中小企業の経営者・Web担当者が押さえておきたい「守りのSNS運用」
SNSは、中小企業にとって無料で顧客とつながれる非常に有効なマーケティング手段となりました。広告費をかけずに情報発信ができ、企業の魅力を日常的に届けられる一方で、個人利用と同じ感覚で運用すると、企業の信頼を大きく損なうリスクを抱えることになります。
本コラムでは、日々SNSを活用する中小企業の経営者・広報担当者に向けて、外部要因・内部要因・法的要因の3つの側面からSNSのリスクを整理し、企業として取り組むべきセキュリティ対策と運用のポイントを詳しく解説します。SNSを“攻めのツール”として活用するためには、まず“守り”の体制を整えることが欠かせません。
外部からのSNSリスク
まず押さえておきたいのは、SNSは常に外部から攻撃対象になり得るということです。特に企業アカウントは規模に関係なく悪意の対象となりやすく、乗っ取りやなりすまし、アプリ連携による不正操作など、多様なリスクが存在します。
SNSアカウントの乗っ取り
SNSの利用が広がるにつれ、「アカウントが乗っ取られた」という声を耳にする機会は年々増えています。個人アカウントであれば被害は限定的かもしれませんが、企業アカウントが乗っ取られると被害は深刻です。
乗っ取りによって起こる代表的な被害は以下の通りです。
- 虚偽の情報が投稿され、ブランドの信用が失われる
- 悪質なサイトへのリンクが拡散し、顧客に被害が及ぶ
- ハッカーが顧客DMを悪用し、詐欺や不正行為を展開する
- ログイン権限が奪われ、企業側がアカウントを取り戻せなくなる
実際、IPA(情報処理推進機構)の調査でも、不正ログインに関する相談は増加傾向にあり、SNSへの不正ログインによって本人がログインできないケースが多く報告されています。
アカウント乗っ取りは、中小企業にとって「信用の喪失」「顧客離れ」「業務停止」など重大な経営リスクを引き起こします。
アカウント乗っ取りの主な原因
乗っ取りの多くは「パスワード」や「認証情報」の管理不備が原因です。
- パスワードが短く単純で推測されやすい
- 複数サービスで同じパスワードを使いまわしている
- メール本文やメモ書きで社員間にパスワード共有している
- 二要素認証を設定していない
- 偽サイトに誘導されログイン情報を入力してしまった
こうした“ヒューマンエラー”は、日常の運用意識を変えるだけで大幅に改善できます。
企業が取るべき防衛策
乗っ取りを防ぐためには、以下を必ず実施しましょう。
SNSのリスク・セキュリティ管理
- 十分に長く複雑なパスワードを設定する(10文字以上推奨)
- パスワードの使いまわしを絶対に行わない
- 二要素認証を必ず有効化する
- 社員間でパスワードをメール共有しない
- Meta Business Suite や X Pro のように「権限管理」ができるツールを使う
- 不審なアプリとの連携をしない
- 新しいアプリ・外部サービスは検証用アカウントで試す
権限管理ツールを使えば、ログイン情報を共有する必要がなくなり、担当者ごとに投稿権限を付与できるため安全性が大幅に向上します。企業アカウントを運用する場合は必須といえる対策です。
なりすまし被害の拡大
近年増加しているのが、企業や経営者本人を模した「なりすましアカウント」です。ロゴやプロフィールをコピーした偽アカウントがフォロワーを騙し、DMで投資詐欺を持ちかけるケースが多発しています。
特に社長個人の発信アカウントは被害に遭いやすく、フォロワーとの距離が近いほど騙されやすくなるため、リスクは大きいといえます。
なりすましへの対策
なりすましは完全に防ぐことはできません。重要なのは 早期発見と正しい対応です。
- 自社名・商品名・社長名で定期的に検索する
- 日頃からフォロワーとのコミュニケーションを保ち、違和感に気づいてもらえる関係を作る
- 偽アカウントを発見したら、公式アカウントで注意喚起を行う
- プラットフォームに報告し、フォロワーにも報告協力を求める
日常的な投稿とコミュニケーションが「公式性の証明」につながるため、普段からの運用姿勢がリスク管理そのものになります。
SNSリスクの内部要因(人災)
外部攻撃よりも多いのが、社内の運用体制が原因で起きるトラブルです。中小企業の場合、広報担当者が1人しかいないケースも多く、属人化や情報管理の甘さから問題が発生しがちです。
1. 属人化・持ち逃げリスク
担当者が退職した後に「アカウントのログイン方法が分からない」「何のツールと連携していたのか不明」など、引き継ぎが完全に止まってしまうケースがよくあります。
これは運用のブラックボックス化が原因であり、企業として非常に危うい状態です。
運用計画書(ガイドライン)を作り、社内で共有することが必須です。
2. 情報漏洩・映り込み
SNS担当者の不注意によって、
- オフィス内の機密情報が映り込む
- 個人情報が特定できる画像を投稿してしまう
- 付箋に書いたパスワードが写真に写る
- ガラスやモニターの反射で撮影者が特定される
といった“見落としやすい事故”も発生しています。
SNS投稿は「外に出る情報」であるという意識を社内全体が持つ必要があります。
3. SNSの炎上
SNSの危機管理としてもっとも気になるのが炎上トラブル。
炎上に関しては別記事があるため、そちらをお読みいただければと思います。
SNSと法律・プラットフォーム規約
SNS運用は、さまざまな法律や内部規約に関連します。
- 個人情報保護法
- 景品表示法(キャンペーン告知等)
- 著作権法(画像・文章・AI生成物)
- ステマ規制(広告であることの明示)
- 各SNSの利用規約
特に写真を扱う際は、従業員・顧客の同意取得や、撮影環境の配慮が欠かせません。企業アカウントでは “写り込みのチェック” を運用ルールとして明文化しておくことをおすすめします。
AI生成画像の利用リスク
AI画像は便利である一方で、
- 商用利用の可否
- 著作権の扱い
- 学習データの権利問題
など、企業としてチェックすべき項目が増えています。
誤った使い方をすると、著作権侵害に発展する可能性もあるため注意が必要です。
規約違反によるアカウント凍結
SNSプラットフォームはAIによって大量の投稿を自動監視しています。
- 短時間での大量フォロー
- コピペ投稿の連発
- 自動ツールでの過剰な運用
- 外部リンクの連続投稿
などはスパムと判断され、アカウント凍結(BAN)されることがあります。
規約違反の解除は困難なため、事前に「やってはいけない行為」を理解しておくことが大切です。
公社の「ワンストップ総合相談窓口」に問い合わせると弁護士の先生に相談できます。
ポイントは以下です
・秋葉原本社、城南支社、城東支社、多摩支社の4拠点で実施
・無料
・法律相談の相談方法は来社かオンラインのみで事前予約制
・法律相談の他に経営相談も可能
・24時間ネット予約可能
SNS運用ルールを作り安全な運用を
SNSは上手に活用すれば、企業の信頼を高め、顧客との関係を育てる強力なマーケティング手段になります。しかし、リスク管理を後回しにすると、企業価値を失う結果になりかねません。
そのため、最低限以下の3点は社内で徹底することをおすすめします。
- アカウント管理の強化(パスワード・権限・二要素認証)
- 投稿前チェック体制の整備(情報漏洩・著作権チェック)
- 運用ルールと炎上時対応フローの策定
SNSは“守りを固めた上で攻める”ことで初めて成果を出せる媒体です。
中小企業こそ、セキュリティを意識した安全なSNS運用を徹底し、信頼される情報発信を続けていきましょう。
