旧Twitter)というプラットフォームの特徴といえるかもしれません。
視覚的に伝えるInstagram
Instagramは、ビジュアルを重視したプラットフォームとして、独自のポジションを確立しています。写真や動画による魅力的な表現が可能で、ストーリーズ機能を使った24時間限定のコンテンツ配信も特徴的です。ショッピング機能との連携もでき、商品やサービスのビジュアル訴求に非常に効果的です。
フィルターやエフェクトを使った写真加工も手軽に行えるため、ブランドイメージの構築やインフルエンサーマーケティングにも適しています。
■おすすめ活用方法
- ビジュアル、画像で伝えたほうがいい情報を伝える
→洋服や靴などなかなか文字では魅力を伝えにくい商品や、ネイル・ヘアカットなど仕上がりを画像で伝えたほうがひと目で良し悪しがわかることは、ビジュアル・画像で伝えたほうが情報の受け手もよりわかりやすくなります - 実際に使っている様子や、商品の魅力が伝わるような投稿をして購買意欲を高める
- 美しい写真や動画で企業や商品の世界観を表現し、ブランドイメージを向上させる
実名という特徴を最大限に活かすFacebook
Facebookは、実名制による高い信頼性が特徴で、特にビジネスユーザーの利用が多いプラットフォームです。詳細なターゲティング広告が可能で、グループ機能を使ったコミュニティ形成やイベント告知・管理機能も充実しています。企業の公式アカウントとして活用されることが多く、ビジネスイベントの告知・集客、採用情報の発信、専門的な情報やノウハウの共有に適しています。
■おすすめ活用方法
- 自分自身も実名なので信頼性が高い情報発信ができる
- 実名ということで相手の属性がわかりやすいので広告運用などがしやすい
- 経営者の利用も多いので経営者ターゲットとして活用する
- つながりをベースとした情報発信を行う
多機能なLINE
LINEは日本国内では9,000万人以上の月間アクティブユーザーがいると推定されている、国民的メッセージングアプリです。プライベートなコミュニケーションツールとしての性質が強いものの、公式アカウント機能やポイントカード連携、決済機能など、ビジネス利用のための機能も充実しています。カスタマーサポートやクーポン配信、ニュースレター配信、来店ポイントサービスとの連携など、様々な用途に活用できます。
■おすすめ活用方法
- 顧客からの質問や問い合わせに迅速に対応し、顧客満足度向上につなげる
- LINE限定のクーポンやキャンペーンを実施することで、顧客の購買意欲を高め、リピート率向上につなげる
- メールに比べて開封率や反応率が高いといわれているため、顧客との関係性構築に使う
世界最大の動画プラットフォーム YouTube
YouTubeは世界最大の動画プラットフォームとして、長い尺の動画コンテンツの配信に適しています。検索エンジンとしての機能も強力で、広告収益化も可能です。動画再生に関する詳細な分析機能を備えており、商品やサービスの解説動画、教育コンテンツの配信、ブランドストーリーの発信などに効果的です。
また、ライブ配信機能を使ったイベント開催も可能で、視聴者との双方向のコミュニケーションを実現できます。
■おすすめ活用方法
- 自社の商品やサービスを実際に使用している様子を動画で紹介することで、見込み顧客に製品に対する理解を深めていただき、購買意欲を高める
- 会社の理念やビジョン、社員インタビューなどを動画で発信することで、企業への信頼感を高め、採用シーンなどで利用する
- 実際の商品の使い方やサービスの利用方法を分かりやすく解説する動画を作成することで、購買した顧客の満足度向上につなげる
TikTokの新しい可能性
TikTokは10代から20代を中心とした若年層に特に人気があり、ショート動画(短い尺の動画)に特化したプラットフォームです。音楽との親和性が高く、簡単な動画編集機能を備えています。高い拡散力を持ち、トレンド情報の収集や若年層向けブランディング、クリエイティブな企業文化の発信に適しています。特に採用マーケティングやバイラルマーケティングの分野で注目を集めています。
■おすすめ活用方法
- ショート動画なので、商品の魅力などを端的に伝えるきっかけにする
- 若年層の利用が多いので、採用活動などに活用する
- 動画マーケティングを考えた場合、まずコストがかからないショート動画をスマホで作成してみる
SNSを活用し、成功させるための基本はユーザー目線
冒頭にもお伝えしたようにSNSの本質は、コミュニケーションにあるといえます。とするなら企業として、伝えたい情報を伝えるよりも、ユーザーが知りたい情報をわかりやすく伝えることが最大の成功ポイントになります。
具体的には三つの基本原則を押さえることが重要です。
まず、①各SNSの特徴や文化を深く理解し、ユーザー目線での運用を心がけることです。投稿内容をプラットフォームに合わせて最適化し、ユーザーの行動パターンを分析することで、より効果的な発信が可能となります。
次に、②継続的な投稿が重要です。投稿スケジュールを作成し、それを順守することで、フォロワーとの安定した関係を築くことができます。コンテンツの品質を一貫して保ちながら、最適な投稿間隔を見極めることで、より高い効果が期待できます。
最後に、③ユーザーとの関係性・エンゲージメントを重視することです。コメントへの丁寧な返信やフォロワーとの積極的な交流を通じて、強固な関係性を構築し、企業や商品のファンになってくれるようなコミュニティを形成することができます。
バズらせることは必須なのか?
SNSの活用でよく話題になるのが「バズる」ということ。投稿したコンテンツがたくさんの人に見られて拡散されていくことをいいます。
企業がSNSを活用する際に「バズらせる」意識は必要でしょうか。
もちろん「認知してもらう」という観点では必要ともいえます。ですが、「コンテンツを面白いと思ってくれる人」が必ずしも「あなたの商品を買ってくれる人」になるとは限りません。
また、「バズ」は狙って起こすことはほぼないと考えたほうがいいです。変に「狙った」コンテンツは「面白くない」ことが多く、また目が肥えているユーザーにはバレてしまいます。
さらにコンテンツをバズらせるためには、トレンド分析や、共感を呼ぶストーリー作りが必要といわれています。
ですが、自社で伝えたいこと・伝えるべきことからかけ離れたトレンドにあわせた投稿をしたり、共感を呼ぶために嘘ではないまでも強引なストーリーを作りこんだコンテンツを投稿することは、仮にバズったとしても一過性のものであり、本来のSNS運用の目的から考えれば本末転倒といえるのではないでしょうか。
それよりも、SNS活用の基本原則としてお伝えしてきたような、ユーザーの役に立つ情報をユーザー目線で作ることが重要であり、ユーザーにとって有益な情報提供を続ければ、自然と「面白い」「いいねやエンゲージが高い」ような「バズる」コンテンツになると考えています。
意図的にバズらせるのではなく、ユーザー目線で役立つ面白いコンテンツだからこそ、結果的に「バズる」のではないでしょうか。
企業が情報発信する際にたくさんの人に見てもらいたいと思う気持ちはわかりますが、ビジネスの手段としてのSNS活用なので、届けたい相手が求めている情報を発信するということを最優先することをおすすめします。
効果的に活用するための理解と戦略
SNSの効果的な活用には、各プラットフォームの特徴を理解し、適切な戦略を立てることが重要です。初めは小さな一歩から始めて、徐々に活動を拡大していくことをおすすめします。継続的な学習と実践を通じて、着実にSNSマーケティングのスキルを磨いていくことで、より効果的な情報発信が可能となるでしょう。