スコットランド発祥のシェニール織に日本のからみ織技法を取り入れ、独自に進化した「再織(さいおり)」とも呼ばれる製法によって紡ぎ出される同社製品は丈夫で肌触りがいい。「デジタル施策でもっと多くの方に知ってもらいたい」と語る髙橋さん。
※写真 代表取締役 髙橋 秀明
「アーンジョー(Enjeau)®」をはじめとするブランドにて国産シェニール織の婦人雑貨などを企画・販売するシーエスワールド株式会社。公社のハンズオン支援(アドバイザーが専属で継続的に支援)を受け、リブランディングによるEC事業の売上拡大を目指す。ブランド戦略を再構築し、Webサイト・自社ECサイトの改修およびECモールの改善を図る。
■本事業に申し込んだ背景■
国産シェニール織のメーカー
当社は「アーンジョー」ブランドにて国産シェニール織のハンカチやコスメポーチなどを企画・製造・販売しています。シェニール織は色鮮やかで肌触りが良く、高い吸水性と耐久性を持つことが特徴です。エレガントな花柄のほか、犬やイニシャルなど独自の色柄を豊富に揃え、ミドル世代の女性を中心にギフトとしてもご好評をいただいています。全国の百貨店などで販売していますが、店頭でご覧いただける商品はごく一部のため、7年前に自社ECサイトを立ち上げました。
EC事業の売上拡大を目指して支援を申請
自社ECサイトへの誘導方法としては、商品に同梱するしおりに二次元バーコードや検索ワードを掲載するなどしています。また、楽天やAmazonなどのECモールにも出店していますが、EC事業の売上は会社全体の1割ほどです。EC事業のてこ入れと、店頭販売の先行きを見据えた今後の販売戦略を思案していた時に、公社事業のことを知ってハンズオン支援を申請しました。
シェニール織のハンカチや婦人雑貨などは、肌触りや耐久性、デザインが魅力。写真は、輝く星のように小花を散りばめたデザインの『ステラ』。コスメポーチはフォーマル時のミニバッグとしても使える。
■アドバイザーによるハンズオン支援の内容■
リブランディングによるWeb改革
支援開始後、販売状況や商品の魅力について説明し、2027年度中にはECの売上を現在の約3倍に伸ばしたい旨を相談しました。アドバイザーとともに既存の自社ECサイトと各ECモールのショップページを検証ツールで分析し、そのデータをもとに改革案を協議しました。その結果、目標に設定したのは「ブランド戦略の再構築によるEC売上の向上」です。まずは「シェニール織を知らない方々に魅力をしっかり伝えるには何が足りないか」を分析し、Web上に情報を補完することからはじめ、その後ECサイトの改修を進めながらリブランディングを図る計画です。
ペルソナとカスタマージャーニーの再設定
リブランディングにおいては、原点に立ち返って、ターゲット顧客のペルソナ設定から着手しました。具体的には「松平美鈴さん(仮名・44歳)」の、家族構成や1日の行動スケジュールを設定し、彼女が百貨店で当社製品を偶然手に取り、購入に至るまでのカスタマージャーニーマップも作成しました。その上で、私が「美鈴さん」に店頭で直接伝えたい商品の魅力などを、Web上でどう表現するかを検討していきました。
「うちの商品の魅力は、合宿でもしないと語り尽くせない」と熱弁する髙橋社長。パイル織物の街・和歌山県高野口町で発展してきた日本製シェニール織を継承するためにも認知向上と売上拡大を目指す。
■具体的な販路開拓への取り組み■
時流に沿ったWebデザインにて価値を表現
ブランディングの専門家派遣も利用して、「アーンジョー」のブランドコンセプトを再確認しました。「日本製」「伝統的な技法」「プリント技法では表現できない色彩」「手触りや高い耐久性」などの魅力を訴求していくほか、これらを総合したキャッチコピー「上質で美しい日本製のシェニール織」を創りました。アドバイザーに相談しながら、このコピーをもとにイメージカラーやフォントを決定し、Webサイトを改修していきました。何分、約20年前に作ったサイトですから、「うちのHPダサいな、何とかしなくては」と思っていました。外部の委託先によるデザインコンペを実施し、2025年3月頃の公開に向けて動いています。併せて自社ECサイトも統一感のあるデザインに刷新するほか、各ECモールのショップページにも反映させていきます。
BtoB販路拡大で認知向上・EC集客の機会を広げる
11月には公社が主催する「東京くらしのフェスティバル」に出展しました。展示会を通じて、卸商社や通販会社との商談が進行中です。今後はカタログの通販会社との提携も視野に入れています。百貨店と異なる購買層に広く認知いただき、ECサイトへの集客の足がかりとなるよう、デジタルとアナログの両面からアプローチしていきます。
■支援の感想と今後の展望■
EC事業を店頭販売と並ぶ売上の柱に
現在はアクセス数とCVR(コンバージョン率)の向上を目指したECモールの改善を遂行中です。Web広告にも積極的に取り組みましたので、今後の効果に期待しています。各施策の効果検証が課題となりますが、今後アドバイザーからアクセス解析ツールなどの使い方を教えていただく予定です。
アドバイザーは、商品の魅力や販売状況、売上目標、デジタルのレベル感、リソースなど、当社のことを理解した上で、的確で現実的な提案をしてくれました。今回、ブランド戦略の再構築としてペルソナ設定などマーケティングの基礎の部分から改めて取り組みましたが、この過程でEC以外の課題や改善点も浮き彫りになり、今後の事業計画を考える上で原点回帰できた非常に良い機会となりました。体制強化を図りながら、EC事業を店頭販売と並ぶ売上の柱に育てていきます。
「髙橋社長の商材への大きな愛とデジタル担当者の機動力が強み」
髙橋社長の商材に対する愛と情報量が同社の大きな強みです。伝えたい商品の魅力が無限にあるので、あとは社長の「引き出し」から訴求方法を導き出すだけだと思います。各EC改修を実行したのは、ECサイトを担当する店長さんです。打ち合わせ中の改善提案を即時に反映してくれますので、その場で実装確認ができスピーディに施策を進められました。WebサイトとECサイトの全面改修は同社にとって大きな挑戦です。今後もしっかり伴走していきます。
※本記事は、2024年12月時点の情報です。
企業情報
企業名 | シーエスワールド株式会社 |
所在地 | 東京都豊島区南池袋2-14-12 山口ビル3F |
設立 | 2000年8月 |
事業内容 | 婦人雑貨品卸販売・手織教室運営 |
資本金 | 1,900万円 |
掲載の製品・サービス等について公社が保証するものではありません。