ハイブリッド展示会とは?そのメリットや開催方法、成功ポイントを解説
公開日:2022/03/22
東京都中小企業振興公社コラム編集部
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、三密を避けるため従来のような展示会の実施が難しくなりました。オンラインへの切り替えが進み、場所を選ばず気軽に参加できるメリットをポジティブに捉える企業がある一方、顧客に直接自社プロダクト・サービスの魅力をアピールできるリアルでの展示会には及ばないという声も大きく聞かれます。
リアルとオンラインには、それぞれメリット・デメリットがあります。そのため、どちらを選んでも機会損失が生じると感じている企業も多いのではないでしょうか。
このような状況下で注目を集めているのが、リアルとオンラインで同時開催する「ハイブリッド展示会」です。本稿ではハイブリッド展示会の概要やメリット・デメリット、そして中小企業が自主開催する方法や成功させるポイントをご紹介します。
ハイブリッド展示会とは
ハイブリッド展示会とは、会場に人が集まる従来のリアルな展示会と、オンライン上で開催するバーチャルな展示会を同時並行で実施するものです。
リードタイムが長いB to B営業において、展示会は見込み客を獲得する効果的なイベントです。しかし、2020年の春以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、対面で行う展示会の開催は困難になりました。その代わりとして行われるようになったのが、インターネットを活用し、バーチャルで開催するオンライン展示会です。
オンライン展示会は、これまで場所や時間の制約でリーチできなかった幅広い見込み客にアプローチできるのがメリットです。その一方、製品に触れられなかったり、臨場感に欠けるする点はデメリットといえます。
このデメリットを補う形で生まれたのが、ハイブリッド展示会です。ハイブリッド展示会では、リアルの会場に一定数の参加者を招待し、従来型の展示会を開催すると同時に、オンライン上でもデジタルコンテンツを活用したブース出展や商談が可能になります。
リアルとオンラインの両方のメリットを享受できるハイブリッド展示会は、アフターコロナにおいてもスタンダードになるとの予測もあります。中小企業においては、大規模なハイブリッド展示会に参加することはもちろん、小規模で専門性・独自性を高めたハイブリッド展示会を自主開催すれば、新たなビジネスチャンスをつかめるかもしれません。
ハイブリッド展示会のメリット
ハイブリッド展示会に参加したり、自主開催したりするメリットは、以下の3つです。
- リアルとオンラインの強みを同時に活かせる
- 商談の機会を最大化できる
- 環境の変化に応じて柔軟な対応がとれる
順番にご説明します。
リアルとオンラインの強みを同時に活かせる
ハイブリッド展示会の最大のメリットは、リアルとオンラインのデメリットを補完し合い、同時に双方の強みを活かせることです。
リアル展示会とオンライン展示会のメリット・デメリットを見てみましょう。
開催形式 | メリット | デメリット |
リアル展示会 | ・プロダクトやサービスを実際に使って良さを体感してもらえる ・反応を見ながらその場でセールストーク | ・対象地域/対象者が限定される ・名刺やアンケートのデータ化に手間と時間がかかる |
オンライン展示会 | ・場所や時間の制約がない ・来場者のデータ分析が容易 ・制作したコンテンツを資産として残せる | ・こちらから声をかけるプッシュ型の営業ができない ・直接プロダクトやサービスを体験してもらえない |
上の表からわかるように、リアルとオンラインはトレードオフの関係にあります。
例えば、リアル展示会は製品やサービスを実際に使ってもらった後、セールストークでその良さを伝えられる一方、対応できる人数に限界があります。対してオンライン展示会は、自社プロダクトを直接手にしてもらえないものの、より多くの人にホワイトペーパー(有益な情報を提供するWeb上の資料)・各種データやデモ動画といった形で情報を提供することが可能です。
また、リアル展示会では直接会話をして多くの名刺やアンケートを集められますが、データ化に手間と時間がかかります。その点、オンライン展示会はリアルタイムの反応はわからないものの、どのページが多く見られたかなどデジタルデータを残せるため分析までスムーに進められます。
つまり、リアルとオンラインで同時開催するハイブリッド展示会なら、それぞれのデメリットを補完しながら、双方のメリットを享受できるのです。
商談の機会を最大化できる
ハイブリッド展示会は、商談の機会を最大化させる効果もあります。
従来のリアル展示会は開催施設・期間が決まっており、ビジネスチャンスは展示会期間中のみでした。そのため、決められた施設・期間において、限られたスペース・人員で自社プロダクトの魅力を最大限伝える努力が求められます。
一方、ハイブリッド展示会では、出展者がオンラインで参加予定者のデータを集めたり、顧客に出展するプロダクト・サービスのホワイトペーパーや各種データ・デモ動画を閲覧したりしてもらうことが可能です。事前に内容をチェックした顧客が自社プロダクト・サービスに強い関心を持った場合、「実際に会場に足を運んでみよう」という動機付けになるかもしれません。また、顧客・出展者双方が事前情報を得ることで、効率的に商談を進められるでしょう。
