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中小企業こそ取り組むべき「デジタルPR」—第三者評価を生む“信頼の設計”と、SNS活用—

公開日:2026/02/25

竹上創

1.「PRとは何か?」を正しく理解することから始めよう

まず、「PR」について理解しましょう。PR(Public Relations)は、「広告宣伝」と混同されがちですが、異なります。PRのシンプルな例は、テレビや雑誌(昨今ではwebメディアなども)などに「ニュース」や「記事」として取り上げられることです。テレビのバラエティ番組や情報番組で「美味しいお店」「面白い新商品/新サービス」などで取り上げられることも含まれます。

これらは、メディアが「これは面白い」「これはニュースになる」と判断して取り上げるものです。したがって取り上げられる側に費用はかかりません。

広告は、企業側がメディアにお金(広告費)を払って、自社が作った広告を掲載(あるいは放映)してもらいます。

皆さんは、メディアの記事と企業の広告のどちらを信じますか?

例えば「当社の製品は優れた技術を活用しています(広告)」と「A社の製品は優れた技術を活用している(記事)」という2つです。多くの方は、記事の方を信じると思います。何故なら、広告は「企業がお金を払って、自分が伝えたいことを伝える」もの、記事は「第三者(メディア)が価値があると判断して伝える」ものだからです。

この「第三者が評価している(信頼度)」点が、PRと広告の決定的な違いです。

またPRはお金(制作費、広告費・掲載料)もかかりません。

一方、PRは、メディア(第三者)がコンテンツ(記事や番組)を作るので、必ず記事化されるとは限りませんし、またその内容もメディアに依存します(企業が思った通りのコンテンツにしてくれるとは限らない)。

広告とPRの中間のものとして、「記事体広告(タイアップ広告)」というものもあります。これは、企業がお金を払って、「記事風」なものを作ってもらうものです。これは実質的には「広告」と言えます。

比較項目広告PR(第三者評価)
情報の発信者企業(広告主)メディア(第三者)
受け手の信頼度低~中
成果の出方即効性不確実
コスト有料無料
内容企業がコントロールメディアがコントロール
メディア掲載必ず掲載される不確実

2. PR活動の基本

①プレスリリース

PRのスタートは多くの場合、「プレスリリース」です。メディアに取り上げてもらうことを目的に、「新製品、新サービス、イベント、新たな発明、等々」を2~4ページ程度にまとめたものです。これを各種メディアに送ることによって、メディアに認知してもらいます。

②メディアへのフォロー

しかしメディアには、日々大量のプレスリリースが送られており、その中で目に留めてもらうことは至難の業です。そのため、プレスリリースを送った後に(あるいは送る前に)編集者・記者・ライターなどに、「〇〇社の画期的な新商品のプレスリリースを送りました。□□なところが素晴らしいですし、そちらのメディアにピッタリのニュースです」というように、直接コンタクトを取ります。

「プレスキャラバン」といって、直接編集者・ライター達に説明に行く場合もあります。

こうした活動によって、より記事化されるように働きかけていきます。

プレスカンファレンス(記者発表会)を実施する場合もあります。
※記者発表も、その実施前にメディアに声をかけて、来てもらうように働きかけます。

こうして、テレビ・新聞・雑誌・webメディアなどに「記事」として取り上げられ、先に述べたような、広告とは違う効果を上げていきます。

3. 「PR」と「デジタルPR」は何が違うのか

ここまでの説明は、従来のPRです。つまり、「メディアに取り上げてもらう」ことを目的とした活動です。昨今は、メールでコンタクトを取ったり、プレスリリースを電子配信したり、媒体もwebメディアが増えたり、いわゆる「デジタル化」が進んできましたが、これらのデジタル化は、従来の方法論の一部がデジタル化しただけです(紙メディア→webメディア、ファックス→電子配信、など)。

現在は、これらの従来の方法論に加えて、SNSやオウンドメディア(自分自身の持つメディア。自社webサイト、ブログ、noteなど)などの自社発信が、PRの大きな役割を占めるようになってきました。

