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デジタルマーケティングに取り組む上での戦略の重要性

公開日:2024/02/29

千種伸彰(ちぐさ・のぶあき)

ビジネスを進めていく上でデジタルマーケティングはなくてはならないものです。しかし闇雲に飛びつくのはおすすめできません。ヒト・モノ・カネ・情報といった経営リソースを無駄遣いしてしまったり、施策がブレてしまい効果につながらなくなるからです。デジタルマーケティングは手段です。どの手段をどのように使うのかを決めるのが戦略です。目的を達成するために、どういった戦略を取るのかを考える必要があります。ここでは、戦略を立てる流れを確認していきましょう。

下から手段、戦略、目的のピラミッド図

目的と目標を明確化

デジタルマーケティングは、ターゲット顧客に効果的にアプローチするためのマーケティング手法です。多種多様な手段があります。どの手段を使うのかの前に、何を達成したいのか、具体的な目的や目標を明確にする必要があります。

単に商品やサービスを宣伝するだけでなく、売上アップや認知度向上、顧客関係の強化など、さまざまな目的を達成するために実施されます。目的を明確にし、戦略を立てることで、その目的を達成するために必要な手段(デジタルマーケティング等)を検討することができます。

目的例

  • ブランド認知度の向上:ブランドや製品についてより多くの人に知ってもらう。
  • 顧客関係の強化:顧客との相互作用を高め、関係を深める。
  • 市場シェアの拡大:競合他社に対して優位性を築き、市場での占有率を高める。
  • 製品やサービスの普及:新しい製品やサービスを市場に導入し、受け入れられるようにする。
  • 顧客ロイヤルティの構築:長期的な顧客関係を築き、リピーターを増やす。

目標例

  • Webサイトの訪問者数の増加:特定の期間内にWebサイトの訪問者数を増やす。
  • SNSでのフォロワー数の増加:SNSのフォロワー数を特定の数まで増やす。
  • 潜在顧客層の強化:イベントやコンテンツ発信を通じて、より多くの潜在顧客を獲得する。
  • コンバージョン率の向上:Webサイト訪問者が購買や登録などの行動をとる割合を高める。
  • 顧客満足度の向上:レビューやSNSのコメント等を通じて顧客満足度を測定し、改善する。

環境分析

SWOT分析

戦略を具体的なものとするため、自社の現状把握を行います。ここではSWOT分析を紹介します。自社の強み(S)、弱み(W)、機会(O)、脅威(T)を分析します。強みや弱みは内部環境に分けられ、社内のヒト、モノ、カネ、情報などの状況を棚卸しします。続いて外部環境の動向を収集し機会と脅威に分類します。現在そして将来、大きな影響を及ぼしそうな政治、経済、社会、技術、法律、環境といったジャンルから情報収集しプラスとマイナス要因に分類します。「分析」という言葉を使っていますが、ここでは特別なことはせずに客観的で重要な情報を出していきます。

SWOT分析表

クロスSWOT分析

続いて、内部環境と外部環境をかけ合わせて、戦略の方向性を導き出します。中小企業は経営資源が乏しいこともあり、強みを発揮して、機会を捉える戦略を最初に検討するとよいでしょう。続いて自社の弱みを改善して、機会に挑戦することも考えられます。デジタルツールの活用で強みを伸ばしたり弱みを強みに変えたりすることにつながります。

クロスSWOT分析表

ターゲット顧客の特定

ペルソナ

SWOT分析などの情報も活用しながら、ターゲットを特定します。具体的には、地理的(国や地域、都市の規模など)、人口統計学的(年齢、性別、収入など)、心理的(ライフスタイル、趣味嗜好)、行動的(購買状況や購買パターン)などの変数に基づいて行います。

続いて顧客を具体化するためにペルソナ分析を実施します。理想的な顧客(ペルソナ)のプロフィールを作成します。このプロフィールには、名前、年齢、職業、年収、趣味などで構成されます。BtoCやBtoB、製品・サービスの特性によって異なりますので、項目例を参考に調整してください。さらにそのペルソナが「抱えている課題」「自社の製品を買わない理由」「見たいコンテンツ」など顧客の視点に立って考えます。