ハイブリッド展示会は、場所や時間の制約が省かれることで、より多くの顧客にアプローチできるようになりました。加えて、多様なコミュニケーションが可能になったため、マッチングの精度までも向上できるようになったのです。
環境の変化に応じて柔軟な対応がとれる
ハイブリッド展示会には、環境の変化に応じて柔軟な対応がとれるというメリットもあります。
展示会をハイブリッドで実施することを前提に準備を進めていれば、新型コロナウイルス感染症の流行状況に応じて「リアル展示会は中止、オンライン展示会のみ開催」といった切り替えが容易にできます。展示会の準備に要した手間と時間を、無駄にしなくて済むのです。
予期せぬ新型コロナウイルス感染症の流行で、危機管理の大切さが身に染みた企業も多いでしょう。今後も、ビジネスを取り巻く環境の予期せぬ変化に対応するため、リアル・オンラインのどちらでも顧客にアプローチできるような体制作りが中小企業にも求められるのです。
ハイブリッド展示会のデメリット
ハイブリッド展示会はリアルとオンライン双方のメリットを享受できますが、それぞれの準備が必要になる点はデメリットです。
リアル展示会で配布するチラシや資料・ポスターなどを用意しつつ、オンラインで配信するデモ動画やホワイトペーパーなどの制作も同時に進めなければなりません。また、どちらのコンテンツを制作するにも、工数や時間はもちろんコストもかかります。
ただ、制作したコンテンツなどは有形資産として残るため、長く活用することができます。
中小企業がハイブリッド展示会を自主開催する方法
ここからは、中小企業がハイブリッド展示会を自主開催する方法をご紹介します。ハイブリッド展示会では、リアル側とオンライン側に分けた2パターンの準備が必要です。
まずリアル側では、招待する顧客の個人情報を入力して管理する「来場登録用システム(レジストレーションシステム)」を導入します。システムを導入すると、申し込み用のWebフォームの作成や受付に便利なQRコード付きの招待状の送信、来場者データの集計などが容易に行えます。
一方、オンライン側の場合は、リアル側と同様に顧客の情報を入力し、特設サイトにログインできるIDとパスワードを発行します。さらに、動画配信機能やチャット機能・名刺交換機能などが備わった、展示会開催用システムの導入も必要です。
ハイブリッド開催に対応したオン・オフ統合型の専用システムを導入すると一元管理が可能になるため、導入を検討してみるのも良いでしょう。
中小企業がハイブリッド展示会を成功させるポイント
中小企業がハイブリッド展示会を成功させるポイントは2つあります。
- リアルとオンラインの比率はリソースを考慮して決める
- Webコンテンツを充実させ、顧客の育成体制を整えておく
順番に解説します。
リアルとオンラインの比率はリソースを考慮して決める
ハイブリッド展示会はリアルとオンラインの同時開催となるため、リソースの配分を考えなければなりません。潤沢な予算と人材があるのであればその必要はありませんが、予算や配置できる人員に限りがある場合には、どちらに比重を置くかを検討します。
基本的には、リアルの割合が高いほどより広い会場と多くの人材が必要になり、それに伴い予算も大きくなるのが一般的です。どのくらいの人や予算をリアルにかけたいかによって、オンラインに回せるリソースは決まってきます。
ただし、オンラインにもシステムを導入するコストや、コンテンツを制作する人的リソースが必要です。何にどれくらいの費用がかかるのかを洗い出した上で、最も効果的なバランスを検討しましょう。
顧客の育成体制を整えておく
ハイブリッド展示会は開催して終わりではなく、そこからがスタートです。リードタイムの長いBtoB営業において、展示会後すぐに契約に至ることはあまりありません。それは、一般的に展示会に訪れる顧客は情報収集の段階であることが多いためです。
ハイブリッド展示会は、あくまで“見込み客の獲得”と割り切り、そこから顧客を育成する体制を整えておくことが重要です。ハイブリッド展示会で集めた顧客データを活用し、メールマーケティングを実施したり、比較検討段階に進んだ時のためにWebコンテンツを充実させる等して、顧客が必要な情報を継続的に提供できるようにしておきましょう。
なお、ハイブリッド展示会で獲得した見込み客と継続的にコミュニケーションし、ニーズを顕在化させていくには、マーケティングオートメーション(以下MA)を活用するのが効率的です。MAには、顧客情報の一元管理・サイト閲覧履歴やメール開封率の把握・メールマガジンの配信等の機能があり、見込み客の行動に応じた情報提供が可能になるため、導入を検討してみると良いでしょう。
ハイブリッド展示会を開催してビジネスチャンスを広げよう
ハイブリッド展示会の開催により、リアルとオンラインそれぞれが有するデメリットを補完し合い、双方のメリットを享受できます。ツールを導入するために相応の労力・コストがかかりますが、成功すれば商談の機会を最大化させることが可能です。
中小企業がハイブリッド展示会を成功させるには、限られたリソースをリアルとオンラインにどのように配分するかをよく検討ことが肝要です。また、ハイブリッド展示会で獲得した見込み客の獲得確率を上げていくためには、展示会後に顧客を育成する体制を整えることも求められます。
本稿を参考にしていただき、是非ハイブリッド展示会にチャレンジしてみてください。