「デジタルPR」には定まった定義はありませんが、現在は、冒頭に説明した「従来型PR」に加えて、こうしたSNSなどの「自社によるデジタル発信」も、デジタルPRに含まれて説明されることが一般的です(デジタルPRに含まれないのは、例えばテレビCMや新聞広告、駅の看板などの、アナログ広告です)。

「デジタルを使った広告」も「デジタルPR」と言われる場合もありますが、先に述べたように「広告」はPRとは根本的に異なるので、本稿では除外します。

昨今は特に「SNSの活用」が注目されているので、SNSを例にとって話を進めます。SNSとは、FaceBook、X(旧ツイッター)、Instagram、TikTokなどを指します。

SNSの特徴

  • 更新が容易
  • 即時性が高い
  • 頻度高く発信できる(毎日でも投稿できる)
  • 投稿が蓄積される(過去の投稿も容易に見られる)
  • 拡散される可能性がある(バズる可能性)
  • 一般ユーザー(既存顧客、潜在顧客を含む)との距離が近い / 双方向性がある

4. よくある誤解。「SNS発信=(従来型)PR」ではない。

よくある誤解が、「SNSで発信している=PR活動ができている」と思ってしまうケースです。

冒頭の「PRの説明」を思い出してください。本来のPRは、第三者のメディアに取り上げてもらうことです。SNSの発信は、第三者メディアではありません。したがって、従来型PRの最大のメリットである「信頼の獲得」は得られません

5. 「SNS発信」の効果

一方でSNSには、以下のような効果があります。
SNS独自のメリットと、従来型PRに繋がるメリットの2つに分けて見てみましょう

SNS発信のメリット

独自のメリット

  • 企業の“姿勢”や“考え方”を伝えやすい
  • 親しみを持ってもらいやすい
  • 継続的に情報を蓄積できる
  • 小さなニュースを日々打てる
  • 拡散する(バズる)可能性がある

 従来型PRに繋がるメリット

  • 記者やインフルエンサーの目に止まる「きっかけ」になる
  • プレスリリースの簡易版として機能することがある

「中の人」という言葉がありますね。従来、企業からの発信は、―SNSに限らず―「真面目、固い、没個性、会社代表」というスタンスでしたが、ある大企業のSNSが、「個人の日常ツイートっぽい、緩い、ユーザーとの積極的なやりとり、個人のキャラクターを出す」などのスタイルで、企業公式アカウントの1つの在り方を確立しました。こうしたSNSの運営者は、親しみを込めて「中の人」と呼ばれるようになりました。

こうしたスタイルによって、企業に親しみを持ってもらう、長いファンを作ることに成功しました。

これは従来型のPRとは全く異なる機能です。もちろん、「広告宣伝」とも異なる機能ですね。
現在では、こうしたSNSの役割も重要なPR活動と言われています。

B2CでもB2Bでも成果を上げることができます。
「中小企業 SNS 成功例」などで検索すると、様々な事例を見つけることが出来ます。

パン屋さんが、商品(パン)だけでなくスタッフの雰囲気を交えて投稿して親近感を形成したり、B2B向けの特殊な機械メーカーが専門性を可視化したり、あるいは同じくB2B向けの企業が動画で製品の使い方をわかりやすく説明したり、など。
是非、実際にアカウントにアクセスして様々なアプローチ・具体例を確認してみてください。

6. 「SNS発信」からのPR効果

「SNS発信は従来型のPRではない」が「(現在では)こうしたSNSの役割もPR活動と言われています」と書きました。

後者の役割やその方法論については、既に様々なところで論じられています(「SNSの活用方法など」)ので、前者について説明していきます。

繰り返しますが、従来型のPRとは、「メディア(第三者)に取り上げてもらう」ことです。

SNS自体は企業の発信のため、信頼の源泉にはなりませんが、「SNS → 記者の目に留まる → 記事化される」という流れは今のPRでは1つの型になっています。よってSNS発信は、従来型PRのきっかけをつくる活動としても位置づけることができます。

7. 中小企業のための「デジタルPRの基本ステップ」

ここからは、「従来型のPR」効果を上げるための実践できる“型”を紹介します。予算が限られる中小企業でも、十分に効果を出せる内容です。

なお、「中小企業は記事・ニュースなどにはならない」と思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことは決してありません。いきなり全国紙に取り上げられることは少なくても、全国紙の地方版や、地域のメディアなどに取り上げられることは十分にあります。

