マーケティングオートメーション導入の失敗を防ぐ!MAの基本と成功ポイント
公開日:2022/03/22
東京都中小企業振興公社コラム編集部
収益向上を目的としてマーケティング活動を自動化する、マーケティングオートメーション(MA)。見込み客の管理・育成ができるようになり、マーケティング活動の生産性向上や営業活動の効率化が可能なことから、導入を検討している企業も多いのではないでしょうか。
しかし、中小企業がやみくもに導入しても、そのメリットは得られません。マーケティングオートメーションの導入に成功し、メリットを享受するには、押さえておくべきポイントがあります。
そこで本稿では、マーケティングオートメーションの基本や、よくある失敗の原因を紹介し、中小企業が導入・活用に成功するために押さえておくべきポイントを解説します。
マーケティングオートメーション(MA)とは
マーケティングオートメーション(MA)とは、獲得した見込み客(リード)を育成し、ホットリードとして営業に引き渡すまでのマーケティング業務を、一元管理・自動化するツールです。
BtoBはBtoCと比較して契約・購入までの検討期間が長く、関与する人も多いことが特徴です。そのため、それぞれのタイミングで、見込み客の関心の対象や程度に合わせたアプローチを行う必要があります。しかし、人力で行うには限界があり、また効率も良くありません。
そこで役に立つのが、マーケティングオートメーションです。一般的に、マーケティングオートメーションには以下のような機能が備わっています。
- Webページ・フォーム作成
- 見込み客の情報管理
- メール配信
- アクセス解析・行動解析
- スコアリング
- 顧客関係管理(CRM)との連携
マーケティングオートメーションを導入すると、獲得した見込み客ごとに最適なマーケティング施策を自動で打てるようになります。つまり、見込み客の興味・関心を高めた上で確度の高い顧客を選別し、営業に引き渡せるようになるのです。
マーケティングオートメーションの導入で実現できること
マーケティングオートメーションの導入で実現できるのは、以下の3つです。
- 見込み客の一元管理
- 見込み客との継続的なコミュニケーション
- スコアリングによる見込み客の分類と選別
順番に解説します。
見込み客の一元管理
BtoBでは、展示会への出展やホームページでの集客、広告出稿など、さまざまな方法で見込み客を獲得しています。中小企業においては、これらの顧客情報をエクセルで管理しているところも多いでしょう。
手動での情報管理は煩雑な上、見込み客の属性や興味・関心の内容、確度などをクロスさせて細分化するのは困難です。仮にできたとしても、大きな工数が発生し、生産性は上がりません。
マーケティングオートメーションを導入すれば、メールアドレスを軸にして、見込み客とのコミュニケーション履歴をファーストコンタクトから一元管理できるようになるのです。
見込み客との継続的なコミュニケーション
マーケティングオートメーションを導入すると、見込み客と適切なタイミング・内容で、継続的なコミュニケーションをとることが可能になります。
BtoBはBtoCと違い、ホームページに流入しても、そのまま購入に至ることはほとんどありません。検討期間が長く、担当者からその上司、決裁者まで複数の人がかかわります。受注企業側はその間、見込み客の検討度合いに応じ、必要な情報を適切なタイミングで届けることが必要です。
マーケティングオートメーションには、一斉にメルマガを配信する機能や、顧客行動を起点に、あらかじめ作成したシナリオに沿って段階的にメールを配信するステップメールの機能が備わっています。また、特定の条件に合致する顧客を抜き出してメールを送り分けるセグメント配信も可能です。
そのため、顧客一人ひとりの状況に合わせた適切なコミュニケーションをとる「One to Oneマーケティング」も可能になります。
スコアリングによる見込み客の分類と選別
マーケティングオートメーションには、見込み客のWebサイト上での行動履歴や、自社とのコミュニケーション履歴のデータが集積されます。それらのデータを分析することで、見込み客の検討の進捗具合や購入確度をスコアリングし、分類できるのもメリットです。
例えば、自社サイトの製品の詳細な機能や、導入事例のページを短期間に何度も訪問している顧客は、比較検討段階にいて導入を前向きに検討していると考えられます。
そういった確度の高い見込み客を選別し、インサイドセールスに引き渡すことができれば、営業効率の向上につながります。
中小企業がマーケティングオートメーションの導入に失敗する原因
マーケティングオートメーションを導入しても必ずしも成功するとは限らず、「期待した効果が得られなかった」と後悔する企業も少なくありません。中小企業がマーケティングオートメーションの導入に失敗する主な原因は、以下の3つが考えられます。
- 導入自体が目的になっている
- 見込み客の数が少ない
- コンテンツの準備が足りていない
順番に解説します。
導入自体が目的になっている
マーケティングオートメーションの導入に失敗する際のよくある原因は、導入自体が目的になっていることです。
