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開店しただけでは売れない!ECサイト3つのハードルとは

公開日:2025/10/01

中島賢喜

ECサイトを立ち上げたものの、「期待していたほどアクセスがない」「お客様は来てくれるのに、なぜか商品が売れない」といった悩みを抱えてはいませんか?

ECサイトの開設は、あくまでスタートラインです。ビジネスとして成長させていくためには、お客様が商品を認知し、購入し、ファンになってくれるまでに存在する「ハードル」を越えなければなりません。

このコラムでは、ECサイトを成長軌道に乗せるために越えるべき「3つのハードル」を解説します。ひとつひとつのハードルを理解し、取り組みの精度を向上させることで継続的に売上を生み出すサイトへと育てていきましょう。

1. 集客のハードル:知られていないお店には誰も来ない

ECサイトは現実の店舗と違い、偶然通りかかったお客様が立ち寄ってくれることはありません。どれだけ素晴らしい商品やこだわりのサイトを作っても、その存在を知ってもらえなければ売上は生まれません。まず最初に直面するのが「集客のハードル」です。

「お客様は待っていても来ない」という前提に立ち、こちらから積極的に働きかけることが重要です。集客施策は効果が出るまでの期間によって、短期施策と中長期施策に分けて取り組みましょう。

短期(1~3ヶ月)の無料施策例、既存顧客への告知・SNS投稿。中長期(3~6ヶ月)の無料施策例、SEO対策・継続的なSNS運用。短期の有料施策例、検索・ディスプレイ・動画広告(Google・Yahoo!)やSNS広告(Meta・Line・X・TIkTokなど)。中長期の有料施策例、インフルエンサー活用・記事広告。

短期施策:届けたいお客様に直接アプローチ!Web広告

「すぐにでもお客様を呼び込みたい」という場合に有効なのがWeb広告です。広告費はかかりますが効果が早く、狙ったターゲットに的確にアプローチできるのが大きなメリットです。

「いきなり大きな予算をかける」必要はありません。まずは月3〜5万円程度の小さな予算から始め、反応の良いキーワードや広告文を見つけていきましょう。広告費用対効果(ROAS)は最低でも300%(広告費1万円で売上3万円)を目安に、データを見ながら改善を重ねていくことが成功の鍵となります。

中長期施策:検索エンジンからの集客(SEO)

お客様が何かを探す時、まず利用するのがGoogleなどの検索エンジンです。例えば、「母の日 プレゼント おしゃれ」と検索した時に、あなたのサイトが上位に表示されれば、購入意欲の高いお客様を自然と呼び込むことができます。

商品名だけでなく、お客様が困った時に検索するキーワードを意識したコンテンツ作成も重要です。例えば、オフィス家具を扱う企業なら「テレワーク 椅子 腰痛対策」といった悩み解決型のキーワードを狙うことも検討できます。

SEO集客は専門的な知識を必要とする領域でもあるため、専門家の伴走支援を活用しながら取り組むことも効果的です。

中長期施策:ファンとの繋がりを作るSNS活用

Instagram、Facebook、TikTok、XなどのSNSは、商品の世界観を伝え、お客様と直接コミュニケーションをとることで、ファンを育てるための大切なツールです。

「商品の宣伝」だけではなく、お客様のニーズをくみ取り「価値のある情報発信」を心がけて発信することが重要です。商品の使用例、業界の豆知識、お客様の声の紹介など、お客様にとって有益な情報を投稿するように心がけましょう。ユーザーの反応をデータを検証しながら投稿の改善をしていきましょう。

集客のハードル:あなたのサイトは大丈夫? ターゲット顧客が検索しそうなキーワードを意識していますか? 商品に関連するお役立ち情報をブログなどで発信していますか? 小額からでもWeb広告の出稿を検討していますか? ターゲット層のニーズを意識してSNSを活用していますか?

2. 購入のハードル:魅力が伝わらなければカゴに入らない

集客施策の効果でお客様がサイトに訪問してくれたとしても安心はできません。次のハードルは、訪れたお客様に「買いたい!」と思ってもらい、購入ボタンを押してもらう「購入のハードル」です。
せっかく来てくれたお客様を逃さないための「おもてなし」と「分かりやすさ」が問われます。EC購入の60%以上といわれるスマートフォン経由での購入体験を意識してサイトとページの最適化を図りましょう。

お客様の心を掴む「売れる商品ページ」とは?

お客様が最終的に購入を決める場所が商品ページです。商品の魅力が最大限に伝わる工夫をすることが重要です。

写真がすべて – お客様は商品を直接手に取ることができません。そのため写真で購入すべきかを判断します。目安として最低でも5枚以上の商品写真(正面・側面・使用イメージ・サイズ感がわかるもの)を用意しましょう。

説明文は「未来の体験」を語る – 商品の仕様を羅列するだけではお客様の心は動きません。その商品を手に入れることで、お客様の生活が「どう豊かになるのか」を語りかけましょう。

レビュー(口コミ)は「信頼の証」 – 初めてのお店で買い物をする時、お客様は不安を感じるものです。実際に商品を使った他のお客様の声は、不安を取り除き安心感を醸成し、購入を促進するための重要なポイントです。

