創業は1935年、現在の代表取締役である岩井保王さんは三代目。父である会長の己代治さん、奥様で取締役の光恵さん、Webサイトの改修を担当している娘の香野子さんと、従業員7名で工場を運営している。
※写真 代表取締役 岩井 保王
1935年から三代にわたって続く岩井金属金型製作所。金型製作をはじめプレス加工も手がけ、一貫した金属加工を強みとしてきた。近年は後継者不足などを背景に同業者の統廃合が相次ぐなか、一方で高い技術力や高付加価値製品へのニーズが高まっている。この状況をチャンスと捉えて新たな分野の顧客獲得を目指し、Webサイトでの技術力発信に取り組んでいる。
■本事業に申し込んだ背景■
業界の状況をチャンスと捉えて存在価値を示したい
当社の事業は金型製作やプレス加工を中心とした金属加工で、半導体や医療器具、機械部品など多岐にわたり手がけています。近年、金属加工業をはじめとする製造業は後継者不足により廃業やM&Aが相次ぎ、同業者や取引先が減る一方で、新技術や難易度の高い製品に対応できる工場へのニーズは高まっています。当社においても既存の量産加工製品の受注量は減少傾向にありますが、私はこのような業界の状況を新規開拓のチャンスと考えています。当社の存在価値を効果的に発信できれば、新たな分野の受注につながるからです。
中小製造業の営業課題解決をデジタルに求めて
数年前、Webサイトを刷新してブログや製作実績を掲載したところ、それまで接点のない分野のお客様からの問い合わせがあり、小さな会社ゆえ専任の営業担当を置けないことからサイトを最大限に活用したいと考えるようになりました。
その後、紙の絞り加工の試作を掲載したら思わぬ反響があり驚いたのですが、何が良かったのか全く分析できていませんでした。当時はSEOやアクセス解析の知識がほとんどなく、発信側の狙いと検索順位・反響とのギャップを解決する方法が分からず、「検索エンジンにはどんな仕組みがあるのだろうか」と考えるようになりました。
創業当初から手がけていたライターの金型製造技術を活かし、現在は弱電部品のシールドケースなどを製造。他にも外科用インプラントや楽器のパーツなど、幅広い分野で技術力を発揮している。
■アドバイザーへの相談内容■
検索エンジンの仕組みを知りたい
デジタルマーケティングやSEOを学ぶ必要性は感じていましたが、日々の業務に追われWebの講習に出かける余裕もありませんでした。そんな時、公社のメールマガジンでハンズオン支援(アドバイザーが専属で継続的に支援)を知り、個別の課題に合わせて自走できるようサポートしてくれる点とアドバイザーに来社いただける点に魅力を感じ、すぐに申請しました。そして2024年5月から支援が始まり、まずは「検索エンジンの仕組み」「公開不可製品の技術の訴求方法」「Webサイトを自社で改修する方法」の3つを相談しました。
施策の方向性を明確にするため自社の強みを言語化
アドバイザーからはデジタル施策の前段階として、自社の強みや立ち位置を再確認するよう提案をいただきました。FABE分析で当社の技術が顧客にどのように役立つのかを戦略的に考え言語化したほか、他社のWebサイトも分析し、一覧表を作って当社の特長を確認しました。アドバイザーからも客観的な視点から当社のPRポイントの助言をいただき、さらにリピーターのお客様にはヒアリングを実施しました。これらを検証した結果、お客様に寄り添った親身な対応など、技術面だけではない当社の強みが明確になり、目指す方向も定まってきました。
アドバイザーとは特に「自社の強み」について協議を重ねた。競合他社と差別化できる設備や技術をリストアップし、自社で対応できない場合も異業種の会社を紹介するなどの親身な対応も強みとして言語化した。
■取り組みの方向性■
検索エンジンの仕組みを学びサイト改修
自社分析の後はMEO(マップ検索エンジン最適化)対策に取り組みました。アドバイザーと一緒にWebサイトのアクセス解析を行うと、<地域名 金型>での検索ボリュームが多かったため、Googleマップからの流入が見込めるとの助言をいただきました。そこでGBP(Googleビジネスプロフィール)を作成したところ、<墨田区 金型>で検索1位になりました。
検索エンジンの仕組みについては、「検索者の意図」「検索者が使う用語」「検索エンジンの評価点」の視点が重要とのレクチャーをいただき、公開不可製品についてはCADでイラスト化して掲載する予定です。さらに専門家派遣でWordPressの編集方法を学び、内製でのサイト改修も進めています。
検索順位が上昇し問い合わせ件数が3倍に
サイト改修は進行中ですが、すでに検索順位が上昇し、お問い合わせ件数も前年同時期の約3倍に、遠方のお客様からの問い合わせが増えていることに驚いています。お問い合わせをいただくお客様は、サイトを隅々までご覧いただいており、技術への理解が深く、すでに受注にもつながっています。現在の課題は検索ワードです。お客様が使う言葉に合わせ、専門性と一般性のさじ加減を調整していますが答えは出ていません。今後はサイト改修と効果測定を行いつつ、SEO対策に注力していく予定です。
「高い技術力とともに経営者の人柄も強みになる好例」
岩井金属金型製作所は高い技術力を持ちながら、これまでのデジタル施策では期待した効果が得られていない状況でした。まずはSEOなどの基礎知識を学んでいただき、検索エンジンの仕組みを理解してもらいました。同時に、自社の強みを見直していただくために、FABE分析などを活用しながら言語化していきました。
岩井社長の課題への対応を見ていると、お客様に対する真摯な姿勢も伺えます。すでにお問い合わせ数も増えていますので、さらなる飛躍が期待できる企業です。
※本記事は、2024年10月時点の情報です。
企業情報
企業名 | 有限会社岩井金属金型製作所 |
所在地 | 東京都墨田区八広1-4-3 |
設立 | 1990年11月(創業:1935年) |
事業内容 | プレス金型製作・プレス加工/機械加工/六角穴加工 |
資本金 | 1,000万円 |
掲載の製品・サービス等について公社が保証するものではありません。