靴の修理依頼で多くの方が来店する哲学堂靴修理店。折田店長は難易度の高い修理にも、見本を見せながら修理方法や仕上がりの日時、費用などを丁寧に説明する。技術面だけでなく、誠実な接客姿勢も同店の大きな強み。
※写真 哲学堂靴修理店 店長 折田 康之
主に男性用高級靴の修理・メンテナンスを手がける哲学堂靴修理店。持ち込みと配送修理の売上拡大を目指して、2023年度から公社支援でデジタル施策に取り組み、1年目はコンテンツマーケティングで大きな成果を上げた。急激な受注拡大に対応しながら、今年度は技術力を訴求する新コンテンツの設置、LINEの活用などにより、さらに新規客・リピート客獲得の施策を強化している。
■本事業に申し込んだ背景■
支援1年目はブランド別の修理記事で売上拡大
当社は男性用革靴を中心に革製品の修理を手がけています。銀座の高級靴店とも修理提携をしており、技術力と充実した設備が強みです。
コロナ禍や革靴需要の減少、修理材の高騰をきっかけに経営改善が急務となり、店舗への持ち込み修理と配送修理の拡大を目指し、ハンズオン支援(アドバイザーが専属で継続的に支援)にてデジタルマーケティングに取り組みました。1年目はWebサイトの改修に取り組み、配送修理ページの作成やUIの改善、またコンテンツマーケティングとしてブログ記事の作成にも注力しました。結果、「リーガル」や「レッドウィング」などブランド別の修理記事で検索結果での上位を獲得でき、大幅に閲覧者が増えたことで、サイトで当店のことを知った近隣の方や都外から高級革靴を持ち込まれる方、Webサイトのフォームを経由した配送修理の依頼も増加し、2023年度は前年を大幅に上回る売上を達成しました。
Webサイトは来年度も効果検証を行いながら改修に取り組んでいくという。技術力をアピールするブログを強化するほか、SNSへの動画の投稿も計画。
■アドバイザーによるハンズオン支援の内容■
ブログの新テーマと新規受注の拡大が課題
今年度はブログの更新を継続しながら、さらに動画の投稿も含めたSNSの運用も計画しています。SNSからダイレクトに受注を獲得するのは難しいと思いますので、新規のターゲット顧客をWebサイトに誘導する手段の一つと考えています。まずはアドバイザーと一緒にGA4(Googleアナリティクス4)などの解析ツールを活用し、データの詳細をチェックしたところ、既存のブログ記事が引き続き読まれている一方で、新たな切り口によるブログ記事の必要性が浮き彫りになりました。また、問い合わせ対応をよりスムーズにする施策などの提案をいただきました。
最初に取り組んだのは新たな切り口によるブログ記事の制作です。靴磨きに関する記事をアップしたところアクセス数は上々でしたが、ブランド別記事のようにシリーズ化を図ることができません。現在、生成AIも使いながら新しい切り口のブログ制作に取り組んでいます。
■具体的な販路開拓への取り組み■
修理事例をまとめたコンテンツで差別化
また、過去のブログ記事に修理事例を追加してリライトしたところ、徐々にアクセス数が伸びていきました。やはりユーザーは修理に関する情報を得たいようです。そこで、公開している記事をブラッシュアップするとともに、修理関連の記事をまとめた新コンテンツを制作することにしました。修理事例をまとまった形で見せることにより、技術力をアピールし、他店との差別化を図りたいと考えています。
LINEや生成AIを活用して業務を効率化
アドバイザーから助言をいただき、9月からLINE公式アカウントを開設しました。Webサイトの問い合わせページに友だち登録ボタンを設置し、対応をLINEで行えるように誘導しています。スマホで撮った画像の送付が手間をかけずに行うことができ、問い合わせ対応にかける時間の短縮に役立っています。すでにWebサイトからの問い合わせはLINEで対応することが多くなっているほか、定期的なメッセージ配信によりリピート受注の新しい導線になっています。
また、専門家派遣で学んだChatGPTはブログの文字数調整などに活用しています。ブログ記事の制作にかける時間は、従来の半分以下に短縮できています。
「難易度の高いオールソール交換などを手がけて、さらに収益を改善したい」と話す折田店長。来年度からの自走に向けて、アドバイザーにはすでにプランを相談している。
■支援の感想と今後の展望■
業務効率化で修理技術の向上を図りたい
ブログやLINEの施策を継続しながら、今後はInstagramと動画、ゆくゆくはメルマガでの情報発信にも取り組む計画です。まずはInstagramの投稿から始め、近いうちにYouTubeにも動画をアップしたいと考えています。
アドバイザーの伴走で取り組んだデジタル施策の効果により、大幅に受注が増えました。そこで課題となっているのが修理や顧客対応の効率化です。今後はLINEや生成AIを活用して、原稿制作や問い合わせ対応などをスピーディに行い、修理作業や修理技術の研鑽に使う時間を増やしたいと考えています。2年間のハンズオン支援により、目標としていた売上高が手の届くところに見えてきました。厳しい局面からのスタートに「前を向きましょう」と寄り添ってくれたアドバイザーには本当に感謝しています。受注獲得のためのデジタル施策には、今後もPDCAを回しながら取り組んでいきます。
「優れた職人技と店長の人柄が強み デジタル施策でさらなる発展に期待」
支援1年目で修理依頼が急増して対応に多忙を極めた折田店長。厳しい状況の中でも、打ち合わせで決めたデジタル施策を確実に実行されるので、次の打ち合わせでは効果を検証でき、スピーディに改善しながら成果につなげてきました。今後は動画やSNSでの情報発信を行う計画です。特に職人技を紹介する映像には期待しています。どんなことにも真摯に取り組む折田店長ですから、来年度以降もしっかりPDCAを回して事業を成長させていくはずです。
※本記事は、2024年11月時点の情報です。
企業情報
企業名 | 有限会社折田商会 |
所在地 | 東京都新宿区西落合2-15-11 |
設立 | 1945年 |
事業内容 | 靴の修理/革物補修 |
資本金 | 300万円 |
掲載の製品・サービス等について公社が保証するものではありません。