顧客(ペルソナ)プロフィールの項目例

ターゲット顧客を具体的にイメージすることで、マーケティング戦略につなげます。「誰に」、「何を」、「どのように」アプローチするのかを方向づけます。製品・サービスの訴求ポイントやキーワード、キーフレーズなど顧客視点に立ったアプローチが導き出されます。

デジタルマーケティング戦略

デジタルマーケティング戦略において、「集客」「成約」「リピート」という3つの切り口で施策を考えると整理しやすいです。これらは、顧客の購入プロセスに沿ったステージを表しており、それぞれのステージに合わせたアプローチで、効果的なマーケティングが可能になります。

顧客の購入プロセス図

集客

まず「集客」では、潜在的な顧客を引きつけることが目的です。ここでの施策は、ターゲット顧客の関心を引き、製品やサービスに対する認知度を高めることがポイントです。また、潜在顧客を見込顧客に育てていくという観点も重要です。具体的には、次のような施策を検討します。

SEO対策

検索エンジンでの上位表示を目指して、Webサイトの検索エンジン最適化(SEO)を行います。GA4やGoogle Search Consoleなどを活用してホームページの改善、重要キーワードの特定、コンテンツの質の向上を目指します。

SNS対策

Facebook、Instagram、X、YouTubeなどを活用して、ブランドの認知度を高め、ターゲット顧客との関係を構築します。

コンテンツ対策

顧客に対して魅力的で価値のあるコンテンツを作成し、WebサイトやSNSで発信します。ブログ記事、動画、インフォグラフィック(イラストや図形による説明情報)などが有効です。アイデア出しにChatGPTなどの生成AIを活用します。

Web広告

リスティング広告やSNSの広告を使用して、ターゲット顧客に直接アプローチします。

プレスリリース

新しい製品やサービスの情報を報道機関に提供し、オーソリティからの情報発信を促します。また、その情報をWebサイトに掲載するなどして、SEO効果を高めます。

成約

次に「成約」のステージでは、興味を持った顧客を実際の購入者に変換することが目標です。これを達成するためには、顧客のニーズに合った製品情報の提供や、購入プロセスをスムーズにするなどの施策が必要です。

ランディングページの最適化

訪問者を顧客に変換するために、ランディングページ(検索結果や広告などを経由して訪問者が最初にアクセスするページ)を効果的に設計します。Webサイト上に設置されたイメージやテキストを工夫して具体的な行動に誘導します。

Eメール

興味を示した見込顧客に対して、Eメールキャンペーンを実施します。情報提供や割引を通じて成約を促進します。

顧客の声の活用

顧客の声やレビューをWebサイトや説明資料に掲載し、信頼性を高めます。

リピート

最後の「リピート」では、一度購入した顧客が再度購入することを目指します。顧客ロイヤルティを高め、長期的な関係を築くためには、アフターサービスの充実や定期的なコミュニケーションなどが効果的です。

顧客関係の維持

定期的なコミュニケーションとカスタマーサポートを通じて、顧客との関係を維持します。

顧客接点の強化

リピーターに対して特典やポイントを提供することで、継続的な購入を促します。

アップセルとクロスセル

既存の顧客に対して関連商品やアップグレードを提案することで、さらなる購入を促進します。

顧客フィードバックの活用

定期的なアンケートやフィードバックの収集を通じて、サービスや製品を改善し、顧客満足度を高めます。

目的を達成するために、これら3つのステージに応じて一貫した戦略を立てることで、デジタルマーケティングの効果を最大化し、持続可能な顧客関係を築くことが可能になります。

コラムニストプロフィール

千種 伸彰(ちぐさ・のぶあき)

プロデューサー/中小企業診断士
テレビ朝日 「ニュースステーション」、フジテレビ「スーパーニュース」「ニュースJAPAN」等制作。インターネット国際映画祭、商店街TVをはじめとする Web・動画・出版等のメディアプロデューサー。動画マーケティングを活用して企業や地域の活性化に取り組む。経営戦略策定や業務効率化の支援にChatGPTを導入している。
著書『セルフキャスト!~ビジネスを加速させる動画配信』