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自社EC結局いくらかかる?費用の内訳を徹底解説

公開日:2025/09/18

中島賢喜

「自社ECサイトを始めたいが、一体いくら準備すればいいのか分からない」、「立ち上げた後の運営コストが、利益を圧迫しないか心配」

ECサイトの開設を検討する時や運営をしていると直面するのが、この「費用」という現実的な問題です。初期費用ばかりに目が行きがちですが、ECサイトは立ち上げてからが本番。継続的に発生する運営費用まで含めて事業計画を立てなければ、せっかくの事業が利益につながらない可能性もあります。

この記事では、ECサイトの立ち上げにかかる「初期費用」と、運営していく上で必要になる「運営費用」の2つに分け、それぞれの内訳と具体例を解説します。
自社の規模や目的に合った適切な予算を把握し、成長につながるECサイト運営の第一歩を踏み出しましょう。

1. 何にいくらかかる?ECサイト立ち上げの「初期費用」

初期費用とは、ECサイトを公開するまでにかかるコストです。サイトの作り方によってその金額は無料から数百万円以上まで大きく変動します。ここでは、代表的な2つの制作方法と、それぞれの費用感を比較してみます。

手軽に始めるなら「ASPカート」

ASP(Application Service Provider)とは、ECサイトに必要な機能(ショッピングカート、決済システムなど)をネット経由でレンタルできるサービスのことです。専門知識がなくても比較的簡単にサイトを構築でき、コストを抑えてスピーディーに始めたい中小企業や個人事業主に最も人気の高い方法です。

  • 費用相場:0円~、デザインやカスタマイズをする場合は制作費用が発生
  • 代表的なサービス: BASE、STORES、Shopifyなど
  • メリット:
    • 初期費用が安い、または無料のプランがある。
    • 専門知識がなくても、テンプレートを使って短期間で開店できる。
    • サーバー管理やセキュリティ対策をサービス提供会社に任せられる。
  • デメリット:
    • ASPによってデザインや機能のカスタマイズ性に制限がある。

【こんな方におすすめ】

  • 初めてECサイトに挑戦する方
  • とにかくコストを抑えてスモールスタートしたい方
  • 専門のIT担当者がいない企業

デザインや機能にこだわるなら「オープンソース」

オープンソースとは、ソースコードが無償で公開されているソフトウェアのことです。誰でも自由に利用・改変できるため、ASPに比べてデザインや機能を柔軟にカスタマイズできるのが最大の魅力です。ただし、構築には専門的な知識が必要になるため、社内に制作に精通した担当者がいない場合は、外部の制作会社に依頼することになります。

  • 費用:30万円程度~300万円以上、制作方針により大きく変動
  • 代表的なソフトウェア: EC-CUBE、WordPress(WooCommerce)など
  • メリット:
    • デザインの自由度が高く、独自のブランドイメージを表現しやすい。
    • 豊富なプラグイン(拡張機能)を追加して、必要な機能を実装できる。
    • 月額利用料や販売手数料がかからない。
  • デメリット:
    • サイト構築やデザインを制作会社に依頼する必要があり、初期費用が高額になりがち。
    • サーバーの契約や管理、セキュリティ対策を自社で行う必要がある。
    • システムのアップデートや不具合対応にもコストと専門知識が求められる。

【こんな方におすすめ】

  • 独自のブランドや世界観をサイトで表現したい企業
  • 将来的に大規模なECサイトへの拡張を考えている企業
  • 自社にIT知識のある担当者がいる、または外部パートナーと連携できる企業

主なECサイト構築方法の比較

2. 継続的にかかるECサイトの「運営費用」

ECサイトは、公開してからが本当のスタートです。日々の運営には、以下のようなコストが継続的に発生します。これらのランニングコストを事前に把握しておくことが、長期的な事業計画の鍵となります。

プラットフォーム利用料・販売手数料

ASPカートを利用する場合、毎月支払う固定の「月額利用料」や、商品が売れるたびに発生する「販売手数料」がかかります。

  • 月額利用料:0円~数万円程度
    無料プランを用意しているASPもありますが、機能制限がある場合が多いため、事業規模が大きくなるにつれて、上位プランへの移行が必要になります。また、外部サービスの在庫連携・在庫管理ツールや、CRMなどのマーケティングツールを利用する場合はツール利用料が発生します。
  • 販売手数料:売上の3%~10%程度
    サービスやプランによって料率が異なります。「月額無料」の代わりに販売手数料が高めに設定されているケースもあるため、将来の売上規模を予測してシミュレーションすることが重要です。