スムーズな購入体験がカギ!サイトの使いやすさ

商品ページが魅力的でも、購入手続きが面倒だったり分かりにくかったりすると、お客様は途中で諦めてしまいます。これを「カゴ落ち」と呼びます。
カゴ落ちを防ぎ、スムーズな購入体験を提供することが重要です。

商品ページ・カート・会員登録・決済・完了のステップごとに離脱防止ポイントと具体的な対策を示した表

信頼性の向上:安心して買える環境作り

自社ECでは「この会社は信頼できるのか?」という不安を解消することが購入率向上のポイントのひとつです。会社概要、特定商取引法の記載、プライバシーポリシーはもちろん、会社の様子がわかる写真などを活用し信頼度を向上させます。

購入のハードル:あなたのサイトは大丈夫?商品の写真は、魅力が伝わるものが5枚以上ありますか?お客様の声(レビュー)は集まっていますか?スマートフォンでサイトは見やすいですか?購入完了までのステップは分かりやすいですか?

3. リピート・ファン化のハードル:「一見さん」を「常連さん」に育てる

商品が売れて一安心ではありません。ビジネスを安定的に成長させるためには、一度買ってくれたお客様に二度、三度と繰り返し購入してもらうことが何よりも重要です。これが最後の「リピート・ファン化のハードル」です。
新規顧客の獲得には、リピーター維持の5倍のコストがかかるとも言われています。お客様を「一見さん」で終わらせず、あなたのブランドの「ファン」へと育てていきましょう。

購入後の「開封体験」を演出

お客様との関係づくりは、商品がお客様の手元に届いてから始まります。ECサイトでは、商品が届いた瞬間が唯一リアルな接点です。この瞬間に「この店で買ってよかった」と思わせる「開封体験」を演出しましょう。

商品が届く瞬間は、お客様のブランド体験において重要なタッチポイントです。丁寧な梱包、メッセージカード、ブランドロゴ入りの包装紙、チラシやサンプル品の同梱など、「開封体験」を意識した工夫で印象に残る配送を心がけましょう。配送の早さも重要です。注文から発送まで2営業日以内を目標に、発送通知やお届け予定日の連絡を確実に行いましょう。

「また買いたい!」を後押しする仕組み作り

お客様が「またこのお店で買おうかな」と思った時に、再来店を動機づける仕組みも有効です。購入金額に応じたポイント還元、会員限定割引、誕生日特典など、お客様が「また利用したい」と思える特典を用意しましょう。

ポイント還元率や特典内容は収益を圧迫しない範囲で設定し、効果を見ながら最適解を見つけていきます。

お客様との繋がりを維持するコミュニケーション

一度きりの関係で終わらせないためには、継続的なコミュニケーションが不可欠です。購入後も関係を継続できるメルマガやLINE公式アカウントなどの仕組みを活用し、新商品情報やお得な情報を定期的に配信しましょう。

商品の使い方や手入れ方法、トレンド情報など、お客様にとって価値のある情報と、商品紹介をバランス良く配信し、信頼関係を築くことを目指します。

口コミ・紹介の仕組み化

商品を購入いただいたお客様からの口コミは、最も信頼性が高く、費用対効果の優れた販売促進方法です。購入後のフォローメールでレビューを求めたり、SNSでの投稿を促したりする仕組みを検討しましょう。

リピート・ファン化のハードル:あなたのサイトは大丈夫?商品を送る際に、「開封体験」を意識していますか?商品到着後、フォローのメールなどを送っていますか?メルマガやLINEで、お客様に役立つ情報を届けていますか?ポイントやクーポンなど、再購入を促す仕組みがありますか?

まとめ:3つのハードルを一つずつ乗り越え、成長するECサイトへ

本コラムでは、ECサイト運用で越えるべき3つのハードル、「集客」「購入」「リピート・ファン化」について解説しました。

  1. 集客のハードル
    広告やSNS、SEO対策でお店の存在を知ってもらう。
  2. 購入のハードル
    魅力的な商品ページと使いやすいサイトで「買いたい」と思わせる。
  3. リピート・ファン化のハードル
    購入後の体験とコミュニケーションでファンになってもらう。

これら全てを一度に完璧にする必要はありません。できることから一つひとつ改善を重ねていくことが大切です。
各ハードルには専門的な知見を必要とすることもありますので、可能であれば専門家の伴走支援を活用しながら成長へのハードルを越えていくことも有効な選択肢の一つです。

限られたリソースの中で成果を出す必要があるため、今回ご紹介した施策の中から、自社の状況に合わせて優先度を決めて実行することで、ECサイトの成長を実現できるはずです。

コラムニストプロフィール

中小企業診断士

中島 賢喜(なかじま・まさき)

アパレル業界からECコンサルタントまでの豊富な経験を持ち、多角的な視点でビジネスを促進します。
ブランド構築、マーケティング戦略立案と実行、マーチャンダイジング、ECサイト運用、WEBマーケティング領域において戦略的分析・運用を得意としながら、経営改善提案や業務プロセスの改善提案にも対応可能です。
お客様のビジネスに深い理解を持ち、最適な戦略で事業の成長を目指すために、経営課題と顧客のことを共に考え抜き伴走支援をすることを信条としています。