また、webメディアやwebメディアに寄稿するライターが急激に増加したことで、以前に較べて記事化される機会は大幅に増えています。

皆さんも、無名企業のニュースを多々目にしているはずです。

私事ですが、エアウィーヴという寝具の企業で働いていました。今でこそ浅田真央さんというアンバサダーなどのお陰で知名度は上がりましたが、地方の中小企業であり、当初は認知度もマーケティング予算も無く、唯一実施していたのが、「PR活動」でした(PRはお金がかからない)。無名の中小企業だったエアウィーヴの知名度は、当初PR活動によって広まったのです。

STEP1:ニュースの種になる「発信素材」を洗い出す

PRで大切なのは、「何をニュースにするか」です。多くの企業が「うちにはニュースなんて無い」と言いますが、実は多くあります。

ニュースになりやすいテーマ例

  • 新商品・新サービスの発表
  • 地域課題の解決につながる取り組み
  • 社員や技術者のストーリー
  • 工場見学・製造工程の公開
  • 他社・大学・行政との協業
  • 自社で行った消費者調査・市場調査
  • 地域イベント・ワークショップの開催
  • 新店舗のオープンや移転
  • サステナビリティ関連の取り組み

もし材料がなければ、小規模でも活動をつくる(ネタを作る)ことでニュースは生まれます。

STEP2:どの相手に届けたいかを決める / その相手に刺さるプレスリリースを作る

同じネタでも、相手によって説明の仕方が変わります。

新製品が出来たとして、新聞社で言えば、例えば経済部には「経済ニュース(こんな企業からこんな新製品が出ました)」、社会部には「社会ニュース(こんな社会的なトレンドがある中で、こんな新製品が出ました)、といった説明になります。

あるいは、web媒体でも、流行を追いかける媒体、ガジェットを追いかける媒体、デジタル関連ニュースを追いかける媒体、女性向けの媒体等々、関心が異なります。

これらの異なる関心に合わせた説明・発信が必要になります。

プレスリリースは、基本1種類しか作りませんが、先に述べたフォローの際や、もし直接説明ができる場面では、上記のような「相手が関心を持ちやすい説明」をします。

テレビの場合は、相手が「どのような(面白い)映像が撮れるか」をイメージできるような説明が必要になります。

STEP3:発信する / フォローする

① プレスリリース配信

プレスリリースについては既に触れました。媒体に刺さる内容、刺さる説明、そしてフォロー、が重要になります。現在では、PR TIMESなど、プレスリリースを安価に発信できるプラットフォームもあります。

② SNSで“ニュースのタネ”を日々発信

製造工程の様子、社長の考え方、開発の裏側など、
企業の体温が伝わる情報を積み上げる。
SNSでは、先に説明した、①「従来型PRに繋がる活動」と、②「SNSによる直接的な告知活動」の2つを意識すると良いでしょう。

③ オウンドメディア(自社webサイト・ブログ・note)で深掘り記事を作る

SNSでは伝えきれない詳細を一次情報として載せる。
メディアが引用しやすい“根拠情報”として機能する。

8. まとめ

第三者の評価が信頼を生む

第三者評価ではない
従来型媒体とは異なる効果がある + 従来型PRの発火点となる役割がある

「SNS × プレスリリース × オウンドメディア」のかけあわせ

PRはコストがかかりません。(メディアに掲載されれば)広告に較べて信頼度が圧倒的に高く効果も上がります。また、SNS活用においては、媒体掲載とは別の効果も期待できます。

是非PRの活用を考えてみてはいかがでしょうか。

コラムニストプロフィール

竹上 創(たけがみ・はじめ)

ユニクロのネット通販、アンダーアーマーのマーケティング、エディー・バウアーのオムニチャネル、エアウィーヴのマーケティング全般などを歴任。リアル/デジタルマーケティング、B2C/B2B、EC/店舗販売/法人営業の知見を持ち、メーカー、小売り等の実務を実担当者として熟知した上でのサポートを提供します。個別の方法論(SNS、SEOなど)の前に重要不可欠な「戦略」の見究めから始め、営業や企画部門との連携まで含めた支援を提供します。