マーケティングオートメーションを「マーケティングがうまくいく魔法のツール」のように思い込み、導入を決める企業は数多くあります。しかし、マーケティングオートメーションは、どのように運用するかを設計し、数値目標を立てた上で、それに合わせたコンテンツを用意するなどしなければ、活用するに至りません。
マーケティングオートメーションは目的ではなく、あくまで手段であると認識し、導入することで何を実現したいのかをよく考えることから始めましょう。
見込み客の数が少ない
前述したように、マーケティングオートメーションは、獲得した見込み客の育成を目的としたツールです。しかし、保有している見込み客の数自体が少なければ、活躍の場はありません。
そのため、まずは営業に見込み客の情報を共有してもらう、過去の展示会やイベントなどで集めた顧客情報を整理するなどし、アプローチする見込み客の数を増やす必要があります。
企業全体で保有している見込み客が少ない場合は、マーケティングオートメーションの導入より先に、見込み客の獲得を優先しましょう。
コンテンツの準備が足りていない
マーケティングオートメーションを活用するには、自社サイトのコンテンツがきちんと細分化され、定期的に更新されているなど、充実していることが求められます。
コンテンツが少ないと、流入した見込み客が何に関心を持っているのか、購買行動のどのフェーズにいるのかを判断しづらくなり、適切なアプローチができません。見込み客の確度が不確かなまま営業に引き渡しても、優先度を上げてもらえず、放置されてしまうでしょう。
中小企業がマーケティングオートメーションの導入を成功させるポイント
中小企業がマーケティングオートメーションの導入に成功するためのポイントは、以下の2つです。
- 自社のマーケティングを整理し、導入目的を明確にする
- 見込み客のフェーズに合ったコンテンツを準備する
どのような内容か解説します。
自社のマーケティングを整理し、導入目的を明確にする
マーケティングオートメーションを有効活用するには、導入目的の明確化が必要です。
マーケティング活動には、大きく分けて以下の3つのプロセスがあります。
- 見込み客の獲得(リードジェネレーション)
- 見込み客との継続的なコミュニケーションによる育成(リードナーチャリング)
- 見込み客の絞り込みと、確度の高い見込み客の抽出(リードクオリフィケーション)
まずは、自社が現在それぞれのプロセスで、どのようなマーケティング施策を行っているのか、どういった成果が出ているのか、課題は何なのかを整理します。
その上で、マーケティングオートメーションでどのような課題を解決したいのか、導入目的を明確にすると良いでしょう。
見込み客のフェーズに合ったコンテンツを準備する
マーケティングオートメーションの導入を成功させるには、見込み客のフェーズに合ったコンテンツを十分に準備しておくことも欠かせません。
例えば、認知の段階にいる見込み客に対しては、有益なブログ記事を掲載する、業界情報やノウハウのeBookを用意するなど、興味・関心を引きつけます。また、比較・検討段階にある見込み客に対しては、導入事例を掲載したホワイトペーパーや、自社製品の詳しい使い方がわかるデモ動画などを用意すると効果的です。
マーケティングオートメーションは、BtoBマーケティングのプロセスを自動化・効率化してくれますが、それだけで成果を上げるのは難しいです。見込み客を引きつけ、維持できるだけのコンテンツを豊富に準備することが、マーケティングオートメーションの導入を成功させるカギなのです。
中小企業がマーケティングオートメーションツールを選ぶポイント
中小企業が自社に最適なマーケティングオートメーションツールを選ぶポイントは、自社の導入目的と運用体制に合わせて、必要な機能を明確にすることです。
マーケティングオートメーションツールをいろいろと比較すると、高価で高機能なツールが魅力的に見え、「どうせなら多くの機能が備わったものを」とか「大手が使っているからきっと良いに違いない」と考えがちです。しかし、大手が使っているような高度な機能が、本当に自社に必要なのかを見極めることが重要です。
マーケティングオートメーションツールは、高機能で高額なものが多いのも事実ですが、機能をシンプルに絞り込み、低価格でスモールスタートできるものも用意されています。
そういったツールの中から自社に必要な機能が搭載されているものを選ぶと、予算を抑えられます。結果的に費用対効果が高くなるので、初めてマーケティングオートメーションツールを導入したい中小企業におすすめです。
マーケティングオートメーションを導入して効率と生産性の向上を
検討期間が長く、関与する人が多いBtoBにおいては、獲得した見込み客と継続的なコミュニケーションをとることが不可欠です。
マーケティングオートメーションを導入することで、見込み客を一元管理し、顧客のフェーズやニーズの顕在度により、適切なタイミング・内容で継続的にアプローチできるようになります。
ただし、マーケティングオートメーションは、ただ導入するだけではメリットを得られません。導入・運用を成功させるには、導入目的を明確にした上で、見込み客に提供できるコンテンツを十分用意する必要があります。
特に中小企業においては、自社に必要な機能を見極めた上で、必要な機能だけを備えた費用対効果が高いツールを選ぶことが大切です。マーケティングオートメーションの導入に際しては、ぜひ本稿をご参考にしてください。