決済手数料

お客様がクレジットカードやコンビニ払いなどを利用して商品を購入する際に、決済代行会社に支払う手数料です。これは、どの方法でサイトを構築しても必ず発生する費用です。

  • 決済手数料:売上の3%~5%程度
    利用する決済手段(カードブランドなど)や、契約する決済代行会社、ECサイトの売上規模によって料率は変動します。

ドメイン代・サーバー代

オープンソースでサイトを構築した場合に必要となる費用です。(ASPカートの場合は、基本的に月額利用料に含まれています)

  • ドメイン:年間1,000円~数千円程度
    サイトの住所となる「〇〇.com」などの費用です。ドメインの種類(.comや .co.jpなど)によって価格が異なります。
  • サーバー:月額数千円~数万円程度
    サイトのデータを保管しておく場所のレンタル費用です。サイトのアクセス数や規模が大きくなるほど、高性能なサーバーが必要になり、費用も高くなります。

人件費・外注費

ECサイトの運営には、様々な業務が伴います。これらの業務を誰が担当するのかによって、人件費や外注費が発生します。

  • 主な業務内容:
    • 商品の登録、ページの更新
    • 商品撮影、画像編集
    • 受発注管理、顧客対応(メール、電話)
    • 在庫管理、梱包、発送
    • 広告運用、SNS更新などのマーケティング活動
  • 費用感:
    • 自社のスタッフが担当する場合でも、その分の人件費(工数)をコストとして認識しておく必要があります。
    • 梱包・発送業務を外部の物流倉庫に委託(フルフィルメントサービス)する場合は、保管料や発送代行手数料などが月額数万円〜かかります。
  • 外注費の目安:
    • 商品撮影: 1商品あたり3,000〜10,000円程度
    • 画像編集: 1点あたり〜2,000円程度
    • 商品登録代行: 1商品あたり〜1,500円程度
    • カスタマーサポート代行: 月額数万円〜規模に応じて変動

広告宣伝費

開店しただけではお客様は来ません。商品やサービスを知ってもらい、興味を持って訪問してもらうためには、広告宣伝費が必要です。

  • 費用相場:売上目標の5%~20%が目安
    • 事業のフェーズや目標によって大きく変動しますが、一つの目安として売上目標に対する比率で予算を確保しておくと良いでしょう。
    • 主な広告の種類: リスティング広告、ディスプレイ広告、SNS広告、アフィリエイト広告など。

まとめ:自社に合った予算で、ECサイトを運用

ECサイトの費用はピンからキリまでです。重要なのは自社の事業規模や目的、かけられるリソース(ヒト・モノ・カネ)に合った方法を選択することです。

最後に、一例として売上目標を100万円とした場合の収益を試算してみましょう。
売上からまず売上原価を引いて「粗利」を算出し、そこから運営コストを差し引いて最終的な「営業利益」を計算します。

ECサイト運営において月商100万円を目標とした場合の収益試算表。売上原価を40%仮定、粗利(売上総利益)60万円、運営コスト合計38万5千円、営業利益21万5千円。

ECサイトの運営には、想像以上に多くのコストが発生します。しかし、これらのコストを把握し適切に管理することで、持続可能で収益性のあるEC事業を構築することが可能になります。運営には、長期的な視点が不可欠です。このコラムを参考に、初期費用だけでなく、最低でも1年分の運営費用を見込んだ上で事業計画を立て、ビジネスを成功に導いてください。

コラムニストプロフィール

中小企業診断士

中島 賢喜(なかじま・まさき)

アパレル業界からECコンサルタントまでの豊富な経験を持ち、多角的な視点でビジネスを促進します。
ブランド構築、マーケティング戦略立案と実行、マーチャンダイジング、ECサイト運用、WEBマーケティング領域において戦略的分析・運用を得意としながら、経営改善提案や業務プロセスの改善提案にも対応可能です。
お客様のビジネスに深い理解を持ち、最適な戦略で事業の成長を目指すために、経営課題と顧客のことを共に考え抜き伴走支援をすることを信条としています。